Ⅵ.再生

 辺りを囲む一面の水から、大地、それから新たな命が顔を表します。荒地だと思われていた場所に初々しい草木が生え、青々とした山が出来ます。空にはスコルに飲み込まれた太陽の娘が、母親に負けず劣らず燦々と輝いており、鳥も飛び交います。


 海はまた母としての性質を恢復し、魚を泳がせ、貝を育みます。


 そして、多くの神が死んでいった中、火災にも洪水にも耐え抜いたヴィーザルとヴァーリ、そしてトールの子孫モージとマグニが邂逅を果たします。トールの息子らはミョルニルを引き継いでいました。さらにバルドルとヘズは冥界から甦り、新世界の平原を闊歩します。皆は力を合わせ、「風の故郷」と呼ばれる場所に住む天の神を作るといいます。そして彼らに、自分たちしか経験してこなかった楽しいことや壮絶な体験を語り、新たな世代を活気づけます。


 良い宮殿が再建される中、地下の「死体の岸」には地獄のようにまがまがしものが建てられます。さらにユグドラシルの根をかじっていた竜ニーズヘッグも生き延びており、悪事を働いた死人を食します。


 さて、こうして再生していったのは、自然や神々だけでしょうか? いやいや、人間もです。リーヴとリーヴスラシルというひとつがいの男女は、ラグナロク時にユグドラシルの内部、ホッドミーミルの森に隠れ住んでいました。二人はそうして死なずにすみ、朝露を糧に生き延び続けます。やがて彼らを始祖とした人類が、もう一度世界に散らばるのです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る