第25話 閑話・ヒルデの独白
はぁ~い。魔王軍の将軍をやってました、ダークエルフ族の頭領ヒルデでぇす~。
今は勇者セイヤー様の情婦です~♡
天使って言ってくださったんですよ~。
私、ダークエルフ族にはないくらい肉体を鍛えてきましたから、男どもはドン引きするくらいの筋肉ダルマなんですけどね。それを天使のように美しいって。私の今までの努力と筋肉が認められた瞬間でした~。
ちなみに「筋肉ダルマ」というのは、セイヤー様のいた異世界の言葉らしいんです。教えてもらいました♡ 意味は簡単に言うと「筋肉の塊」らしいです~。
ダルマというのは塊という意味ではなく、ちゃんとしたものなんだそうです~。
セイヤー様のいた世界では、壁に向かって九年の座禅を行った僧侶がいて、その鍛錬によって手足が腐ってなくなってしまうほどだったとか~。要はそれほどの鍛錬を積んだ者に与えられる称号なんです~♡
そういう意味ではセイヤー様は魔法ダルマですね~って言ったら「なにか違う」って言われちゃいました~。
確かに話を聞けば、セイヤー様は努力とか皆無ですべての魔法を操る天才さんですからぁ、ダルマじゃないですねぇ~。
これからダークエルフ族では、努力を極めた者にダルマの称号を与えることにしました~。
そのダルマの図をセイヤー様が魔法絵の具で空中に描いてくださったんですが、丸くて目がないんです~。
なぜ盲目なのか訪ねたら「これはいい事が起きたら黒目を描くダルマの像だ」って教えてくれました~。
願い事をするときに片方を黒く塗って、成就したらもう片方も塗って「完成」させるんですって~。
私は決めました~♡。
これからのダークエルフ族は、古いしきたりを捨てます~!
経典はダルマ♡
鍛錬を極めた者に送られる最高の栄誉はダルマの称号♡
七戦士はそれぞれ得意な武具を極めた者たちなので、剣ダルマ、弓ダルマ、槍ダルマ……と称号を送りましたぁ~。
セイヤー様がご滞在されている間に授与式をしようと思いまして~、やったんです~。
そうしたら「なにか違う」ってまた言われました~。
やっぱり天に召します我らがダルマ~って賛美歌がダメだったんでしょうかぁ~?
セイヤー様は「誤解を解こう」と、いろいろ教えてくれました~。
セイヤー様の世界ではダルマとは「宇宙の法と秩序、正義を司る神の名」なんだそうですぅ~♡
神の名であれば、称号としてこれほど最高位のものはありませんねぇ~♡
他にも「ダルマ落とし」という競技に「ダルマさんがころんだ」という諜報術、「にらめっこ」は『ダルマさんダルマさん、にらめっこしましょ笑うと負けよ、あっぷっぷ』という呪文詠唱後に、変な顔をして笑ったら負けという精神鍛錬の修行法も教えてもらえました~♡
目からうろこです~。ダークエルフ族はこれを族技として末永く伝え続けますぅ~♡
あと、みんなには内緒で、ダルマ式拷問法も教えてくれましたぁ~。
両手足をもいで肉穴と化す刑罰「ダルマ女」に、全身を焼き尽くす「火ダルマ」や、血という血を吹き出させる「血ダルマ」………凍りつく雪の中に閉じ込める「雪ダルマ」とか、結構怖い拷問ですよねぇ~。
ダークエルフ族に敵対する者たちはダルマ刑を味わってもらうことになるでしょ~♡
博識で、優しくて、最強の勇者、セイヤー様。
私達ダークエルフからは『マスターダルマ』と呼ばれていますが、ご本人が「なにか違う」と困られていたので、内緒でそう呼ぶことにしていますぅ~♡
私はこの生命も身体もすべてマスターダルマ・セイヤー様に捧げるつもりです~♡
と、思っていたら、あらあらまあまあ、七戦士も?
他のダークエルフの女たちもなのぉ?
どうして?
セイヤー様は素晴らしいけど、中年男性ですよ~? そんな大勢抱いてもらえると思わないほうが……あ、人間の王女と愛人もいますからね~。私は三番手ですから、あなたたちはもっと後ろになりますよ~?
その前に………マスターダルマ・セイヤー様に抱かれたくば、私の屍を超えていく覚悟があろうな?
覚悟と腕に自信がある者からかかってくるがいい!!
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