第24話 閑話・エカテリーナの独白

 いやぁ、王女様がぶっちゃけまくったあとに私ですかぁ。


 はい、エカテリーナです。侍女です。下町生まれの貧乏な家の出です。


 たまたま容姿端麗で、たまたま頭脳明晰で、たまたま居並ぶライバルの女たちを蹴落とすだけの胆力があったので、王城の侍女………しかもエーヴァ王女様の専属となりました。うへへ。


 エーヴァ様のあの金髪碧眼とか、佇まいとか、もう全て………そう、全てが私の好みなんです。


 え、セイヤーのおっさん?


 確かに勇者だし?


 非常識なほど強いし?


 やろうと思えば土から金貨も作れちゃうし?


 けど、おっさんだし………


 宰相のデー・ランジェ公爵からは「お前が勇者の血を残すのだ。これは大役だと知れ」って念を押して言われてるんですけどね。


 お役目とは言え、私まだ未経験未貫通の純潔だし? 私の純潔は王女様に捧げたいし? おっさんに抱かれるとか無理!って最初は思ってましたよ。


 特にあのおっさんは人付合いとか下手くそだし、ちょっと目を離すと碌なことしないし?


 この前の酒場を転移させたり、花火とかいう魔法を見せられたときは、私も酔っ払ってましたから抱きついてキャッキャしてましたけど!


 そ、そりゃあ私のことを「美人だ」と言いやがりましたけど!


 び、美人だなんて当然のことなんです。今までどれだけの男にそう褒められてきたことか!


 それに他の男達からは、相当熱のこもった「美しい」「きみのためなら死ねる」みたいな言葉をもらってきました。なのにあのおっさんは淡々と「美しいけどそれがなにか?」って薄っぺらく言うんです。


 熱がこもっていないけど、社交辞令とかじゃくて「当然のことだ」みたいな言い方だったんですよ、それ。


 心の底からそう思ってるからの態度ですよね。


 熱がこもりまくった口説き文句って、どこか芝居臭いんですが、それがないんです。


 ええ、わかりました、言いますよ!


 ちょっとその気になってもいいかな~って思いましたよ!


 思ってますよ!


 勇者の子供を生めたら、帝国の中で私はおそらく上流階級デビューになるでしょうしね! 打算的にもアリです!


 そ、そりゃあ、あのおっさんが食卓で淡々と紅茶を飲むのを見ながら子供に母乳を与えてる光景とか、はっきりばっちり想定できてますよ!


 おっさんなんで私よりきっと先に死ぬんですけど、私は子供と一緒に泣くんです。お墓の前には毎日花を置くんです。


 ええ、そこまで想定済みですよ!


 あのおっさんから夜に忍び込まれたら拒否れませんよ! 拒否りませんよ! ドアの鍵はいつも開けてますし!


 けど、来ないんです。まるで来ないんです!


 仕方ないから、渋々と通りすがりにお尻を当てたり胸を当てたりして「気付き」を与えても、あのおっさんは「すまん、当たってしまった」って………当てたんだっちゅうの!


 あんた微動だにしてなかったのわかってるのに謝るの!? 他の貴族とか男だったらニヤニヤしながら尻肉を掴んでくるというのに!


 ………こほん、失礼しました。


 帝国の男どもは嫌いですが、おっさんは、まぁ、ちょっとはいいかなって思ってます。


 もちろんエーヴァ様から夜のお勤めを求められたらそっちを優先しますけどね!

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