第155話 ユニコーン大迷惑

 数多の森系モンスターを倒しながらたどり着いたそこは――。


「な、なんだここは……」


 異臭の立ち込める黒い沼地だった。

 黒い粘着質の水が、ポコポコと辺りから湧き出している。

 酷く不気味な光景だった。


「……お兄ちゃん、怖いよう」


 怯えたアンがしがみついてくる。

 ピートや♀ラッセルも顔を青くしていた。

 無理もない。

 目の前の黒い沼地はこの世のものとも思えない景色だった。


「ここが森の最深部です。ユニコーンがいるのはここですよ。ここまで来た人間はコウ様たちが初めてだと思いますよー」


 案内してくれた当人だけあって、全くビビっていないフィリスがそんなことを教えてくれる。

 さすが吸血鬼の森の最深部だ。

 邪悪な感じが半端ない。


 というか、あの黒い沼さ。

 もしかして石油なんじゃなかろうか。

 ガソリンスタンドの臭いがしないので、違うかもしれないけど。

 見た目は石油っぽい。

 うーん。


「おい、ピート。ちょっとあの黒い水飲んでみろ」


 とりあえず、ピートで人体実験をしてみることにした。


「ええ!? い、嫌だよ! 絶対に身体に毒だろう、あれ!」


 ピートのくせに口答えをするとは……。

 まあ、よく考えたら石油を飲ませた所でどうなるかは知らないので、飲ませる意味はないのだが。

 無理やり飲ませる前に気づけてよかった。


「フィリス、あの水って燃えたりしないか?」


 石油なら燃えるはずなので、そう聞いてみると、フィリスは顎に指を当てて何かを考え込んだ。


「うーん、そういえば昔、エルダーリッチのオスカーさんが、この辺で焚き火したら大爆発して死にかけたって言ってたかもですねー」


 やっぱり石油だった。

 よく死にかけただけで済んだな。

 というか、アンデッドのオスカーさんってもう死んでるんじゃないのか。

 ちなみに、さっきモンスターから守ってやったオスカーさんは俺たちに頭を下げて、山菜収集に戻っていった。


 というか、石油かー。

 あれ、石油……?


「なあ、フィリス。ちなみに、あの黒い水くれって言ったらくれるのか?」


「え? いいですよ。あんなの飲水にも使えませんし」


 フィリスはあっさりと許可をくれた。


「……あんな変な水貰ってどうするんだ?」


 ピートがそんな事を言いながら、眉を潜めているのだが、なんという情弱。

 石油の価値を知らないなんて。

 まあ、中世っぽいこの世界なら石油を知らないのは当然だろうが。


「ふふふ、じゃあ、あの水は俺のものな? ここに埋蔵している全ての水は俺のものだからな?」


「……はあ。わかりました。セレナお嬢様にも言っておきますけど……?」


 俺のテンションの上がりっぷりに、不思議そうな顔をするフィリス。

 どうしよう。

 石油王が爆誕してしまった。

 黒い沼地は見渡す限り、かなりの広範囲に渡っている。

 きっと巨万の富を生み出すはずだ。

 もう一生働かなくていいだろう。

 しかも、金の力で女を抱き放題だ。

 きましたわー!!!


 …………。


 ただ、ふと冷静になって考えてみると、すでに働いてないし、毎日女を抱きまくっている。

 あれ?

 石油王になんてなってどうするの?

 よく考えたら、自動車もないこの世界で石油を何に使うかわかんない。

 うーん。

 とりあえず権利を確保できただけ良しとするか。


 というかですよ。

 ひょんなことから石油王になってしまったが、俺の目的はユニコーンの角だ。

 フィリスはああ言っていたが、そもそも、こんなおどろおどろしい場所にユニコーンなんて住んでいるのだろうか。

 ユニコーンってなんとなく神聖なイメージなんだけど。


「本当にユニコーンいるんだろうな?」


「はい。いますよー。確か100年くらい前に寝ぼけてこの辺を歩いていたら、ユニコーンっぽいものを見たような気がしましたから!」


 エヘンと胸を張りながらフィリスは言うのだが。

 どうしよう。

 結構な苦労をしてここまでたどり着いたのに、言っていることがだいぶ曖昧なんだけど。

 もっと早くに確認すれば良かった。

 ここまで来て、実はいませんでしたーとか、心が折れるどころの騒ぎじゃ――。


 ――ドガラッ!


 その時、背後から馬蹄の響きが聞こえた。

 振り返ると、そこにいたのは、黒い沼地にあって眩しいほどの白い輝きを放つ馬体。

 その額からは真っ直ぐな螺旋状の角が伸びている。

 ユニコーンだ!

 マジでいた。


「コウ! い、いいいいた! いたいた!」


 同じくユニコーンに気づいたらしいピートが動揺しながら声を上げる。

 わかっているから、とりあえず落ち着け。


 ピートの声が聞こえたのか、ユニコーンは俺達の方をに目を向けた。

 ユニコーンと目が合う。

 深い知能を伺わせる目だった。


 ――ぺっ!


 しかし、ユニコーンは唾を吐き捨てるような仕草をすると、ドピュンと走り去ってしまう。

 障害物の多い森の中だと言うのに、信じられない程の速度だった。

 なるほど。

 ババアが普通にやってたら捕まえられないと言っていた意味がわかった。

 あの速度は人間には追いつけそうにない。

 というか、唾を吐く仕草にちょっと傷ついたんだけど。

 俺が男だからだろうか。

 処女厨のユニコーンさんは男を受け付けないらしい。

 気持ちはわかる。

 処女はどうでもいいけど、男なんて見たくないもの。


 うーん。

 とりあえず、ババアに言われたとおりに、処女で釣るか。


「いいか? ユニコーンは処女が大好きなクソ野郎だ。そこでお前らには囮になってもらう。ユニコーンが近づいてきたら、生け捕りにして角を叩き折るから」


 処女3人にまずは説明をした。


「……お、おとり?」


 アンが怯えた表情をしていた。

 ちょっと言い方が悪かっただろうか。

 でも確かにアンを囮にするのは気が引けた。

 アンに何かあったら事だからだ。

 ここは何が起ころうとどうでもいい♀ラッセルをまずは囮にするか。


「おい、まずはお前が囮になれ。俺たちは隠れるから、お前はユニコーンの気を引くんだ」


 ♀ラッセルにそう命令して、皆で木陰に隠れる。


「え? え?」


 突然、独りにされた♀ラッセルは戸惑っていたが、どうでも良かった。


 …………。

 ……。


 そして、そろそろ10分が経とうとしているのだが。


「……来ないな」


 せっかく処女を囮にしたと言うのに、ユニコーンは全く姿を表さなかった。

 やっぱりラクガキ顔じゃダメなんだろうか。

 いや、色気がもっと必要なのかな。


「おい、ちょっと服脱げ」


「ええ!? 突然、何を言われますの? い、嫌ですわ。こんな所で……」


 ♀ラッセルは己をかき抱くようにしながらモジモジしていた。

 デカい花に溶かされたせいで、既に半裸のくせに何を恥ずかしがっているのか。

 そんな場合じゃないんだけどなー。


「うるせえ、いいからさっさと脱げ」


「……な、なんて男らしい」


 ♀ラッセルはなぜか頬を赤らめながら、いそいそと服を脱いでいく。

 全裸になった♀ラッセルは、なんというか。

 ああ、うん……というか。

 ダルンとした締まりのない身体で、凹凸が全くない。

 一応、乳首らしきものや、恥毛らしきものも見えるのだが。


「……全くそそらんな」


 思わずそんな感想が口から漏れた。

 全裸だと言うのにエロさが皆無とは。

 逆に感心してしまう。


「ちょちょちょー!? じょ、ジョディーさん、み、見えてますよ!?」


 ピートが真っ赤になりながら、顔を手で覆っていた。

 すげえな、こいつ。

 あれを見てそんなフレッシュなリアクションが出来るとは。

 さすが童貞だ。


「……あ、あれが女の人のおっぱい……」


 指の間からチラリと♀ラッセルを覗いたピートが、はあはあ言いながらそんな事を言っていた。

 どうしよう。

 ピートがダメな方向に大人の階段を登ってしまった。

 まあ、あれで興奮できるなら、なんでも抱ける男になれるだろう。


 …………。

 ……。


 そして、更に10分待ったがユニコーンの気配すらない。

 やっぱりダメなのだろうか。


「うう、寒いですわ……」


 そういえば真冬だったので、全裸の♀ラッセルがガタガタと震えていた。


「よし、もういいぞ。戻ってこい」


「あの……? 私が脱いだ意味はあったのでしょうか?」


 ♀ラッセルが納得の行かない顔でトボトボと戻ってくる。

 まあ、はっきり言ってしまうと脱いだ意味はなかった。


 うーん、やっぱりB専処女はダメだったか。

 ニッチな需要があるのではと踏んでいたのだが。

 ニッチ過ぎたらしい。

 まあ、ここはやはり本命のフィリスさんに……。


「お兄ちゃん!」


 その時、アンが両手をギュッと握りしめて俺を呼んだ。


「つ、つぎはわたしがいくね?」


 アンは決意の篭った瞳を俺に向ける。

 さっきまで怯えていたのに。

 いや、今も足がガタガタと震えていた。


「いいよ。囮なんて怖いだろう?」


「……こ、こわいけど……わたしもルーナお姉ちゃんのためになにかしたいもん!」


 不意に。

 目頭が熱くなった。

 うう、ええ子や……。

 あんな刃傷沙汰ジジイに育てられているとは思えない。

 思わずアンの頭を撫でてしまった。

 ここはアンの心意気を買うべきだろう。

 ちょっと危険かもだけど、何かあったら全力で守ろう。


「ルーナの為にありがとうな。じゃあ、アンに頼もうかな」


「うん! がんばるね!」


 アンは嬉しそうに天真爛漫な笑顔を浮かべると――。


「……アン?」


 なぜか俺に向かってちっちゃなスカートの裾を捲り上げた。

 白い子供パンツが可愛らしい。

 というか、なぜいきなりパンツを見せてくれたのだろう。


「……わ、わたしもはだかになればいい?」


 アンが恥ずかしそうに上目遣いで俺を見つめる。

 ちょっとムラっとした。

 どうしよう。

 ♀ラッセルの100倍そそる。

 何かの扉がぐごごごと開いていく音を聞きながら、俺はじーっとアンの子供パンツを眺め続けた。

 なかなかどうして……美味そうな……。


「……こ、コウ様? 催してしまったのなら私がお相手しますから……さすがに小人間に手を出すのはちょっとダメだと思いますよ?」


 フィリスが軽く引きながら近寄ってきたので、その薄い胸を揉んだ。


「あんっ、あっ」


 フィリスの短い喘ぎを聞きながら、心を落ち着かせる。

 いかんいかん。

 思わずオープン・ザ・ゲート・オブ・ロリコンしてしまう所だった。

 合法フィリスがいなかったら危ない所だった。


「ううっ、うっ……」


 ピートはアンのパンツを見て鼻血を垂らしていた。

 ロリコンなのだろうか。

 引きますわー。


「……アン、そういうのはいいんだ。さっきのアレは軽いジョークだから」


「ジョーク!?」


 ♀ラッセルが変な声を上げていたが、構わずアンをたしなめる。


「女の子がそんな事をしちゃダメだぞ。一体どこで覚えたんだ?」


「ええとね、いつもミレイお姉ちゃんがお外でやってるのをまねしてみたの」


 スカートを下ろしながらアンが無邪気に答える。

 それだけ聞くとミレイがただの痴女みたいなんだが。

 アオカンする前に、ミレイが俺をその気にさせるためにやっていたのを覗かれていたのだろう。

 本当に教育に悪い村だ。


「服は着たままでいいから、気をつけていってくるんだぞ?」


「うん、じゃあ、いってくるねー!」


 アンがさっきまで♀ラッセルが立っていた辺りに、てててと駆けていく。


 アンを送り出すと、再び皆で木陰に隠れた。

 さて、幼女処女のお手並み拝見と行くか。


 ――ドガラッ!


 そう思った矢先にいきなり、白い馬体が遠くから顔を出す。

 もう来た!

 さすが将来有望なアンだ。

 脱いでもダメだったラクガキとは偉い違いである。


「こ、コウ! きききききた! きたきた!」


 再び現れたユニコーンを見て興奮したピートが俺の肩を叩く。

 わかったから落ち着け。


 ユニコーンは隠れた俺たちには気づかないようで、恐る恐るといった具合にアンに近づいていく。


「……うう」


 角の生えた馬なんて初めて見たであろうアンが怯えて後ずさる。

 アンに何かあったら、馬刺しにしてやろうと決意した。


 ユニコーンはアンと5メートルくらいの距離にまで近づくと、じろじろとアンを舐め回すように見つめた。

 心なしか、その目がエロく歪んでいるように見える。

 くそ、俺のアンをエロい目で見やがって……!


 しばらくして、値踏みが終わったのか、ユニコーンは小さくため息を付くと、ブヒンと鼻を鳴らして踵を返した。

 まるで小馬鹿にしたような感じだった。

 そのまま、ユニコーンは驚異的な速度で駆け去ってしまう。

 ううむ……。


「ああっ! ユニコーンがっ!」


 ピートが残念そうな声を上げた。


「うむ。ユニコーンはロリコンじゃなかったらしい。お前と違ってな」


「そうだったのか……って俺はロリコンじゃないよ!!」


 まさかのノリツッコミが飛び出した所で、アンがしょんぼりしながら戻ってきた。


「……お兄ちゃん、ごめんなさい。だめだったみたい」


「気にするな。頑張ってくれてありがとうな」


 そう言いながら、しょぼんとするアンを優しく抱きしめた。


 しかし、幼女処女でもダメだったか。

 パンツを見せてくれたアンは、色気と呼べるものを醸し出していたのでイケるかもと思ったのだが。

 ここはやはり……。


「フィリス先生、お願いしやす」


 そう言って、大本命のフィリスに頭を下げる。


「ふふん、はじめっから私に頼めばよかったんですよー! 私にかかればあんな馬、お茶の子さいさいですからね」


 ここぞとばかりに胸を張ったフィリスが自信満々に向かっていく。

 ああいう態度をとった後にがっかりさせられることの多いフィリスだ。

 そこはかとなく不安になりながら、木陰に隠れた。


 ――ドガラッ!


 するとすぐにユニコーンが現れた。

 鼻息荒く、フィリスに向かって一目散に駆けてくる。

 心なしかその目がハートになっているようにも見えた。

 今までで一番の反応だ。

 さすが。

 黙ってれば文句なしに美人のフィリスさんだ。

 黙ってさえいれば――。


「あ、そうだ、コウ様。上手く行ったらうんちは諦めますけど、お尻の穴ペロペロくらいはさせてくださいね?」


 ああっ!

 なんで黙ってないんだよ!!


 ユニコーンがキキーッと急ブレーキをかける。


「できればうんちした直後のお尻の穴がいいです。はあはあ」


 ユニコーンはしょぼんと項垂れると、トボトボと帰っていった。

 おい!!


「あれー? 帰っちゃいましたね。変だなー」


 さも不思議そうに首を傾げるフィリス。

 全然変じゃねえから。


「お前が余計なこと言うからだろ、バカ!!」


「あっ! な、なんでそんな酷いこと言うんですか! 知識溢れる私に向かって! だいたい私よりルーナお嬢様の方がバカじゃないですかー!?」


「お、俺のルーナをバカ呼ばわりしたな!?」


 確かにバカだけど。

 今日という今日はこいつの変態っぷりを許すわけにはいかなかった。

 だってもうユニコーン捕まえる術がなくなっちゃったじゃないか!


 そんなわけで、ぎゃーぎゃーとフィリスとやかましく口論した。




 10分後。


「……はあ、はあ、なんか疲れましたね」


「ああ、疲れたな……」


 普段、俺は口喧嘩など滅多にしない。

 慣れない行為をしたせいで、なんか頭痛くなってきた。

 よく考えたら、フィリスは悪くない。

 フィリスがスカトロという重い病にかかっているのは誰もが知るところじゃないか。

 そんなフィリスを清い乙女枠として連れてきた俺が間違っていたのだ。


「……悪かったな、フィリス。ちょっと言い過ぎた」


 なので素直に謝ることにした。


「コウ様……。判って頂けたのなら、いいんです。私も失礼な事を言っちゃって、ごめんなさいでした」


 そして、俺とフィリスは仲直りの抱擁を交わした。

 抱擁しながら、こっそりと尻の穴を触ってくるフィリスは、もう手の施しようがないのかなと思った。


「……それにしてもどうしましょうか? 囮作戦は失敗しちゃったみたいですし」


 他人事のようにフィリスが言ってるが、囮作戦が失敗したのはお前のせいでもある。


「……お兄ちゃん、お腹すいたの」


 アンもこう言っているし、一旦戻って作戦を練り直したほうがいいだろうか。

 うかうかしていると日が暮れてきそうだし。

 うーん。

 めんどくさいけど戻るか。

 アンや♀ラッセルと言った非戦闘員を連れて、あの森の愉快なモンスターたちが待ち受ける森を再び抜けるのは本当にめんどくさいけど。


「ああああああ!」


 その時、♀ラッセルが変な声を上げて倒れ伏した。


「あ、足をくじきましたわ……」


 なんでここまでモンスターから守ってやったのに、何もない所で怪我をするんだよ。

 見れば、♀ラッセルの右足がぷっくりと膨らんでいた。

 これは歩くのは無理そうだな。

 とりあえず、♀ラッセルの頭を掴んで持ち上げる。


「な、なんて男らしい……」


 このまま持って帰るしか無いか。

 でも、手が塞がった状態で森モンスターの相手が出来るだろうか。

 フィリスだけじゃちょっときつそうだしなー。

 うーん。

 仕方ない。

 ワイルドカードを切るか。


「か、カレリアさーん?」


 明後日の方向に向かって、カレリアさんタクシーを呼ぶ。

 もう村まで空間魔法で送ってもらおうと思う。


「……お呼びになりましたか? アサギリ様。あら、フィリスもいたの」


 何もない空間から仏頂面のカレリアさんがみょんみょんと出現する。

 相変わらず便利な人だ。


「あ! カレリア姉様!」


 フィリスが嬉しそうな声を上げた。

 カンナさんとは物凄く仲が悪いのに、カレリアさんには懐いているようだ。


「悪いんですけど、村まで俺たちを送ってくれませんか?」


「ああ、そんなことですか。構いませんよ……ところで」


 カレリアさんはあっさり了承してくれたのだが。


「……その馬はなんですか?」


 カレリアさんが俺の背後を見ながら、そんな事を言った。

 はて、馬なんていただろうか。

 不思議に思いながら、振り返ると、そこにはハートマークの目をした角の生えた白馬が立っていた。

 はあはあと鼻息荒くカレリアさんを見つめている。


 ユニコーンいるし!?


「か、確保ー!!!」


 なぜか訪れた好機に、俺は思わずそう叫んでいた。




 角を折られたユニコーンは泣きべそをかきながら走り去っていった。


「やりましたね、コウ様!」


「お、おう」


 嬉しそうに言ってくるフィリスに曖昧な頷きを返す。

 俺の手には純白の螺旋角が握られていた。

 折られたてのそれは、まだほのかに温かい。

 これでルーナの病も治るはずだ。


 ただ一つ、解せない事がある。


 一体、なぜ再びユニコーンは現れたのだろう。

 あの馬はカレリアさんを眺めていたような気がしたが。


「……なんですか? 人の顔をジロジロ見るのは失礼ですよ?」


 まさかと思いながら、カレリアさんを見つめていたら、ピシャリと怒られてしまった。

 その表情はいつもどおり、キリッとしたものだった。

 金髪の知的美人とかマジ萌える。

 いや、それはいいのだが……。


「……カレリアさんってもしかして処女なんですか?」


 とりあえず、直球で聞いてみた。

 このままでは疑問に思いすぎて夜も眠れなそうだからだ。

 いやでも、まさかねー?

 吸血鬼姉妹の長女であるカレリアさんがまさか。

 あのカンナさんのお姉さんなんだよ?


「……はあ?」


 カレリアさんは綺麗な眉を思い切り潜めながら、俺を睨みつけた。

 うう、美人に睨まれると勃ってしまいそうだ。


 そして、カレリアさんはひょいっとそっぽを向いて。


「…………ち、違いますよ」


 真っ赤になりながら、ボソッと嘘をついた。


 やべえ。

 カレリア姉様超可愛いんだけど。

 これは是非、俺が貰ってやらねばと思った。

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