第117話
承認を押すと目の前が一瞬真っ暗になり、そのあと何もない小さな個室へと転送された。目の前には丸で囲まれた360という数字が359…358とカウントダウンしていっている。戦闘開始までの時間か何かか、その横には「装備確認をしてください」など、書かれていた。ほむほむ…とメニューを開いて装備の確認。今回持ってきたのはほぼいつもの装備、テンペストイーグルとドラゴンテイル、そして雷天黒斧だ。みんなと合流するまでは雷天黒斧は温存しておかないといけない。
残り180になると実況者さんの挨拶が始まる。実況はこの個室にいる時は聞こえてるわけなのか…。ルール説明か何かは午前の部などでやっているので省略されている。っと、何となしその実況者さんの話を聞いていたら、俺の名前が出てきた。
「このブロックに参加される中で一番の注目はカケル選手ですね。青王杯での活躍がまだ記憶に新しく、ユニーク武装である雷天黒斧が印象的です」
「そうですねぇ、ですが彼の武器はこのバトロワには向いてないですのでどうするんでしょうね?無策で使うとは思えないので、作戦を練ってくると思うんですよ」
実況者が俺の名前を出したのはよかった…良かったが解説が余計なことを言い始めた。これ、参加者全員聞いてるんだろ!?
「ほう、作戦とは?」
「まぁ僕ならデメリットーをカバーするためにチームを組みますね。そして、装備すると落雷が発生してしまう特性の都合で、集合するまでは使わないと思います」
「なるほどー」
なるほどじゃねぇぇぇぇ!!!何言ってんだこいつ!皆聞こえてる状態でバラすな!!全部作戦当たってるんですけどー!!?
うーん、今すぐ作戦変更するか……?でも伝える手段がない……。ていうか、作戦も思いつかない…。こいつマジで許さんからな!!!
そうこうしているうちにカウントダウンは10秒前……。
9
8
7、6、5、4、
3
2
1
転送が始まった。また一瞬だけ暗くなると、すぐさま目の前が明るくなる。
マップを確認する。街中央の南に集まる予定だったが、北の外縁部の路地裏に転送されたようだ……よりによって一番遠い…。
周囲は……。薄暗いが障害物もない狭い通路で遠くまで見通しても誰もいない。とりあえずは予定通り中央を目指すか。
テンペストイーグルを構えて走り出す。
遠くの方でパンパンと銃声が聞こえた。ヤマトみたいに集中的に狙われなくとも、接敵は意外と早そうだ。
この暗い路地は意外と高い壁に囲まれていて、警戒していた高いところからの狙撃は心配しなくても良さそうだ。
銃声、剣戟、ただの物音ではない音が少しずつ増えていっている。この路地を超えるといきなり大人数が待っている可能性すらある。分かれ道を南へ。だんだんと路地の終わりへと向かっている。
左、右…ちょっとした迷路のようになっている路地を進む。
路地の終わりが見えた!まあだいぶ向こうだが、その先は開けている。一直線。邪魔する物も人もいない。
「よし」
あと50メートルほどか。大通りに出た瞬間に誰かがいたら迎撃できるようにしないと……。
30メートル……もう少し。
「!!!」
あと10メートルの地点にドアがあった。それがいきなり開く。それと同時に頭からつま先まで甲冑を着た大男が飛び出てきた!
得物は大剣、路地は狭いし、開けたドアが通路をほとんど塞いで邪魔で飛んで越える事も出来ない……。一度引き返したいが、挟み撃ちの可能性もある……!
倒す!
走りながらテンペストイーグルを構えてスキル発動、そしてバフが入った弾丸を発射。三発。
甲冑男は大剣を盾にしてガード。
「……」
甲冑を着ているが、防御特化のモノではなさそうだ。ならば突き進む!
俺は追加で発砲しながら距離を詰めていく、甲冑男はガードをしながら動かない。
弾倉を空にしてさらに進んで行く残り男との距離は3メートル、もう、大剣の間合いに入る。
「はや!」
甲冑男は俺がここまで距離を詰めているとは思っていなかったようで、思わず声を漏らした。声の具合からして俺と同い年くらいか?慌てて大剣を振り上げて、攻撃する素振りを見せた。
「っ!」
狙いも余りつけずにそれを振り下ろす。
俺はバックステップでその一撃をリロードしつつ回避。大剣は地面を抉った。スキルを使った振り下ろしだったようで、持ち上げるのに少しモタついている。その一瞬を見逃すわけにはいかない。
装填を終えたテンペストイーグルを発射。下げてくれた頭は狙いやすく四発が命中する。
「ああああ!」
狼狽える声。ヘッドショットだが、兜に当たったため兜が歪なかたちに変形した。
慌ててしまえばあとは簡単な話だ。男は大剣をむやみやたらに振り回し始めた。あとはもうリズムゲーのように大剣を避けながら頭に弾丸を撃ち込んでいく。
六発目を撃ち込むとヘッドショットの表示がなされた。兜の耐久力が無くなって頭に命中したらしい。男はどしゃりと倒れる。
「ふう……大変だ……」
男を跨いで先に進むと、さっき出てきたドアだ。一応部屋の方を見ると回復アイテムが転がっていた。ラッキー!小回復だがないよりはマシ。四個あったところを見ると、甲冑男はさっきみたいに待ち伏せしてプレイヤーを倒していたみたいだな。
こういうプレイヤーも序盤は多い、路地では気をつけねば……。
「さ、次々……」
邪魔だったドアを閉めて路地を進む……。大通りはすぐそこだ。
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