第86話
「ふぃ~……疲れた……」
俺は
青王杯の賞金が入ったおかげで俺は次世代型VRゲーム機ニューワールドを買った。ついでに両親には俺がカケルだという事がバレて、高校生に50万は大金だということで賞金も半分渡すことになった。これについては全額没収されることも想定していたので、意外と少なくて驚いた。両親どちらも喜んで好きなものを買っていたので少しは親孝行できたから良かったのかなと思った。この年齢で親孝行とかあんまできないだろうしね。
んで、もちろん速度制限の件も解決しようと家の回線工事を頼もうとしたのだが、なんとこれは母に止められてしまった。理由は教えてくれず、それならばと勝手に業者に行ってみたが何故か渋い顔をされて断られた。納得がいかず理由を聞いてみると「とにかく出来ない」の一点張りで帰されてしまったのだ。そんなことある?とにかくそのせいでここ最近母とは少し感じが悪くなってしまっている。親孝行とか言っていたのにこれだ。
とにかくまぁそんな感じで家での速度制限は未解決。相変わらずヤマト……桜のお世話になっている。今日は課題の残りもやってしまわないといけなかった為、仕方なく自宅でインしていたってわけだ。さっきの撃退イベントでの諸事情とはこれの事だ。
「飯食ったら課題やっちまうか」
そう独り
「終わってない」
そう返信すると既読が付いた瞬間通話がかかってきた。
「翔ちゃん!一緒に通話しながらやろ~!!できれば写せるとこ写させてぇ~!!」
「写せるとこって……どんだけやってないとよ」
「ほぼ全部……」
リリは半泣きの声。ほぼ全部って……普段不真面目ではないし成績もいい方のリリが珍しい。今日は眠れそうにないな……。
その日は朝方まで通話が続いた。俺の課題は意外とすぐに終わってしまい、ほとんどリリに付き合った形だ……写せる分をコピペしてリリに送ったりいろいろやっていたら外が白んできて焦って眠りについた。
おかげで寝不足……。いつも通り学校が終わったら桜の家に行ってインフィニティをするつもりだったが睡魔に襲われて行けなかった。
そのまま爆睡して翌朝を迎えた。いつもより少し早めに起きたので珍しく朝シャンしてリビングに行くと父親がコーヒーを飲んでいた。
「おはよう。今日は早いな」
「昨日帰ってすぐ寝たけん、早く起きてしまった」
「なるほど」
そう言って父はテレビを観る。母はキッチンで俺の分の朝食を準備してくれていた。「おはよう」と言ってコーヒーとトーストとベーコンエッグをテーブルに並べる。
「おはよう」
俺も一言言って所定の椅子に座る。うーんなんだか話し辛い……別に大喧嘩してるってわけでもないのに。母も母で明らかに口数が少なくなっている……。これは俺が謝った方が良いのか?しかし何に?俺は別に回線工事したかっただけだし……お金はあるんだし、ダメな理由がない。そう思うとなんで回線工事したらいけないのかとまたイライラしてきた。
そのままイライラに任せて朝食をかき込む。ベーコンが意外とカリカリにしてあって喉に刺さった気がするけど気にしない!
「ごちそうさま」
最後にコーヒーですべてを流し込んで食器を流しへ持っていき、そのまま部屋に戻り、さっさと着替えて学校へ。いつもより少し早いが関係ない。
しゃこしゃこと自転車を漕いで学校に着くと、案の定登校している生徒の姿はなかった。しかしながら朝補修をしているクラスなどがある為、
どうせこれなら俺が教室に一番に行くんだろうし職員室へ鍵を取りに行くと、うちのクラスの鍵はもうすでになかった。日頃朝のホームルーム10分前とかそのくらいに着くから知らなかったけどかなり早く来てる生徒とかいたんだな。
そんなことを考えながら教室へ。ついでにスマホでSNSのチェックをしながら。歩きスマホごめんなちゃい。
「おろ?」
どこかの不殺の剣士のような声を出してしまった。灯りが点いていない。確かに職員室には鍵はなかった。
とりあえず試しに扉に手をかけると普通にガラガラと音を立てて開いた。なんだ開いてるじゃん!灯りくらい点けろよ~とか思いながら教室いる奴を探す。そして俺は止まってしまった。
「……は?」
教室の中には確かに1人女子生徒が居た。
しかしながら、その女子は俺のクラスの人間ではなかった。黒髪で長髪、髪をゆるくまとめてポニーテールを作って、前髪は頑張ったのか眉毛にかからないようにカールしている。スカートは膝まで、ブレザーもサイズが少し合ってないような感じがした。そして、ネクタイの色でわかった。こいつ一年生、後輩だ。顔は少し地味な印象があったが恐らくまだ二年生のように校則のグレーゾーンがわからない為、メイクをしていないせいもあるだろう。
だが、俺が止まった理由がただ女子がいるからではない。中学生じゃあるまいし!女子の前でふざけてる奴がモテるとか思ってないから!
「……何やってんの」
俺が言うと女子は少し身体を強張らせた。
その女子は俺の席に立っていたのだ。そして、左手には油性ペンを持って明らかに俺の机に何かを書いている途中だった。
「あ……」
女子は少しか細い声で言ったが誰もいない朝の教室では十分に響いた。
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