第34話
家にはこっそりと帰れた。翌日の朝、母にいつ帰ったのか聞かれたが、適当に帰った時間を誤魔化した。しかしそれ以上何も言われなくて助かった……。寛大すぎません?
学校に行くと、敗者復活戦を観ていた友達が色々話しかけてきた、俺、友達こんなにいたっけ?と思ったが悪い気はしなかった。どうやらじわじわと俺が有名人になってきているらしい……。特に、昨日のきりぼし大根戦は現白王を倒したという事で、学校どころか、ネットの記事、朝のスポーツニュースになっていたようだ。俺は必死に言い訳を考えていたせいで朝のニュースなんかは観てなかった。記事を見ると「
学校から帰ると俺は昨日と同じで親に遅くなると伝えて、タクシーに乗った。バイトを始めたとも伝えたが「いいことだ」と一言。何のバイトとかぜんっぜん聞かれなかった!やっぱり俺に興味ないんでしょうか!!!??
桜の家に着くと、俺はインターホンを押す。しばらく経つとやはり黙って門が開いた。中に入ると、玄関の鍵は……かかってますねはい。
しかし、今日は少し待つ鍵を開けてくれた。
「いらっしゃい」
今日の桜はあのタイツを着ていて、いつもの制服を着ていた。制服すっきゃなー!最初は何で生足じゃないんだとキレかけたが、今日は桜が戦う日、それでタイツを着ているんだろう。いいんですよ!いいんです!タイツも嫌いじゃないし。
一緒にエレベーターに乗ると桜が口を開く。
「あなたいちいち迎えるの面倒なんだけど」
いや、俺も悪いなーとは思ってますけど鍵開いてるのも危ないですし、仕方ないと思いますよ?我が王。ていうか、急に酷いこと言うねこの子。
「しょうがないやろ、普通にお邪魔してるわけなんだし」
「ニューワールドも何もかも貸して、来たら玄関まで迎えに行くって、おかしくない?」
「おかしくないわ!あんたが貸してくれるって言うから借りに来てるわけで……。そんなら、明日から家でやるんだが」
「……それだとあなたが勝てない……」
「……」
実際感謝はしてる。悪いなとも思っている。勝ちたいが、正直まだなんでここまでしてくれるのかもわからないとこがある。そこまで面倒なら別に無理して俺を助けてくれる必要はない。
二人とも黙っているとエレベーターが三階に着く。俺が扉を閉まらないよう押さえていると、桜は先に出る。それを見届けると俺も出た。
これ以上は甘えるわけにもいかない、自分でバイトしてお金貯めて環境を整えよう、そうしたいって思えただけよかったんだから。だから桜に言おうと思った。
「きりぼし大根にも勝てたし、雷天黒斧とも出会えたから俺は結構満足してるし、明日からは――――」
俺がそう言っていると、桜は部屋の扉を開いて待っていて、遮るように言った。
「鍵あげるから、明日からはもう勝手に入ってきて!」
「はい?」
「アプリで開くようになってるから、勝手に入って来て、めんどくさい……」
桜は何故か身体をもじもじさせながら赤面している。赤面するなら言わないでほしいんだが?だが?
しかも、返事を少ししなかったら終いには睨むし。目が赤くない分怖くないですよーだ。
「わーかった。そうします」
俺は諦めてそう答えた。
「最初からこうすればよかった……」
桜はぶつぶつ言いながら部屋に入って行く。その姿に少し笑ってしまった。俺もそれを追いかけて入室する。
感謝してるし、悪いなとも思ってるし、バイトもしようかなって思ったから俺は決めた。
「んじゃ、お礼にこの家の家事してやるよ」
「……え?」
「だから、この家の家事してやる、掃除とか?洗濯?」
「いい!そんなの!」
「ちょこちょこ気になるとこがあんの!」
トイレのサボったリングとか!
「何見て気になっとるとよ!変態!」
「はぁ!?」
あー、洗濯って言ったから下着見られるとか思ってるのか、大丈夫、もうそれ以上のものは見てる……安心しな。
ということで、筑紫翔、十七歳。女の子の家の合鍵を頂きました。
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