Safari Drive Gear2

カンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカン!


廊下の奥から金属を叩く音が響いてきた朝。


目にはカーテンで優しくなったハズの光がその優しさを持たず飛び込んで来た。


隣には未だ寝息をたて、俺をしっかり抱いて離さないジェーンさんが。母親の優しさがいまいち分からない俺だが、きっとこうしてくれるのが母親なんだろう。



まともに覚えてやしないぞ小さい頃なんて。


はぁ…幸せそうな寝顔だ、この寝顔を護りたいもんだねぇ?まぁ朝だし起こそうかなとは思うけど。


「…んーあともう少し寝たいです…5分…」


あぁ~かわいいわーおこしちゃったら可哀想だわ~飯食ってこようカンカンカンカンカンカンはどうせ姉さんだろうなぁ~なんだろなー


そんなこんなで朝食を済ませ着替えてまたパソコンの前で座ってタイプツー弄って見てる


冷静になってみれば自分でも笑えるしょーもないミスをやらかしてる、アホくささに抱腹絶倒してたらジェーンさんを起こしてしまったのでお詫びのハグ…

___________________


というのが午前中の話、ジェーンさんはレッスン行ったし俺は姉さんとコーヒー啜っている。


「今日トワ園長来るかもしれないからなぁ…セントラルから離れてる方なんだけど本部あっちだし園長も大変だなぁ…」


姉さんが本棚の本を整頓しながらブツブツと言う、そういえば園長さんとまともに話した事無いかもしれないな、園長さんはセントラルとこの辺を行ったり来たりしてるようだしね、多忙なんだろう。


パーク創世時期、大学に行っていた姉さんは研究機関にお呼ばれされていたらしい、時系列をまとめると…


サンドスター、フレンズ及び島々の発見→パーク最初期(まだ営業前)→俺が拾われる(身体的特徴から6歳位と判断)→姉さんパークにお呼ばれ(パーク営業活動開始)→姉さんがある程度研究機関で成績をあげる(帰ってこない)→俺14位で旅開始、姉さんはどうやらこの辺りでセルリアンに襲われる→キョウシュウ立ち入り禁止、復活した姉さんがタイプツー開発、旧型(Version0)を処分…したはずだったが何者かによって海岸へ→俺漂流


ひぃー長い、抜けがあるかもしれないが大体こんな感じだと思う…(記憶ガバガバ)


幼い頃からフレンズと関わりを持つ人に囲まれていたが、あまり興味が無いうえにまともに話をして貰った覚えも無い。


それ以上に…

それ以上に大変だった。

ごめんよ姉さん、どんどん返してくから…!

親孝行?姉孝行?


まぁとにかくそういう奴だ。



しばらくして本当に園長さんが来た。





___________________



「久しぶりですね、シキさん」


「こちらこそ、ご無沙汰してます園長さん」


改めて見て思うのだが、園長さんは凄く若い見た目をしてらっしゃる、というか若い、ミライさんと同じ位だろうか。


「今日尋ねた用事って言うのは他でも無い貴方、シキさんに用があるのです」


「俺に、ですか。サンドスターを応用した機械やらシステムのお話なら難易度によってはどうにもならないとこもありますが…」


園長さんは苦笑いをしながら頭を搔いた。


「…姉弟らしいですね、お姉さん、カコ博士とそっくり…そーゆー事務的な対応をしてくるのなんて本当にそっくりだ。…まぁ、それは今日尋ねた理由の1つですが」


ほう…俺に園長さんが直々に…か。


「まず1つ目、我々は貴方に謝罪をせねばなりません…貴方はご自身の身を顧みずにこのパークキョウシュウエリアを護ってくれている、それは我々の仕事なのです。だが貴方は…」


「ただの漂流者、ですもんね。確かにそうかもしれません。ですが俺はココに流れ着いた…要するに助けられたんです、フレンズに、パークに、そして貴方達に。」


「そんな事を言って貰えて、喜んではいけないのですが、ありがたい限りです…それでその…2つ目の我々のお願いも聞いていただけますか…?」


「困難は群れで分け合え、ですよね?全然構いませんよ、それに俺としても貴方達にお願いしたい事もありますし…」


良かったです…ありがとうございます!

と目を大きく開けて俺の手を握った園長さんは、その手を鞄に滑らせてクリアファイルから資料をホッチキスで止めた物を出した。


「目を通す前に1つ聞いておきたいのですが…シキさんはエンジンなどは触れますかね?」


エンジンか、バイク位しか触ってないが…


「一応触れますが…バイク位…できて普通車のレベルかと思います。」


「十分すぎます!資料3枚目をみて頂けますか?そちらを触って欲しいのです。」


3枚目ねぇ…

ページをめくって目に飛び込んできたのはおびただしい量の説明文とわりとわかりやすい図式だ。

俺がエンジンの機構を用いて何をするのか、と尋ねると、園長さんは飲んでいたコーヒーのカップを急いで置いて、


「実はタイプツーシステムの開発に協力出来れば、と思いまして、サンドスター分離機を作成しようかと…」


「え”っ”!?サンドスター分離機!?」


「そうですが…何か問題点が?」


まてまてまてまてまて!!!!

好都合すぎる!


「俺丁度開発に困ってたんですよ!サンドスター分離機かぁ…!是非!是非是非是非俺にやらせて下さい!えぇ!」


「アッハハハっ!そーゆー所も本当にお姉さんそっくりです!えぇやりましょう!貴方の協力が出来るなら、キョウシュウエリアの再復活を実現するために!パーク職員一同やらせて貰います!」



俺と姉さんは本当の姉弟じゃない、

そう言うのはなんだか野暮な気がした。

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