真相編4
一拍おいて、カーバンクルの話は続く。
「おばさんの行っていた、使い魔との契約を必要としない魔法使いの研究。
それらは人間の努力によって生み出された発明かもしれないけれど、今後、こういう事例が増えたらどうなる?」
こういう事例って、機械補助による一般人の魔法使い化?
「どうなるって、単純に魔法使いが増えるんじゃない?」
「その通り。
便利なツールとしてその機械が売り出されて、理科世界管理局のキャパシティをあっという間に超えて、世界に魔法使いが溢れかえるだろう。
あのおばさんは理科世界を滅ぼすつもりだったみたいだけど、理科世界の“チカラだけ”を利用したい輩はソッチの世界にはゴマンといるしね。」
純粋な物理教信者以外の協力者。あの副市長(油ぎった親父)のように金儲けのために利用していた人物や組織は何処にでもいる。
「エネルギーは無限じゃない。
それは現実世界も理科世界も同じさ。
ボクらが魔法使いを養成する最大の目的は、エネルギー生み出すことであって、浪費することじゃない。」
エネルギー保存則の破壊、それは前回の事件の根底である。
前回は理科世界からエネルギーの取り出しを容認していたカーバンクルだったが、それはその先の進化あっての話だ。
「だから、進化を止める浪費家なんて、ボクたち生き物には放っておくことの出来ない害悪なんだよ。召喚獣はそんな輩が増えると、とても困るんだ。
加えて、おばさんの目的は理科世界管理局の破壊。恐ろしいことにそれは、管理局の予想に反して実現しそうだった。
今回はそれをなんとか食い止められたんだ。
救世主(キミ)とボクのおかげでね。」
「なるほどね。」
理科世界の住人たちは人間の生み出す夢や知識への探究心を糧にしている。
だからカーバンクルは人間への不干渉の法を犯してでも、目に見える危機的な食糧難に手を打った、そう言うことだろう。
「すでに今回の一件は理科世界管理局に知れわたっている。というか、ボクが言いふらしたんだけど。」
ヒトの世ではどんな偉人でも犯罪を犯すと、過去の栄光を消し去りバッシングの対象になる。
『信頼していたのに、裏切られた。』
しかし、今回の事例はその逆に当たる。犯罪者が偉業を成し世界を救った場合だ。
『信頼してなかったのに、助けられた。』
実世界ではあまり実例が無い、もしくは公表されないが・・・これは評価が難しい。
「ボクは勲章をもらうんだ。
この先、世の中がどう評価してくれるのか、楽しみでならないよ。」
汚名と名誉を併せ持つ。
おそらくコイツは今の状況じゃなかったら、今回の働きをしなかっただろう。世界崩壊の危惧を利用して、また、世の中全体を実験材料として扱うコイツの性根はホント腐っていると思う。
「今後もボクの監視は続くと思うけど、同時にそれなりの役職に就くと思う。
だから、また近いうちに会おう。
ボクの救世主、マジカルマヂカ。」
「フン。アンタの顔なんか見たくもないわよ。」
「いやいや、そんなこと言わずに。
それにキミには是非とも言っておきたい言葉があるんだ。」
「・・・何?」
「ありがとう。」
悪党に利用されてお礼を言われるような気分。
心から感謝されていようとも、こんなに嬉しくないのは他にないだろう。
「さっさと帰れ!」
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