~もつれた糸~・おまけスキット

~不気味な巣~


リュナン「旦那、大丈夫ですか?」

オグマ「あ、ああ、すまない」

イシェルナ「見た目もアレなのに触れたらマナを吸い取るだなんて、ぞっとしちゃうわね」

蒼雪の舞姫『一瞬でこれだけオグマが消耗するのだから、獲物が離れる間も与えないくらい強い力でマナを奪うのだろうな』

オグマ「そうだな。蒼雪の舞姫がいてくれて助かった」

蒼雪の舞姫『……契約者を守護するのは当然だ』

イシェルナ「あらん? もしかして照れてる?」

蒼雪の舞姫『そんなことはない……が、精霊信仰も遠い時代となった今、人間から感謝の言葉を述べられるのは久し振りだな』

リュナン「ちょっと違うんじゃないですかね」

蒼雪の舞姫『む?』

イシェルナ「信仰で出てくる感謝の言葉と、オグマのそれは違うってことよ」

リュナン「旦那は精霊さんを友達みたいに呼びますからね」

蒼雪の舞姫『友人、か……』

オグマ「い、嫌だろうか?」

蒼雪の舞姫『……いや、いいものだな』



~浄化の術がなくても~


トランシュ「いくら技を磨いても、あの魔物達は浄化の術がないと倒せない……ついてきたはいいが、私は足手纏いになるんじゃないだろうか……」

モラセス「そんな事を気にしていたのか」

トランシュ「お祖父様……」

モラセス「いくら浄化の術がなくても殴られれば痛いものは痛い。それは一度は魔物化した我々で実証済みだろう?」

トランシュ「そういえばそうですね」

モラセス「つまりだ。いっそ浄化して楽にしてくれと思わせるまでぶん殴ってやればいい」

トランシュ「そうか! さすがはお祖父様!」

モラセス「なまじ再生能力があるばかりに長引く苦しみを味わうがいい」

トランシュ「よーし……僕にだって、できることはあるんだ!」

シュクル「なんか恐ろしいこと言ってる奴等がいるぞ」

デュー「脳筋同士やっぱ似てるなこの二人」



~決意~


ミレニア「おじうえ……」

オグマ「ザッハ……」

デュー「たぶん、直接対決になるだろうな」

カッセ「地下大空洞の最奥地にいるとすれば、どこにも逃げ場はないはずでござる」

デュー「だから、お前らも引き返すなら最後のチャンスだぞ」

ミレニア「気遣いは無用じゃよ、デュー。それに、ここで退いたら後悔するじゃろ?」

オグマ「そうだな。自分の預かり知らぬところでどうにかなってしまう方が辛いだろう」

カッセ「そういう考え方もあるでござるか……」

デュー「それなら止めない。けど、ちょっとでも無理だと思ったらすぐ下がれ。心の迷いとか脆さとか、そういうのを突いてくる相手だからな」

ミレニア「むー……」

デュー「どうした?」

ミレニア「頼りになるデューはなんかムカつくのう」

カッセ「それは同意でござる」

オグマ「は、はは……」

デュー「お前らなぁ……」


~過保護はどっち?~


スタード「モラセス王!」

モラセス「む、なんだその顔は」

スタード「またあんな怪我をして……やっぱり、止めるべきだった」

モラセス「そんなことよりお前の方こそ、さっきは危なかったろう。立ち回りで誤魔化しているがあまり打たれ強くないんだから無理をするな」

スタード「うぐっ」

モラセス「というか、報告書読んだがお前の怪我については触れていなかったな」

スタード「な、何故それを……」

モラセス「そこの緑の奴つかまえて吐かせた」

リュナン「ご、ごめんなさいってか緑の奴って……」

スタード「……」

モラセス「あまり人のことは言えんな、スタード。次からは隠すなよ」

リュナン「……っていうか、教官さんには過保護呼ばわりしておいて王様も結構……」

モラセス「なんだ?」

リュナン「なんでもないですぅ!」



~スイート王女の像~


デュー「トラとミレニアの母親ってどんなひとだったんだ?」

トランシュ「僕はあまり聞いたことはないな」

ミレニア「おばあさまの話だと、兄様の父親が亡くなるまでは明るく自由奔放な人らしかったのじゃ」

デュー「なるほど、奔放なところは王様似と」

モラセス「恋をしたら一直線で、ジンジャスと結婚すると言ってきかなくてな」

スタード「……行動力のあるお方でした」

デュー「なんだよ教官、その含みのある言い方は」

モラセス「ぶっちゃけ手を出したのはスイートからだったからな」

トランシュ「つ、つまり、父上は……」

スタード「皆まで言うな」

ミレニア「やるのう、かあさま」

デュー「揃いも揃って強い家系だなー……」



~生きていてくれれば~


オグマ「ザッハ……やっと元に戻せた……」

スタード「友人と戦うなど、ただでさえ辛いだろうに……よく頑張ったな」

オグマ「ありがとうございます。魔物に取り憑かれ続けていたザッハの体が心配ですが、今はただ元の彼に戻って生きていてくれたことが心から嬉しい」

スタード「ああ、そうだな」

モラセス「これからゆっくりと話せばいい。積もる話もあるだろう」

オグマ「!?」

スタード「またそうやって気配を消す……」

モラセス「なにか言ったか」

スタード「気のせいでしょう」

オグマ「まずは、借りっぱなしだった本を返さなくては……」

モラセス「冒険の話もしてやるといい。あの引きこもりにはいい刺激だ」

スタード「モラセス王も、しっかりお話してくださいね」

モラセス「わかっている」


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