第7章 二通の遺言状(1)
「きゃあああぁぁぁ―――!!」
「誰か!」
「は、早く! 救急車だ!」
そこは、東郷 正将の部屋だった場所だ。
既に集まっていた、東郷家の人達を押しのけて、僕は部屋の中を覗いた。
「…あ!」
こんなものを見るのは、初めてだった。
首に太いロープを巻き付けて、だらりと力なく両手足を下げた格好の男が、天井からぶら下がっていた。
後ろから来た円香が、それを見た途端気を失ってその場に倒れ込んだ。
だが僕は、円香を気にも止めずに、その男の体にそっと触れた。
既に冷たかった。
彼とは、そんなに話をしてはいなかったが、自殺をするような人物には思えなかった。
東郷 弘二が、首を吊った状態で死んでいた―――。
「……きゅ、救急車だ!」
誰かが叫んだ。
「馬鹿! 警察だよ! 警察を呼ばなくちゃ!」
僕の横で、太目の体を揺すりながら、万沙子が廊下へ走り出した。電話をしに行ったのだろう。
「また自殺なの?」
「どうして弘二さんが……」
部屋からあふれるようにして、東郷家の人間が揃って弘二を見詰めていた。
弘二の遺体から目を逸らし、僕は小さく深呼吸をして落ち着こうとした。
ここへ来る前に、父に色々教わったじゃないか。
最初は―――?
そう。状況をよく見るんだっけ――。
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