【短編集】人妖抄録 ~「妖しい、僕のまち」異聞~
詩月 七夜
■登場人物紹介という名の「妖怪名鑑」■ ~人妖抄録版~
【注意】
「
本編「妖しい、僕のまち」と併せて、読んでみてください。
登場する妖怪は、能力こそ本作品オリジナルですが、日本古来の妖怪を中心に登場させようと思っています。
また、本作品の妖怪達は基本的に人間と変わらない容姿をしていますので、それを念頭にお読みください。
※話が進むにつれて、随時更新していきます。
■
種族:妖怪(文車妖妃)
性別:女性
年齢:20歳
降神町役場の人間社会適合セミナーの卒業生で、見事就職に成功した新社会人である。
その正体は“
「
“文車妖妃”はその中に納められたまま忘れ去られ、返事をもらえなかった恋文等の手紙に宿る執念から生まれる妖怪とされる。
彼女の場合、とある古寺に眠っていたところ、その身体から放たれる妖気によって、周囲の住宅に怪奇現象を発生させていた過去がある。
その後は降神町役場の職員によって保護され、無事に社会へと巣立った。
真っ直ぐな努力家で、心優しい性格。
そのため、就職後は地域の住民にも愛されている。
少々、方向音痴。
妖力は【
手紙や書物の中で朽ちた書き手の思念や怨念を、実体化させることができるが、本人が未熟なため、せいぜい空耳だったり、見間違い程度にしか認識されない。
彼女の妖力は、実は郵便配達員より図書館司書に向いている。
その場合、成長を遂げると書物に記された情報を吸収し、具現化させることが出来る大妖怪になる可能性を持つ。
■
種族:妖怪(虚空太鼓)
性別:名前からして男性
年齢:不明(外見すら不明)
降神町の南側に広がる海域に住む職業不詳の
その正体は“
山口県の周防灘に伝わる妖怪で、ある嵐の夜、軽業師達が乗った船が沈没し、彼らが救助を求めて打ち鳴らした太鼓が、とある時期になるとどこからともなく海上に響くという言い伝えから生まれた。
伝承通りの正体不明の人物(?)で、同じ妖怪でも姿・声・嗜好など知っている者がほとんどいない。
というのも、本人が極度の人見知りで、人付き合いもほとんど無いためとされる。
名前にあるだけに、太鼓の演奏については右に出るものは無く、その勇壮かつ繊細な響きは、聞く者に感動を与えてやまない。
正に「太鼓の達人」といえる。
妖力は現段階では不明。
■怪盗“サーフェス”
種族:妖怪(面霊気)
性別:不明(見る者により男性にも女性にも見える)
年齢:807歳
神出鬼没・正体不明の謎の怪盗。
シルクハットに燕尾服、仮面とマントに身を包んだ怪人物。
その正体は“
本編の舞台となる降神町とは違う町で20年前に出現し、古美術品を中心に盗み去っていた(盗まれた品物は、いずれも大した価値は無かった)。
犯罪を行っていて、その実、人間界に紛れ出た危険な品物(妖怪を封じた石仏、動く人形など)を保護。
人間が、怪異により傷付かないように見張っていた好人物(?)でもある。
ノリのいい性格で、盗む前に予告状を出したり、肝心な時にうっかりミスをしたりと割とお茶目。
現在は一線を退き、静かに暮らしているが、とある老刑事の挑発を期に、現役復帰を密かに目論んでいる模様。
最近は降神町南部の港町で、民宿「しおさい」を営む老女に変装している。
妖力は【
仮面を変化させることにより、神代の神々や英雄、鬼神や怪物にまで男女問わず変身し、その能力を使役できる。本編では手力男(怪力)、鈿女(挑発)、火男(火炎放射)、清姫(拘束)、頼政(狙撃)などを使用。
一見、万能かつ強力な妖力だが、変身できる時間は限られており、その時間を経過すると、サーフェスの自我が変身した仮面の自我に呑みこまれてしまい、二度と元の姿に戻れなくなってしまう。ある意味、諸刃の剣ともいえる。
ちなみに名前の「
その名の通り、彼(彼女)の本当の名前や素顔を知る者は誰一人いないとされる。
■鬼女人形“
種族:妖怪(人形の霊)
性別:女性(宿る魂も女性がベース)
年齢:326歳(見た目は十代前半。元禄期に製造)
「安達ヶ原の鬼婆」で有名な、鬼女“黒塚”を模した等身大の少女人形。稀代の天才造型師
その正体は“
古来より『
現代の怪談にも、その痕跡は見る事が出来る。
従来は無害な存在だったが、外殻となった鬼女(当時、グレていた黒塚姫野本人)が強力な存在だったためか、その伝説に影響され、妊婦の生き肝を狙う物騒な存在と化した。
20年前には、とある人形博物館に収蔵されており、何者かによって意図的に封魔の紋で動きを封じられていたが、サーフェスのミスで活動を再開する。
行動理念も物騒で、生き肝集めを邪魔する者は、誰であれ始末しようとする。
妖力…というか、必殺技は【
関節という関節から鋭利な刃を発生させ、相手を切り刻む殺人機巧技。
製作者が鬼婆伝説に歪んだ解釈を持ち、冗談混じりの悪意を込めて仕込んだ隠し
現在はサーフェスの下で情操教育を中心とした再教育が行われ、彼(彼女)の隠れ家でメイドとして働いている。
教育が功を奏したのか、小動物が好きで、懐かれやすくもなった。
サーフェスからは「くーちゃん」と呼ばれ、妹の様に可愛がられているらしい。
近況では、サーフェスと共に、民宿「しおさい」で祖母に変装したサーフェスの孫娘として働いている。
■
種族:妖怪(倩兮女)
性別:女性
年齢:21歳
降神町に住む、就職活動にいそしむ女子大学生。
その正体は“
人通りのない道を歩いている者に、突然笑いかけて脅かす妖怪。その大きな笑い声によって人の不安をかきたてるほか、気の弱い者は失神する事もあるという。
笑い声で脅かす以外に害のない妖怪とされる。
性格はやや暗めで地味。
長く「倩兮女」としての性分…TPOをわきまえない笑い上戸に悩まされてきたため、人付き合いも苦手である。
一方で、本人は気付いていないものの、友人たちからは「笑うとつられて笑ってしまい、場が明るく和やかになる」と好評を受けている「ギャップ萌え」の女性。
妖力は【
発動すると本人が爆笑。
それを視聴した者は、身体の緊張が抜け、リラックス状態になり、つられて笑いだす。
抵抗するには一定の対妖力防御が必要である。
また、奇襲時に発動すると、短時間だが任意の対象に恐慌・失神状態を与え、行動不能にすることが可能。
ただし、本人が未熟な上にそんな気も無いので、今のところ任意での発動は出来ない。
■
種族:妖怪 (べとべとさん)
性別:男性
年齢:17歳
降神高校に通う
正体は“べとべとさん”
夜道を歩く人間の後をつけてくる妖怪。
その足音がするのみで人に危害を加えることはないとされるが、人によっては自分をつけてくる足音を不気味に感じることもある。
だが、そういう時は道の片側に寄って「べとべとさん、お先にお越し」などと唱えれば、ついてきた人間から離れるとされる(この言い方は、各地で異なる)。
奈良県宇陀郡では暗い夜道で遭うとされ、静岡県では小山を降りてくるときに遭うといわれている。
背が低く、目が隠れるほど前髪を伸ばした少年。
気が優しく、責任感も強いが、基本的に憶病で弱気な性格。
また“べとべとさん”としての特性なのか、存在感が極めて薄く、本人も少し気にしている。
妖力は【
姿を透明化させ、対象の背後を追跡する。
この状態になると、相手がどれ程速く移動しても振り切ることは出来ない。
また、同時に相手の足音を
この複製音には、
相手を撹乱するには効果が高い妖力だが、その一方で、伝承通りに「先を譲られる」とその効果は消失してしまう。
■
種族:妖怪 (ぴしゃがつく)
性別:男性
年齢:17歳
降神高校に通う
正体は妖怪“ぴしゃがつく”
“べとべとさん”に性質が似た妖怪で、福井県坂井郡(現・坂井市)に伝わっており、夜道を歩いている人間の後をつけてくる。
“べとべとさん”と異なる点は、
足音で恐怖を呼び起こす部分は“べとべとさん”と同じだが、この妖怪は
そのため、気の小さい人間にとっては、より性質が悪い存在。
“べとべとさん”こと、尾行澤 平斗の
また、平斗とは違い、ポジティブかつアグレッシブでいたずら好きなところがあり、特に人を脅かすことが大好き。
ちなみに性格は対極の二人だが、仲は良い模様。
妖力は【
平斗の【無影音階】に似た妖力で、姿を対象の影に潜ませ、その背後を追跡する。
この状態になると、相手がどれ程速く移動しても振り切ることは出来ない。
また、同時に相手の足音を変質させ、「ぴしゃっ」という音を響かせることが可能。
この音には、
【無影音階】のように足音の
■ゴータイショ―
種族:【初代】妖怪(瀬戸大将)/【二代目】人間→?
性別:いずれも男性
年齢:【初代】108歳/【二代目】29歳
初代の本名は「
暴力団「
しかし、追手によって重傷を負い、落命。その最期に二代目となる「
臆病で役立たずと言われていたが、芯は強く、心から降神町を愛していた
その正体は“
付喪神の一種で、捨てられた瀬戸物で出来た武者姿で描かれる。
妖力は【
瀬戸物の鎧を
二代目の高槻は、教師を目指す正義感が強いだけのごく普通の人間の大学生だったが、竜司との出会いを経て、その身に妖怪の力と人間の心を有する存在となる。
元々特撮ヒーローに強い憧れをもっており、装着する「瀬戸甲冑」を「
鎧に内蔵した「九十九珠」による強化もあって、その力は本物のスーパーヒーローとして十分なものとなっており、数々の戦いをくぐり抜けてきたことから、その戦闘力は作中でも最強に近い。
使用する妖力は前述の通り【超闘器神】
「
主な必殺技は「
永遠のライバル「プロフェッサー
普段は人間として降神高校で古典の教師をしており、大きな身体と穏やかな性格から「テディ」の愛称で呼ばれている生徒思いの好人物。
■
種族:妖怪(禅釜尚)
性別:(一応)男性
年齢:不詳
暴力団「
グラサンをかけ、明らかにその筋の外見をしているが、微妙に女性趣味が混じった服装を好む。
口調はまんまオカマだが、本人は「オカマ」「デブ」などの言葉を掛けられると激怒する。
正体は“
付喪神の一種で、古くなった茶釜が化けたものとされ、茶釜の頭部を有する姿で描かれる。
妖力は【
頭部を鋼鉄の茶釜に変化させるもので、これによる頭突きを得意とする(本人は普通に石頭だが、更に固くなる)。
ヤスと竜司の兄貴分だが「アニキ」と呼ばれるのを嫌う。
■ヤス(本名不明)
種族:妖怪(虎陰良)
性別:男性
年齢:不詳
暴力団「
正体は“
付喪神の一種で、三本爪の熊手を持った姿をしており、同じ付喪神である“禅釜尚”や“
妖力は【
高速移動後に分身し、咥えた長楊枝を熊手に変化させて連撃を見舞う。一撃一撃は強力ではないが、回避が難しく、加重されていく攻撃は脅威そのもの。
更に禅丈との合体妖力として【
これは頭部を鋼鉄化した禅丈を熊手に引っ掛け、高速回転後に射出する荒技で、ふざけた名前とは裏腹に恐ろしい威力を誇る。
■
種族:妖怪(袋下げ)
性別:男性
年齢:不詳(見た目は二十代半ば)
降神町に住む
正体は“
化け狸…妖狸の一種で、長野県北安曇郡大町(現・大町市)では化け狸が高い木に登り、通行人目がけて白い袋をぶら下げたという。
ただそれだけで、伝承では人に危害を加えたというものは伝わっておらず、また袋の中身が何であったのかも不明。
見た目はごく普通の青年で、やや目つきが悪いこと以外は普通。
性格はややひねくれており、物事を斜に構えてみることが多いが、根は割と純情。
ぶつくさ文句を言いながらも、悪事には絶対加担せず、弱い者を助けようとする気概も秘めている。
元は降神町役場の人間社会適合セミナーの卒業生だったが、適職に恵まれず、現在は日雇いの仕事で
妖力は【
高所から白い袋を垂らし、相手を驚かせる(この時、確率で相手は恐慌状態になる)。
攻撃力は一切なく、ただ相手を驚かせるのみだが、垂らす袋は妖力で錬成されており、中には自動車程度の大きさものまで詰め込むことが可能。
また、垂らした際、相手は肉眼で狟下自身の所在を補足することが出来なくなる(頭上を見上げても暗闇しか見えない)。
子どもが苦手で、それは「目つきの悪い自分が笑うと怖がられるから」とのこと。
■
種族:妖怪(高女)
性別:女性
年齢:17歳
降神高校に通う
その正体は“高女”
“高女”の由来は不明で、諸説あるが、嫉妬深い醜い女がこれに化け、男に相手にされないあまり、遊女屋などの2階を覗いて歩くものとされている。
外見は普通の女子高生で、短めの髪をヘアピンでまとめ、やや釣り目をした女の子。
高校生ながら身長は150センチに満たないため、それを気にしている。
隣家に住む
正登とは腐れ縁同士なので、しぶしぶ交流しているが、身長のことを
また、
妖力は【
身長(全体的なプロポーションを含む)を自在に伸ばすことが可能で、3メートルは優に超えることが出来る。
それに伴い、外見も大人びた姿になり、体型もスーパーモデルクラスに変化させることが可能。
前述の通り、妖怪として目立つことを苦手としているので、この姿は、実は正登も知らない。
また蛇足だが、この姿になった彼女は、正登を一瞬で虜にする程、彼にとってタイプの女性であるらしい。
■
種族:妖怪 (うわん)
性別:男性
年齢:不詳(見た目は三十代)
降神町に住む
その正体は“うわん”
“うわん”は古びた屋敷や寺に現れ、付近を人が通りがかるとその名の通り「うわん!」と大声を出して驚かせるはた迷惑な妖怪。
この時、その人が気を抜いていると命を奪い取ってしまうが、言われた側が同じように言い返すことが出来れば“うわん”は退散してしまうとの説もある。
外見はごく普通の会社員で、独身。
自らが持つ妖怪としての体質…「深夜、誰彼構わず吠えかかりたくなる」という欲求と戦っており、我慢できなくなると、深夜の町を徘徊する癖がある。
良識の持ち主で、人に迷惑を掛けたり、警察沙汰になりたくないという一心で堪えていたが、ひょんなことから自らの妖力で泥棒逮捕の一役を買い、味を占めてしまったのか、時折、大声を出したい一心で泥棒探しをするようになる。
妖力は【
その大声により、対象を高確率で恐慌・気絶状態に陥らせ、状況によっては即死すらさせられる妖力。
対象の不意を突いた状況下でしか発現しない特殊な性質を持っており、そうした状況を作るまでが肝となる。
本人の意思とは無関係に発動したくなる厄介な妖力らしく、悩みの種となっている模様。
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