第132話

「っかは……………………っ。」

 一瞬、息がつまった。呼吸ができず、ゲホゲホと咳が出てくる。蹴られたお腹が痛くて痛くて、ちょっとだけ涙が出た。

 ニヤリ、と彼女は口を歪ませた。そして、

「これなら貴女、そんな表情を見せるのね?ようやく楽しめそうで、何よりだわ。」

 連続で蹴ってきた。主に下半身とお腹を集中的に。


 お腹が、足が、骨が、悲鳴をあげる。息を止めて痛みを紛らわすしかなくて、泣きそうになる。

 それでも、苺坂さんはいっこうに蹴るのをやめない。周りの女子生徒たちも、誰も止めようとしない。




 もう―――楽になりたい。そう思った。




 ・・・ようやく、満足そうに彼女は蹴るのをやめた。

 その頃にはもう、私の足もお腹も赤黒く変色していた。身体中が熱を帯びて、頭がぼぉ・・・としてくる。痛くて痛くて、堪らなかった。体が、尋常じゃないくらい震えた。

「あら、もうおしまいですの?もう少し、根性のある方だと思いましたのに。」

 苺坂さんの声が、やけに遠くに感じた。意識はもう、切れる寸前だった。

 彼女はまた無邪気に笑うと、

「このような事をされたくないとすでにお思いなら、今後一切上翔様に近付かないでください。翔様が貴女ごときに愛されるのは私、見ていて嫌ですの。あの方には相応しい方が隣にいてこそ、キラキラと輝きを見せるのです。決して貴女のようなクズではないわ。」

 今度は首に手をかけた。そして、ゆっくりと絞め始めたんだ。


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