容姿改変と、明日へ

「え、じゃあ、おじいちゃんはどのくらい向こうの世界にいたの?」

「そうだな……、ざっと、50年ぐらいかな。20歳になるぐらいに向こうに行ってから、向こうにいた間はずっと向こうの世界を旅してたからな」

 ということは、身体の年齢は30歳で、精神年齢は70歳ってこと?あれ?そしたら、幾ら何でも周りの人は気づくんじゃないかな?見た目30代のおじいちゃんって。

「克人、忘れたか?俺は、自身に容姿改変の魔法をかけたって言ったよな?ということは、周りには70代に見えるわけだ。ただし、お前を除いてな」

 僕だけは例外ってどういうことだろう?

「いや正確には、お前のように魔力の量が多い人を除いてかな」

「どういうこと?」

「簡単な話だ。俺より魔力量が大きい人がみると俺の本来の姿が見えるわけだ」

 そういうことだったんだ。それなら納得がいく。それで、僕には本来の30代の容姿に見えるが、周りの人には仮の70代の容姿に見えるわけだ。

「まあ、お前の父親にも破られそうになって、もう一回かけ直したんだがな」

「そんなに父さんの魔力量って多いんだ」

「ああ、ただ、さっきも言ったが、隆は魔法適性がないせいで、あまりに余った魔力が目に集中したからな。おかげで、見えてはいけないもの、いわゆる妖怪が見えてしまったからな。あいつは相当困っていたよ」

 あの、いつも温厚で人生の中で一つも困ったことがないかのようなあの父さんが妖怪が見えることで困っていたなんて。

「まあ、それも、陰陽師のところに行って妖怪を見えなくする薬をもらっているんだがな」

「ああ……そういえば、父さん、毎晩目薬さしてたな……」

「さて、そろそろ、魔術学院について話しておくか」

 魔法学院。前に言っていた、僕が向こうの世界で通うことになる学校のこと。

「さて、魔法学院だが……」

 要約すると、こうだ。

 魔法学院では、魔法を学び、魔法を研究するらしい。それぞれの魔法のくくりに何人もの教授がいて、その多くがその分野の最先端を行く人らしい。入学資格は魔法が多少なりとも使えること。

 最初は必須の授業を受けながら飛び級試験を受けたり、進級試験を受けて次のステップに上がるらしい。また、レベル制度をとっているらしく、ファースト、セーデ、サルト、フォー、フィーデの 5階級に分かれているらしい。

 ちなみに飛び級試験は、どこまでのレベルの問題を解けるかによって区切るらしい。だから、ファーストからフィーデに一気に飛び級することもできるらしい。その場合は、飛ばした級で使う教科書を一気に渡されるらしい。ちなみに、使う教科書の合計した厚さが一番少ない教科書でも、1メートルはあるらしい。平均して、一階級あたり20センチはあることになる。おじいちゃんによると、今までファーストからフィーデに一気に飛び級した人はいないそうだ。

 進級試験は、年に一回実施されているそうだ。

「まあ、多分お前の理解の速さならすぐに飛び級できると思うから、うちにある教科書を一読しておけ」

「わかった。……ちなみに、分量はどれぐらいあるの?」

「横幅、30メートルはあるかな?」

「何教科分?」

「飛び級の制度がある15教科分だよ」

「飛び級の制度がない科目もあるの?」

「ああ、研究科目は飛び級がないはずだ」

 あれ?なんか15教科とかなんとか言ってなかったっけ?まあ、いいか。

 この後、克人はおじいちゃんから教科書を借りることにしたはいいが、その量と種類の多さに唖然とし、なんでも入る魔法袋を使ってうちへ持ち帰ることになったのはまた別の話である。



「じゃあね、おじいちゃん。あ……ル、セロってどうすればいいの?」

「ああ、あいつは勝手にきて勝手に帰るから心配しなくていい」

 セロって、勝手にうちを抜け出してここにきてたんだ……。

「えっと、あしたも今日と同じ時間にこればいい?」

「ああ、どうせ、これからもここに来るなら、バイト代は出すから、余裕があるときは店を手伝ってくれ」

「わかった。それじゃあ、明日来るね」

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