~終止符を、この手で~・おまけスキット

~戦場の現実~


トランシュ「話に聞くのと実際に見るのじゃあ、訳が違うね……」

リュナン「夢の中とはいえ、きついですね」

トランシュ「僕だって騎士のはしくれだ。戦場はそれなりに経験しているつもりだったけど……」

リュナン「俺だってそうでしたよ。けど、これは……」

トランシュ「こんなに容赦なく呆気なく命が奪われていく現場を、僕は知らない」

リュナン「……はい」

トランシュ「早く二人を探さないと」

リュナン「頼むから無事でいてくださいよ……」



~激昂するリュナン~


オグマ「助けてくれたのは嬉しいが、その……さっきのは驚いたな」

リュナン「あっ、ああ、えっとその……すいません」

オグマ「いいんだ。お陰で戻って来られたしな」

リュナン「……」

オグマ「やっぱり“生きることを諦める”のがだめなんだな。花畑でスタード殿に怒った時と同じだ」

リュナン「それもありますけど、何よりオグマさんにああ言われたら頭に血が昇っちゃって」

オグマ「私に?」

リュナン「だって“命の恩人”を自分の手で殺せって、ひどくないですか? 旦那だったら教官さんは恩人でしょう? 殺してくれって言われたらどう思いますか?」

オグマ「そう、だな……」

リュナン「自分が言われて嫌なことをひとに言わない!」

オグマ「それとはちょっと違……いや、すまなかった」

リュナン「わかればいいんです!」

オグマ「…………ありがとう」

リュナン「はい♪」



~リィムという女性~


オグマ「リィム殿……」

スタード「こんな形で再会するとはな」

リュナン「綺麗なひとでしたね」

スタード「親馬鹿に聞こえるかもしれないが、本人はもっと綺麗だ」

トランシュ「そうなんでしょうね。魔物が形だけ化けていたんだから、そう言っていいと思います」

オグマ「それに優しくて厳しくて、強いひとだ。私を庇って倒れた時も、私を気遣いながら逝った……だから、あんなことを言うはずがない」

リュナン「旦那にとって、そのひとは……」

オグマ「……向こうは、弟のように接していたつもりだったのだろうな。私はちょうど、彼女の弟と同じくらいの年頃だし」

スタード「私は個人的に応援していたんだが、お前さんが奥手過ぎるのも悪いぞ」

オグマ「えっ」

スタード「とはいえ、リィムも鈍かったからな。それに騎士団の仕事に一生懸命だった」

オグマ「……そう、ですね。彼女は騎士であることに誇りをもっていた」

スタード「家族の反対を押し切ってまでなったものだからな。剣術はそれなりだが、治癒術に関しては秀でていた……お前さんの才能を見出だしたのもあいつだったか」

リュナン「いろんな意味で、旦那に影響を与えたひとだったんですね」

トランシュ「そしてとても素敵な女性だったと」

オグマ「……ああ」


~背負わせてしまったもの~


オグマ「スタード殿……」

蒼雪の舞姫『悪夢に囚われていた時、何かあったようだな』

リュナン「教官さんが娘さんの姿をした魔物を倒したこと、でしょう?」

蒼雪の舞姫『娘?』

オグマ「スタード殿の娘で、私の……初恋のひとだった。七年前に私を庇って戦死してしまったんだが」

トランシュ「二人がずっと繰り返し見せられていた悪夢は、その場面だったんだ」

リュナン「それを打ち破ったら、今度は娘さんの姿で二人を夢に引き留めようとしたんです」

蒼雪の舞姫『なるほど……えげつないことをするな』

オグマ「だから、スタード殿は魔物を自分の手で……」

リュナン「ご丁寧に、みんなには目を瞑らせた隙に……ですね」

トランシュ「オグマさんに見せたくなかったんでしょう。だからといって、自分一人で背負わなくても……」

リュナン「勝手に背負って、ひどい人ですよ」

蒼雪の舞姫『勝手に背負われたなら、勝手にその荷を引き受けてやればいいのでは?』

オグマ「勝手に引き受ける、か」

トランシュ「いいですね、それ」

リュナン「あの人押しに弱そうだし、多少強引にでも取り上げちゃいましょうか」

トランシュ「すぐ楽にしてあげますよ、教官……」

オグマ「……なんか、響きが物騒だな」



~大精霊の心配~


清き風花『スタード様、本当によかった……!』

スタード「すまなかったな、風花」

荒ぶる地獣『それにお前らも、人の夢に入るなんて無茶しやがって』

蒼雪の舞姫『下手をすればミイラ取りがミイラ……二度と目覚めない可能性もあったのだぞ』

万物の王『伸るか反るかの大博打だったが見事に勝ち取ったな!』

リュナン「普通は意思確認とかしますよね!?」

トランシュ「結果オーライではあったけどね」

スタード「なんというか、その……」

オグマ「すっかり手間をかけさせてしまったな」

リュナン「そういうのいいっこなしですよ!」

トランシュ「仲間ですからね」

万物の王『ほーら結果オーライ』

リュナン「すごいのわかったから少し黙っててくれますかね!」

荒ぶる地獣『やれやれだゼ……』



~筒抜けだった?~


万物の王『しかしまあ、大変な戦いだったな』

リュナン「誰のせいで大変だったと……」

荒ぶる地獣『ま、まあまあ』

蒼雪の舞姫『お前たちの様子は、一部こちらにも伝わってきた』

トランシュ「一部?」

荒ぶる地獣『……言いづらいんだが、』

万物の王『まあ寝言みたいな?』

オグマ「!」

万物の王『いやお前とかはたまに断片的な呟きが漏れる程度だったけど約一名、な』

荒ぶる地獣『リュナン……』

リュナン「ぐああああ!」

オグマ「そういえばいつも寝言がはっきりしているな」

スタード「ああ、たまにびっくりする」

リュナン「ええええそうだったんですか!?」

オグマ「だいたい皆知っているぞ」

トランシュ「僕は寝付きがいいから知らなかったな。今度起きて聞いてみよう」

リュナン「やめでぐだざい!」

万物の王『いやでもあそこはかっこよかったぞ。ほら、オグマに向かって言った……』

リュナン「ぎゃああああああ!」

荒ぶる地獣『どうにも格好がつかないの、お前らしいんだゼ……』


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