第134話 第三者side
「………え。」
彼女の手から、スマホがするりと滑り落ちる。同時に、
「っおい翔!どこに行くんだよ!?」
練習中の翔がグラウンドをものすごい速さで去って行った。同じ部員の制止も一切聞かず、練習着のまま。
―――・・・?もしもし?っもしもし!?聞こえていますか!?
静の声が、スマホの画面から聞こえる。しかし、雪乃はその声を聞いてはいなかった。
何故ならば―――
「………どう、しよ……っ桃香が、桃香が……また…………………っ!」
―――彼女もまた、桃香と同じように過去の出来事がフラッシュバックして、過呼吸を起こしていたからだ。
―『…………っ!……ょっ!…………………っ!』
電話の向こうで、彼女が苦しんでいるのが分かった。そして、周りにいる男子たちが彼女を助けようとしていることも。
静は歯ぎしりすると、
「っ白井さん!今からそちらに行きますっ!待っていてください!」
そう言って部室を抜け出した。そして、周りにいる後輩たちの制止も聞かず、ものすごい速さでグラウンドへと走って行ったのだった。
「………くそっ。」
翔は校舎のなかを駆け回り、桃香を探した。教室という教室のドアを開け、隅から隅まで探す。そしてそこにいないと分かると、また廊下に出て隣の教室に行った。
しかし、それでも桃香はいなかった。校舎の中のどこにも、だ。
二階から三階に上がる階段の開けた場所で、翔は一旦足を止めて肩で息をした。止めどなく汗が流れ落ち、拭いきれないくらいだった。
(……一体どこにいるんだ、紅さん……………っ!)
膝に手を置いて呼吸を整えると、翔は階段をさっさとかけ上がろうとした。
するとその時。視界の隅に、彼女が見えた気がした。
階段の場所は校舎二棟の東側、そして階段には窓がある。だから見えるのだ、あのゴミ捨て場が。
そしてそこに、たくさんの女子生徒たちがたむろっていたのだ。
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