おかえりカゾク

「どうしたの?ニヤニヤして?」

「ニヤニヤ?してないよ…」

してたかもしれない…

まぁ別に構わないよ、久々に姉さんの顔見られてこちらとしては満足だ。…なんだか明るい表情が増えたかな…?


俺が小さい頃姉さんは人見知りで、とにかく人と話すのを拒んでいた。

優しい性格である以上俺を見捨てるような事は出来なかったらしいが、一人で生活をやりくりしていた姉さんに俺は重い荷物だったはずだ。色々と感謝せねばならないな。


「…リネン…私が自分で名前付けといてアレだけど言いにくくない?」

「今更遅いよ…名前つける時に言うセリフだぞ…?」

そうだよね~、なんて笑ったりしていると、船の中からガラガラと聞こえて来た。

誰だろー?

だ、だ…誰だろー?(震え声)

その美貌は相変わらず、黄緑のふんわりした髪の毛に探検帽とでも呼べばしっくりくる帽子をかぶり、昔に比べりゃちょっと落ち着いたその姿こそ、俺の親戚であり天敵。

ミライさんだ。


「リネン君!久しぶりだねぇーっ!」

やっぱり来たぁ!

そう体を臨戦態勢にしたが時すでに遅し。

”もふもふ”の餌食となった。


もふもふ…

それはミライさんが生み出した究極の奥義…

相手をふんわりと包み、安心させた所を狙って撫で回して来る凶悪な技。

イヌ、ネコ、鳥、肉食獣までもを一瞬のうちに黙らせてしまうその手捌きは人相手にも効果を発揮する…つまりこうなる。


…暖けぇ←思考停止



_________________


さてやっと解放されたよ…

「グレープ君、情報の収集、提供ありがとうね、弟に会えるなんて思わなかったけど…」

「僕もびっくりです!弟さんじゃないかって言われて驚きですよ…」

俺もびっくりだよ、大体もう姉さんとは会わないかもって思ってたし…奇妙な物だな。


「…ねぇリネン、ちょっとそれ見せて…?」

「ん?これ?」

姉さんが指したのは俺のタイプツーだった。

「…初期型のタイプツーがキョウシュウに…?一体どう言う事なの…?大体どこで入手したのよこんなの…」

「拾い物を預かった、とでも言えば良いかな?海岸に落ちてたんだってさ」


ふーん…

そう姉さんは言った。

わかっているのか、判ってないのかがよく分からない…本人は納得しているのだろうか。



「まぁ、難しい話は後!それよりもリネン、いや…シキ?」

「姉さんの好きな方でいいよ、今更呼び方変えられてももう動じないさ」

「ならリネンで!」

…聞く必要性はあったのかい?

「お姉ちゃん…意外と寂しかったよ~?」

ボソっと耳元で囁いて来た。

へへへ、人見知り姉さんにはここで大声を晒していく勇気はないみたいだ。

…ほんっとなんも変わってないな。


リネン…やっぱりおっきくなったなぁ。

かがむ必要があったのに…もうこんなになって…3年もあれば充分…かな。

変わってるけど…変わって無いな


「遅くなったね、おかえり姉さん」

「ただいまリネン…」


 の顔がぼやけたのはきっと気のせいだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る