シキを巡るリンネ
…わいわいがやがや…
俺と隣のグレープさんの渾身の叫びは見事に彼女たちの騒ぐ音で消え去り、上書きするかのようにマーゲイさんの興奮しきった声が響き耳の鼓膜を刺激する。
「あちゃー…こりゃ駄目そうだな…」
「だんね。僕らの大っきい声がかき消されるとかホンット変わってないねマーゲイも…」
”変わってないね”…?
「あの…PPPさんとはかなり前からお知り合いなんですか?」
「結構長いね、フルルちゃんとはもうフレンズになってからずっとかも?まぁ…他の子とも仲いいよ?マーゲイはアイドル好き同士だからね、前から知り合いでねぇ~…」
へぇ…と適当に聞こえそうな返事をした。
興味が無いんじゃ無くて、ただただ感心するときはこう言ってしまう。
「これ…結構キツいね~…」
「ですねぇ…」
おそらく人生経験は彼の方が上。そう思うとどうも敬語が出る。まぁいいんじゃないかなとは思うが。
と、そんな所に寄ってくる影が。
コウテイさんだった。
「すまないウチのメンバーが…大丈夫かな…?」
「ハハハっ全然大丈夫ですよ…」
笑い飛ばしたいのもあるが、なにより心配かけちゃ悪い…そう思うと笑ってる。
「今外すよ…ホントごめん…」
「大丈夫だよ~全然へーきぃ!」
ハラリと紐はほどけ、フローリングにかさっと落ちる。
…ってんなこといっとる場合かクッソ!
目のやり場に困るって!なんで後ろに回ってほどくんじゃ無くて、こう、なんと言えば良いのか…かばう感じ?でほどくんだッ!
とにかく俺は死んだ()
グレープさんは慣れてるからなのかケロッとしてらっしゃる…
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しばらくして口の中にじゃぱりまんを突っ込んでもしゃついた。カレー味だった。
「そうだ!シキ君…だよね?」
「なんですかグレープさん?」
「君…シキって呼ばれるの馴れちゃったね?」
「…えぇ…まぁ」
なんだ…何が言いたい?
「僕、君を探すように頼まれたんだよね…ここ、キョウシュウのフレンズとしてね。」
そうだ、俺を探す目的はなんなんだ…
「誰が俺を…あのクソ共ですか…?」
「…クソかどうかは知らないけど、多分違うね。君なら聞いたことあるよね?」
グレープさんは淡々と進める。俺からしたら大問題だがなぁ…
「一人の女性…”ミライ"だよ。分かるよね?」
「あぁ…懐かしい…って!ミライさんがいたらもしかして…?」
「うん、君のお姉さんがいらっしゃるよ?」
あぁ…まぁ姉さんならいいか…
懐かしいなぁ…もうどんだけ家に戻って無いのかな…家を出て"人生の休暇"を使って旅を…2年ちょっとかな…
もちろんあんなクソの穴に帰るつもりは無い。姉さんの研究を踏みにじった非道な連中の家に…!
俺の血の繋がらない姉さん
姉さんの名前はカコ。
もう長らくあって無い。絶滅種の復元…だったっか…姉さんの研究。
俺の遠い遠い親戚の姉さん
それがミライさん。
動物園に行って働いているんだっけ、良く遊んでもらったや…
そしてこの俺シキ。
生まれも育ちも姓も名も分からなかった、
”放浪する運命"の持ち主。
実の親の名前なんざ知らねぇ。
カコ姉さんも…親が居なかった。
俺とカコ姉さんは、ミライさんの家系の親戚に引き取られて…
最悪だった。
逃げたんだ。
俺は旅人として、
姉さんは学者として。
「…そしてキミの名前…」
「あぁ…俺は…」
名乗るよ。
リネン。
これが俺の”名前"
姉さんが一晩かけて、原稿用紙、コピー用紙、紙という紙を全部使い果たして悩み悩んで付けてくれた”名前”
_____________
カコとミライ、そしてリネン。
彼らが逃げた先が奇しくもパークだと全員が知るのはまだこれから…
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