~東の地にて~・1
――明るい、世界だ。
人も、緑も……豊かな光に満ち満ちたここが、表層界アラカルティアか。
空っぽの腹が訴え、食い尽くせと叫ぶ。
この世界を喰らってしまえばきっと、この空虚も満たされるに違いない。
だから……――
「あー、なんか腹へったな」
中央大陸西側の辺境、シブースト村から遠く離れた東大陸ジャンドゥーヤの中央あたり。
乾いた風を肌に感じながらデューがふと呟く。
大所帯だった一行は今は三人に減り、彼の傍らにはフィノとカッセという小柄だったり華奢だったりで見た目にはいまひとつたよりなさげなメンバーとなっていた。
「……このメンバーを決めたのって、デュー君なんですよね?」
ちら、と大きなターコイズの瞳が少年剣士を窺う。
「そうだけど、どうした?」
「なんだか変わった組み合わせというか……残りのメンバーも、ですけど」
「単純に戦力バランスもあるけど、まぁフィノはここがいいかと思ってな」
風に揺られ微かな音を奏でる鳴子のついた特殊な杖は、この地に暮らす神子姫と呼ばれる者達が振るうもの。
そしてそれを持つフィノにとって東大陸は、生まれ育った故郷のある地だ。
「残りは……シュクルと一緒に行動するミレニアはカレンズ村でのこともあるからここを避けたかったのと、あの村を嫌ってるっぽいイシェルナもなー」
「それを言ったらカッセ君も……」
聖依獣の長老、ムースの転移術によって目的のマナスポットがあるセルクル遺跡の近くにまで飛ばされてきたが、この近くにはカレンズ村がある。
休息や準備に立ち寄るかもしれないそこは、聖依獣を忌み嫌う者が多く、覆面で正体を隠しているとはいえカッセにとっては居心地の良い場所ではないだろう。
「城に帰る王様がついて来る王都と、極寒のクリスタリゼも嫌なんじゃないかなーと思って」
魔物に取り憑かれていたとはいえモラセス王には城に忍び込んだ時に捕らわれて尋問されたこともあり、すぐには苦手意識は振り払えないだろう。
そして北大陸では寒さに震える姿も見ていたので、それならば東大陸の方がいいだろうというのがデューの考えだ。
「せ、拙者のことなら気遣い無用だ」
「そうやってやせ我慢するの悪い癖だぞお前。万が一のことがあったら責任をもってオレが護るから、このメンバーになったんだよ。もちろん、フィノのこともな」
こういうことをさらっと言ってしまうのだから、記憶をなくして子供の姿になる前はさぞかし罪作りな男だったのだろう。
しかし仲間達のそんな視線にも気付く様子もなく、デューは砂地を歩きだした。
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