レベル4 装備力0の冒険者
夜子はもう一度スマホのネット環境を見たが、電波のところにはバツ印が表示されていた。
「電波はないのかぁ、ちょっとがっかり」
頭をたれて落ち込んでいるところに、先程の綺麗なお姉さんが申し訳なさそうに夜子に「あのー、蒼井夜子さんですよね?見たところジャージや運動靴を履いていないですよね?当社でジャージと運動靴をお貸ししますが?」と、言ってきた。
「あっ」と声を上げて自分の格好を見ると、スキニージーンズと紺のパーカーという出で立ちで、しかも足は裸足のまま。
無意識の呟きで異世界へ飛ばされたので、心の準備やら服装の準備をしていなかった。
夜子は「...貸してください。お願いします...」と、お姉さんに伝えたところ「服と足のサイズを教えてください!」と、ニッコリスマイル。
初めて会う見知らぬ人に自分のサイズを教えるのは気を引けるが、「服はMサイズ、靴は23.5cmでお願いします」と、ちょっぴり小声で教えた。
「かしこまりました!ここからジャージと運動靴の説明をしますね!」
お姉さんは何故かイキイキしながら話し出した。きっと、初めて会う人に説明をするのが仕事なのだろうと、夜子はお姉さんを観察をして思った。
「それではご説明をします。ジャージと運動靴は装備をした方が条件をクリアをしてレベルアップをしていくと、布地の質が良くなっていきます。最初のうちは布地がうっっっっっっすいので寒さしのぎは洞穴や宿でお願いします。運動靴に至っては底がツルツルなので、雨降りや地面が滑りやすい所はお気をつけてください。ここまでのご質問はありますか?」
一気に説明をしてくれたお姉さんは、やりきった感を醸し出していた。
「あの、装備にレベルがあるって言ってましたよね?最初の装備のレベルは大体どの位なんでしょうか?」
布地が大分薄いと言っていたので少し不安になり、夜子は聞いてみた。
これもニッコリスマイルで「初めての方の装備力は0です!」と、ハッキリ言った。
「(えぇぇ!!ゼローーー??)わ、分かりました」
夜子は不安な気持ちを抑えた。
「それではお着替えをどうぞ!あ、足の裏が汚れちゃってますね。おしぼりと靴下もどうぞ!」と、布地のうっっすい緑色の三本線ジャージの上下と布地のうっっすい運動靴、それと、どこから出したのかおしぼりと靴下も手渡された。
(どこで着替えろと!?)
キョロキョロしている夜子に気付いたのか「すいません、説明不足でしたね...着替えは我が社[クーフォン]の中の更衣室で着替えてもらうのですが、そこまで行く道のりは夜子さんの前に黒い道が現れるので、それを辿って行ってください」
この説明を夜子は、おしぼりで足を拭いて、渡された靴下と運動靴を履きながら聞いていた。
(布が薄いと足が寒い!)
ちょっと不満を覚えつつ、教えてくれた[クーフォン]の会社まで行こうと、夜子は右足を1歩踏み出した瞬間に黒い道がスゥッと出てきて、どこまでも続いているのが見えた。
(これが道かぁ、また落ちないよね?)
この世界に落ちてきたあの風景を思い出し不安に思ったが「では、よい旅を!」と、見送られたので意を決して歩き出した。
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