第五章:北欧神話の知識

ルーン文字

※どうやらスマートフォンなどではうまく出力出来ないようですので、なるべくPC上での閲覧を推奨します。


 〈概要〉

 ルーン文字はオーディンがユグドラシルに自らを吊り、自分を自分に捧げて発明したといわれています。とはいえ、ルーン文字といわれてピンとくる人は、よほどの歴史オタクか文字オタクかナチスオタクかはたまたルーン文字オタクでしょう。一般的にはあまり知られてません。今回はこの謎の文字を見ていきます。小説の細かい部分に使えるかもしれません。


 〈ルーン文字とは〉

 ルーン文字のルーン(rune)は「秘密」を意味します。ゲルマン民族のもちいた最古のアルファベットとされ、その多くは単純な直線でできていますから、書くというよりも刻むのに適しています。一文字一文字に呪術的な意味が込められており、そのため魔法や迷信に応用されたといいます。

 主神オーディンは、魔槍グングニルの穂先に、「揺らめくもの」というその名の由来ともなった言葉をルーンで刻んでいました。それをまねして、古代のゲルマン民族の武器には何か知らのルーン文字が刻まれていることが多かったようです。


 〈一覧〉

 出力できているかわかりませんが、一般的なルーンを書き連ねています。意味に関しては無数にあるので、主要なものだけ取り上げています。書きこぼしなどは

ご容赦ください。

――――――

ルーン/音価/読み/意味

・ᚠ f フェオ:家畜、富、財産、所有

・ᚢ u ウル;野生の古代牛オウルコス、力、勇気、試練

・ᚦ th ソーン:巨人、怪物、戒め、警告、トゲ

・ᚨ a アスク:口、言葉、オーディン情報、歌、知識

・ᚱ r ラド:車輪、乗り物、導き、旅、進展

・ᚲ k カノ:炎、松明、情熱、ひらめき、希望

・ᚷ g ギューフ:愛、贈り物、相愛、才能

・ᚹ w ウィン:喜び、美、潜在能力、幸福

・ᚻ h ハガル:雹、トラブル、天災、中断

・ᚾ n ニイド:必要性、宿命、苦悩、束縛

・ᛁ i イサ:氷、準備、停滞、犠牲

・ᛃ j ヤラ:一年、収穫、報われる努力

・ᛇ iː ユル:イチイの樹

・ᛈ p パース:秘密、勝負、運を天に任せる

・ᛉ z アルジズ:大鹿、友、保護、助け、記憶

・ᛋ s ソウェイル:太陽、命の根源、自身

・ᛏ t テュール:戦士、勝利、積極性、根性

・ᛒ b ベルカナ:カバの樹、成長、生命力、癒し

・ᛖ e エワズ:馬、成功、栄誉

・ᛗ m マンナズ:人間、人間関係、自己、平等

・ᛚ l ラング;水、感情の動き、優しさ

・ᛜ ing イング:豊穣、愛に満たされる、安定

・ᛟ o オセル:故郷、領土、継承、伝統、家族

・ᛞ d ダエグ:一日、人生、輪廻、突破

・   ウィアド:運命、宿命、未知、神の意志

  ※ウィアドは空白のルーンのため、文字がありませんが、意味を持ちます。


 〈北欧神話の観点から〉

 私はこの作品のどこかで「ウル」という青年の神が、古くはとても大きな力を持っていたということを述べていたと思いますが、ルーン文字がその根拠のひとつとなりますね。第五の文字ウルは、名前からわかる通りおそらくウルを表しています。オーディンやトール、フレイを差し置いて、現在ではあまりメジャーではない神がルーン文字化するなどということはまずあり得ませんよね? これはルーン文字が作成された時期に、まだこの神が崇拝されていたということを表しています。

 もっとわかりやすいものでいうと、第十七ルーンテュールは、軍神テュールを示しています。このルーンはテュールが戦の神だったがゆえに「勝利」という意味を持っていますから、戦場ではおそらく引っ張りだこだったでしょう。

 皆さんは、北欧神話最初の人間を覚えていますでしょうか? そう、「アスクとエムブラ」でしたよね? そして第四ルーンアスクは、それと同じ名前です。なるほど意味を見ても、人間にかかわるものばかりな気がしませんか。


 〈ルーン文字の変遷〉

 ルーン文字は2,3世紀からスカンディナビア半島でもちいられてきましたが、ゲルマン人の大移動によって各地に広まりました。5世紀にはイングランドやドイツにまでも広がり、17世紀ごろまでもちいられたといいます。

 私がここに示したルーンは、初期のルーンです。のちに「枝のルーン」や「第二のルーン」といわれるルーン文字が北欧三国やスウェーデン、デンマークで使われました。それぞれ微妙に異なっていますので(例:同じアスクでも、ᚨとᚩ・ギューフもᚷとᚸといった違いです)、興味がある方は調べてみてください。

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