第117話 帰還

「うわああん! コウ! 妻をこんなに放って置いちゃダメじゃないかー! ばかばか!」


 家に帰るなり、滝のような涙を流したルーナが抱きついてくる。

 予想通りのリアクションすぎて口元が緩んでしまう。

 ルーナを優しく抱き返す。


「うぐっ、ひっく、ぐす、さ、寂しすぎて死んじゃうかと思った」


「悪かったよ。ただいま、ルーナ」


「……うん。おかえりなさい。コウ、大好きだぞ」


「ああ、俺……」


 思わず、俺もだと言ってしまいそうになる。

 あっぶねー!

 ルーナに嘘をついてしまう所だった。

 ルーナの事は好きだが、好きなのはこの顔と身体だけだ。


 というか。

 久しぶりに見たルーナに違和感を感じた。

 なんだろう。

 肌色成分が圧倒的に足りない。

 ルーナと言えばノースリーブのチュニックと際どいホットパンツだったはずだ。

 健康的なお色気がルーナの持ち味だった。

 それなのに今のルーナは長袖のシャツに厚手のロングスカートを履いている。


 露出度が圧倒的に足りない!!!


 おお、神よ。

 そりゃ、今は冬だけど。


 俺はあまりの残酷さに両手で顔を覆って、地面に膝をついた。

 まるで太陽が失われてしまったかのようだ。


「ど、どうしたんだ? お腹痛くなっちゃったのか? わわっ!」


 とりあえず、到底看過できる事態ではなかったので、ルーナを押し倒して服を剥ぎ取った。

 下着姿になったルーナは以前にも増して肌色成分に溢れていたが、もうついでなので下着も剥ぎ取る。

 ぷるんと見慣れた乳が露わになった瞬間、俺は帰ってきたんだと実感した。


「そうか。ずっと我慢してたんだもんな……い、いいぞ? 久しぶりの私を、い、いっぱい召し上がれ?」


 ルーナそう呟くと愛おしそうな表情をする。

 そんなつもりはなかったのだが、ルーナにしては洒落たことを言う。


 お言葉に甘えて、ルーナをたっぷり召し上がった。

 リュディアや他のダークエルフ達も良かったが、よく馴染んだルーナは別格だった。



 そのまま夜更けまでぶっ通しで抱き続け、アヘったルーナを腕枕で落ち着かせた。

 寝物語として、今回の戦争の話をする。

 地の民や風の民と戦って負けたこと、捕まって奴隷になったが、ごにょごにょ頑張って、逆に風の民を屈服させて王国軍の危機を救ったところまで話した。

 奴隷になってからの事はだいぶ誤魔化した。

 もちろん、リュディアを調教したことや、ダークエルフを抱きまくった事までは話していない。


「ええ!? ど、奴隷? うう、やっぱり私がついていけば良かった! そうすればお前にそんな辛い思いさせずに済んだのに!」


 ルーナがそんな後悔をしていたが、弱っちいルーナがついてきた所で絶対に何も変わらない気がする。

 ホントこの女は俺をなんだと思っているのか。


「と、とにかく、無事に帰ってきてくれて良かった。辛い思いをした分、しばらくは私がうーんと甘やかしてやるからな?」


 ほう。

 ならば甘やかしてもらおうじゃないか! しばらく働かないからな!

 そもそも働いてないけど。


 とりあえずルーナの胸元に顔を埋める。

 柔らかくて素敵な感触だ。


「よしよし、えへへ」


 ルーナは嬉しそうに頭を撫でてくれた。

 いつもと逆だが、こういうのもたまにはいいかもしれない。


「なあ、この髪も奴隷にされた時に短くされちゃったのか?」


 俺の頭を撫でながら、ルーナがそんな事を聞いてきた。

 そういえば、リュディアの火竜に頭部を丸焼きにされたんだった。

 今は再生して髪も生えてきたが。

 今の髪の長さは、2、3センチと言った所だろうか。

 というか、髪の伸びるスピードが速すぎる気がする。

 あれだろうか。

 エロいやつは髪が伸びるのが早いっていう……。

 いやいや、ないない!

 俺はそこまでエロくないから。

 というか。


「変かな? この髪型」


 ちょっと不安になったので聞いてみる。

 美容院でカットしてもらったわけではないのだ。


「……ううん。すっごくかっこいい」


 ルーナはポーと顔を赤らめていた。

 相変わらずチョロくて助かる。


 というか、こうしてルーナの匂いに包まれていると物凄く落ちつく。

 安心するというか、なんというか。

 思わず、そのまま深く眠り込んでしまった。




 翌朝、ピヨピヨエプロンをつけたルーナに起こされた。


「コウ、そろそろ起きて? ご飯できたぞ」


 ルーナに起こされるなんて珍しい。

 久しぶりに爆睡してしまったようだ。

 社畜にあるまじき失態である。

 まあ、もう社畜じゃないんだけどさ。


 とりあえず、ルーナにおはようのキスをしてから、大きく伸びをした。

 下の階からは良い匂いが漂ってくる。

 この匂いは卵焼きだろうか。

 ルーナのご飯は久しぶりだ。

 ちょっとテンションが上がる。


 卵焼きは予想通りに美味かった。

 絶妙な塩加減と甘さだ。

 ぷるんとした食感もたまらない。

 思わず、ばくばく食べてしまう。


 ルーナはそんな俺の様子をニコニコしながら眺めていた。


「どうだ? やっぱり妻の手料理が一番だろう?」


 そういうものだろうか。

 確かにルーナの料理は美味しかったので素直に頷く。

 ルーナは満足そうな笑顔を浮かべた。



 食後にルーナと風呂に入り、その後は一人で散歩をすることにした。


 外に出ると、そこは異様な雰囲気に包まれていた。

 セレナと純白のドラゴンが睨み合っている。

 そういえば、ドラゴンに乗って帰ってきた後、ここに放置したままだった。

 一晩中家の前で待機していたのだろうか。

 律儀なドラゴンである。


「ねえ、コレはなあに? ちょっと私でも簡単には勝てないわよ、コレ」


 セレナはドラゴンを睨みつけたままそんな事を言った。

 いやいや。

 セレナサンが勝てないとか。

 冗談きついっすわ。

 ……え、まじで?

 かつてこのドラゴンに喧嘩を売った身としては背筋が冷たくなるんだけど。

 そういうこと言わないで欲しい。


(主ヨ。ソノ女ハ危険ダ。殲滅ノ許可ヲ)


「はあ? この私とやる気? いい度胸だわ」


「まあまあまあ!」


 一触即発の雰囲気を出す両者の間に割って入る。

 ちょっとどころじゃなく肝が冷えた。

 とりあえず、ドラゴンに向き直って命令しておく。


「おい、この女には絶対に手を出すな。この女は俺んだ。あと、こんな所にいたら邪魔だから、どっかその辺で小さくなってろ」


(……承知)


 ドラゴンは力なく項垂れると、ズシンズシン足音を立てて去っていった。

 相変わらず可愛くはない。


「……ねえ、なんでアレあなたの言うことを聞いているのかしら?」


 セレナは綺麗な眉を寄せて、思い切り訝しんでいる。


「いや? なんか俺の命令は聞いてくれるんだ、あいつ」


「はあ!? あんな強力な存在がなんであなたの言うことを聞くのよ!?」


 強力な存在とか言っているが。

 それなら。


「お前だって、俺の言うこと聞いてくれるじゃん」


「えっ? だって、私は、その、あ、あなたのことが……」


 セレナは湯気が出そうな程、顔を真赤にして下を向いた。

 最強の吸血鬼とはとても思えないくらい可愛い。


 というか、ドラゴンを従わせた経緯についてセレナに話したほうが良いだろうか。

 そうすると、天鎖の話をしなくてはならないわけで。

 父親を討たれて、自身を吸血鬼にした神様の話は、なんとなくセレナにはし辛い。

 やったのはノリコさんじゃないって言ってたけど。

 うーん、嫌なこと思い出せちゃったら嫌だな。

 そもそも天鎖は対セレナ用の神器だったわけだし。


「ね、ねえ、それよりも、ほ、ほら!」


 セレナは顔を真赤にして下を向いたまま、俺に向かって手を拡げる。

 言いたいことはなんとなくわかった。

 くそ、可愛いな。


 ガバッとセレナを抱きしめる。

 セレナもギュッと背中に手を回してくれる。

 その巨乳が俺の胸板にむにゅっと潰れる感触がする。


「……すごく寂しかったの」


 セレナは目に涙を浮かべていた。


「悪かった。お腹すいてないか?」


「もう、ペコペコよ」


 以前と同じようにセレナはやつれているように見えた。

 俺がいない間は、食料であるはずの血液を摂取しなかったのだろう。


「たっぷり俺の血を吸わせてやるからな。ベッドの上で」


 セレナの巨乳をずぶずぶ揉みながら、セレナ邸に向かう。

 相変わらず凄まじい乳だ。

 手が埋まるんだけど。


「……もう、エッチなんだから」


 セレナは恥ずかしそうにしながらも、キスをしてくれた。

 これからたっぷり、無事に帰ってきた喜びを分かち合おうと思う。




 その後、当然だがカンナさんやミレイも帰還の報告がてら抱いた。


 今回の戦争は酷い敗戦で、俺も奴隷になったり色々苦労した。

 これからしばらくは自堕落な生活を送ってもバチは当たらないと思うんだ。

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