第11話
カレンには同じ福岡出身のヤマトさんが俺の事を不憫に思ってニューワールドを貸してくれたと説明した。ヤマトもそのあたりは話を合わせてくれたおかげで何とかカレンは信じてくれた。
説明している間に装甲車は第三圏の樹海に入っていて、もう第四圏はすぐそこだ。途中モンスターから一撃で死ぬような攻撃を何度か食らったが、少し揺れたぐらいで済んだ。ほんとどんだけカスタムしたんだこの車は……。
「第四圏に入る」
ヤマトは冷静に言う。俺はと言えば初めて第四圏に来るという事もあるが、ニューワールドを通した世界を見ているせいで興奮が冷めやらなかった。カレンはというと第三圏に来た辺りからモンスターの攻撃に悲鳴ばかり上げて俺の腕に掴まって震えあがっていた。腕に掴まられてる感触あります。
第四圏に入った瞬間世界が一変した。SNSのイベント攻略組のスクショなんかは見たことあったけどこれほどとは思わなかった。
眼前には巨大な活火山、地面はその溶岩が冷え固まったと思われる真っ黒な大地。空は黒煙で覆われているのに所々噴き出る溶岩のせいで無駄に明るかった。
「これが第四圏……」
俺はただただ景色に目を奪われた。いつの間にかカレンも窓の外の景色に意識を持っていかれていた。
ヤマトはハンドルを握った。
「あそこだったかな」
そう言うと装甲車を近くにあった洞窟の中に向かわせた。なんだ?洞窟の中にでも何かあるのか?車は細道を通っていく、ヘッドライトの先はずっと闇。
「これどこに向かってるの?」
「もう着く」
ヤマトがそう言うと細道ではなくなった、おそらく大きな空洞に出たのだろう。だが真っ暗でよくわからない。
すると車が止まった。
「ここ」
ヤマトはそう言い捨てると車からさっさと降りた。それに倣い俺とカレンも車から降りる。
車のライト以外光源がないせいでここの全体が掴めない、声の反射から相当広い空間だという事はわかった。
すると暗闇の中からヤマトの声がする。
「カレンさん、光源系の魔法とか使える?」
「あ、はい、覚えてるけど……」
光源系魔法はその名の通り、暗い場所を照らす魔法だ。一応霊属性のモンスターならジワジワとダメージが入るので高位の光源系魔法だと意外とえぐいダメージを与えることが出来る。
「じゃあ、お願いしていいです?」
「はーい」
カレンは呑気に返事をするとメニュー画面を開く。戦闘中などは詠唱をしたり、クイックボタンに入れたりでそんなことはしないのだが、光源系はあまり使わない。
カレンが魔法を選択した仕草をすると、カレンの身体から小さな光球が三つ生まれそれが回転しながら上昇。花火のように弾けた。すると、辺りが一気に照らされた。
周囲を見渡すとここはかなり大きなドームになっており、行き止まりになっていた。
「モンスターの巣っぽいな……」
俺がそう独り言を言う。
「そう、ここはこの前のイベントで最初にモンスターと戦うとこ」
「ひぇ」
思わずカレンが声を漏らした。
「大丈夫、イベントは終わったしここ何も出ないから」
「何も出ない?」
じゃあなんでわざわざこんなところに連れてきたんだ?俺が渋い顔をしていたのがわかったのか、ヤマトは続ける。
「ここに来たのは、あんたと戦う為」
ぼそりと言った。と、同時に決闘の申し込みが送られてきた。
「は?」
このゲームは突然プレイヤーに斬りかかることはできない。しかし、プレイヤー同士の戦闘はできないわけではない、一つは青王杯のような大会、もう一つは決闘だ。決闘は勝った場合の賞金などを決めてお互いが合意すれば始めることが出来る。賞金はなくても構わない。そして、今俺にその賞金なしの決闘申し込みが送り付けられている。
「ええ……なんで……。ていうか昨日俺に勝ったやろ」
いやほんと何で……。訳が分からない。
「決闘受けらんないの?賞金なしよ?負けても痛くないんだしいいやん」
「いや、受けてもいいけど、なんでなのか先に聞かせてくんないと……、ていうか決闘ならこんなとこ来なくてもできたやんか!」
俺が言うと、カレンも黙って小刻みに頷く。ヤマトは諦めたように腰に手を置いて一呼吸した。
「はぁ……。ここに来たのは決闘してるのが誰にも見られないように。第三圏くらいまでは普通に人がいたりするし、第四圏でこの場所はあの道使わないと来れないから人が来ても分かるやろ」
まぁ確かに、第四圏なんてこんな課金
「あとなんで決闘なの」
「あんたのやってるインフィニティの状況をわからせる為」
「それはもうわかったって!」
なんだよ押し付けがましいな……俺だってニューワールド買えるなら買っとるわ!!しかしヤマトは言う。
「わかってない!ていうかニューワールドだけの話じゃないから!あんたは!」
んん?どういうことだ……?
「とりあえず受けなさい!戦ったらわかるから!」
「どうしても?」
渋い顔をしてみる。負ける戦いはしたくない。
するとヤマトはさっきまで興奮気味に言っていたというのに、急に落ち着いた顔になった。お?諦めたか?
「あんた、今どこにいるのかバラすよ」
!!!!!
「え?カケル、今家じゃないの!?」
「家だよぉ?家!」
鬼だ!こいつ俺がヤマトの家にいるのを知られたくないという淡い男心をぉぉ!!!くそっ!!
「受けるしかないのか……」
俺がそう言うとヤマトは鼻で笑った。こいつ絶対許さねぇ!!!
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