第75話
VRゴーグルを外す。すごい汗で額とかがべちゃべちゃだった。とりあえず近くにあるティッシュを使って拭く。うへー汚い。
パソコンでSNSを見てみると準決勝の話題でタイムラインが埋まっていた。リプライも大量に来ていたが見る気にならない。またフォロワーも増えてるし……。ソラノがまた余計なこと言ってないよな?と大野城亜弥香さんを検索して確認してみると「カケルくんやったー><カケルくんなら勝てると思ってた!」との投稿……。なんでこの人、SNSだとカケルくんなんだろ……。
するとスマホが鳴る。桜からだ。
見ると「通話かけていい?」と言っている変な鳥のスタンプが送られてきていた。
俺も「OK!」って言っているキャラクターのスタンプを返した。その次の瞬間には通話がかかってくる。流石、通話かけるのも早いっすわ。
「はい」
「……もしもし……」
「はいはい」
何でこの子は通話になると少しお淑やかになるんだ。ギャップか!?ギャップ萌え狙ってるのか?無理だぞ!もう!
「とりあえず、おめでとう」
「おう、そっちも」
「それで、あなたに伝えられなかった事があったから言っておこうかと思って」
「おう……」
なんだか姿勢よくしてしまう。
「あなた前、雷天黒斧に攻撃バフをかけたら死んだことあったやろ」
「あー、うん。あったな」
そういえばそれを桜にそれを報告した時、心当たりがあるみたいなこと言っていたな。
「一人似たようなユニーク武装を持ってる人を知ってて……。その人のユニーク武装は回復スキルとか防御スキルとかかけるとエネルギーが溜まっていって、攻撃バフをかけると点火して排熱口がブースターになるやつだった」
「えーっと、つまり、雷天黒斧もクニツクリみたいに加速して移動できるってこと?」
「クニツクリみたいにトリガーで操作する感じじゃないと思うからそこまではわからないけど。例えば、ライジングをスキルを使わないで一瞬加速したり、大ジャンプ出来たり、あとはブースターの速度分が攻撃力に加算されるかもしれないし」
「なるほど……使い方は色々ありそうだな」
ライジングやブーストジャンプなんかの回避に使える加速スキルはだいたいのプレイヤーが組み込むスキルだ。だからそれのリチャージ時間を計算しての読み合いなんかがよくある。もちろんソラノみたいな歩法とかの日本刀スキルも所持してるような例外もいるが……。もし桜が言うようにブースターが使えるのであれば相当有利に戦える。
「本当は昨日教えようと思ったんやけど……その、ごめん」
やっぱりいつもよりお淑やか!こわい!誰?この子!
「いいって、結局教えられてても今日は俺ん家でやってたんだし」
「……うん」
「ていうか、いいのか?俺に教えちゃって?敵に塩を送るみたいになってるけど」
「別に。私が本気で戦いたいだけやし、あとになってあれを使えてたら勝ってたみたいに思われたくもないし」
「そんなこと思うわけないだろ……」
「どうやろね……?でも、もし明日使うんなら何処かで試してからにして。確証はないんだし、デメリットも大きいから自爆して私が勝ったりしたらほんとに許さんけんね」
桜は声低く言った。さっきのお淑やかさはどこに行ったのか……。
「はい、それは気をつけます……」
「私が伝えたかったのはそれだけ。明日早めに家来て練習するやろ?」
「あ、うん。そうさせてもらう」
「じゃあ、待ってるから。また明日」
「おう、また明日。あ!あと……」
「何?」
「ありがとう」
「……」
返事が返ってこない。あれ?切っちゃった?一度スマホの画面を見るが通話は切れていない。
「もしもし?」
「……急になんよ」
「いや、お礼言っとこうかなと思って、色々と教えてもらったし」
「それは明日の試合で私に負けてからにして」
「俺が負けるのかよ!」
「そうよ、勝てると思っとると?」
通話の向こう側から「ふふん」と聞こえた気がした。全くこの王様は……。
「そのつもりでいるけど?」
「そう?明日楽しみにしとく」
「あぁ。楽しみにしといて。んじゃ、おやすみ」
「うん。おやすみなさい」
その言葉を聞くと俺は通話を切った。
ふぅ、明日は決勝か。
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