第5話 決着の刻

 証拠の書類を手に、和奏が弁護席へとやってくる。さっき遠目で見た限りでは分からなかったが、細かく肩が上下してるところを見ると、どうやらかなり急いで戻ってきたらしい。


「お待たせしてすみません。何とか間に合って良かった……これが資料一式です」


 渡された紙の束はずしりと重い。和奏の華奢な体と法服の袖から覗く細腕に、俺は思わず頭を下げた。


「助かった、ありがとな」


 せっかくここまでしてくれたんだ。神妙な顔つきをしてても仕方ないので、微笑んで礼を言う。


 すると、和奏は慌てたようにわたわたと手を振った。


「いっ、いえ、そんな。お役に立てて、光栄です……」

「わかな様、なっちゃん、証言台にあの人が」


 鞠ちゃんが指を差した先には、係の天使に連れられた——白樺りりぃの姿があった。相変わらず松葉杖を突いて、よろよろと証言台に着く。


 どうやら審理再開、ということらしい。俺は気を引き締め、正面に向き直った。


「じゃ、被告人。名前と階位を」


 明日の天気でも尋ねているかのような裁判長の口調とは対照的に、りりぃはか細い声でつっかえつっかえ答えた。


「し、白樺りりぃ……第七三階位弁護天使ですぅ。その、ど、どうぞお手柔らかに……」

「はい、ありがと。で、分かってると思うけど念のため。先ほど、被告人の担当天使・天宮柴乎が『現場で君を見た』と証言したが、それについてどう思う?」


 りりぃはゆるゆると首を振った。


「わ、分かりません。なんでこんなことになってるんでしょうかぁ。私、見ての通り弁護士ですし、下界に用事もないですし……」


 そこで俺はすかさず手を上げた。


「証人。あんた確か開廷前に、控え室で『今日弁護士になった』って言ってたよな?」

「あぅ、は、はい」

「てことは、昨日までは違う仕事をしてたわけだ」


 りりぃは元より、検察側も沈黙している。ったく、誰も答えられねーなら教えてやるか。


 俺は印のついた資料を一枚取り出した。


「ここに証人の経歴が載っています。昨日までの肩書きは『加手野市担当天使』——天宮柴乎と一緒です」

「異議あり!」


 予想通り、検事席から反論が飛んでくる。


「そ、そもそも、その資料はなんですの? 出所が不明ですわ!」

「これらは全て、歴とした天界管理局の書類です。しかも持ち出しを許可したのは局長自らです。この資料を疑うのなら、管理局に異議申し立てをしていただくことになりますが」

「ううっ、そんな馬鹿な……」


 和奏が顔色一つ変えずそう言うのに、蝶子は呻きを上げた。


「じゃ、問題が解決したところで……どうかな、証人?」


 裁判長がうんうんと頷き、証人に水を向けた。


「で……でも、私、昨日は有給で……」

「有給、だって?」

「そうですわ。同じ地区の担当だったからといって、下界に降りていたとは限りませんわ。天使にだってシフトもあれば有給もある……ちゃんとした労働基準がありますのよ!」


 そうなのか……。ちらっと隣をみやると、和奏が小さく頷いた。


「休みの申請は結構通りやすいです」

「鞠なんて、この間、わかな様と下界でピクニックしたんですよ。うふふ、実はこっそりなっちゃんのうんどーかいを……」

「え?」

「ま、鞠っ」


 和奏が慌てて鞠ちゃんの口を塞ぐ。なんだなんだ?


「奈津雄さん、それよりもこれを」


 和奏が差し出した資料にさっと目を通す。——なるほど、な。


「確かに事件当日、証人は仕事を休んでいたようです」

「そ、そうなんですぅ。相棒のみるくちゃんが怪我で寝込んじゃって」

「しかし、ここにもう一つの資料があります。天界から下界へ降りる際の『門』の使用記録です。証人は休日にも関わらず、一人で下界に降りています。確認できていませんが、門に設置されたカメラにもその映像が残っているはずです」


 俺は裁判長、そして法廷全体に見せつけるようにその資料をかざした。


「天使は二人一組で仕事するのが原則なんだろ。それを破ってまで下界に行ったのは何故だ?」

「それはそのう……ピクニック的な」


 流行ってんのかよ、下界ピクニック……。


「んじゃ、証人。事件当日の行動を証言してくれるかな? それで色々と分かることもあるだろう」

「は、はぁ……分かりました」


 りりぃは唇に人差し指をあてがい、困ったような口調で証言を始めた。


「といっても、本当にそれだけなんですぅ。せっかくのお休みなので下界見物でもしようと、市内を色々見て回りましたぁ。特に変わったことは起こりませんでしたけどぉ……」


 和奏の手によって、机の上で資料の紙が動いた。なんだか膨大な数の文字と数字が羅列してある。どうやら事件に関係ない天使の記録も載っているらしいが、分かりやすく印がしてあった。


 和奏が小声で説明を付け加える。


「これは下界における天使の行動記録です。ただし全ての行動を記録しているわけではありません。魂の救済行為、または悪魔との戦闘行為に関する事項に限り、その居場所と行動が時系列順に記されています。たとえば……こちらを見てください。現場付近の座標における、事件時刻のログです」


 和奏の白い指先が、ある一点を示す。そこには『天宮柴乎』『白樺りりぃ』両名の行動記録があった。


 証言が終わったとみえて、口を噤んだりりぃに対し、俺はまっすぐ手を上げた。


「この資料に証人の行動記録が残っています。証人、アンタが現場付近にいたのは確かだろ?」

「さ、さぁ……現場には近づいたのかもしれませんが、わかりません……。ただの通りすがりだと思いますけどぉ」


 煮え切らないりりぃの言葉を、すかさず蝶子が補強する。


「まぁ、下界を観光していたのだから、現場を通った可能性もなきにしもあらず、ですわね」

「……でも、事件時刻に現場付近にいたことは確かなんだ。俺がビルから落ちた後の騒ぎに気づかないのは、いくらなんでもおかしいんじゃないか?」


 りりぃは眉を顰めて、考え込む。


「ええと、確かになんか騒がしいなぁ〜って場所はありました。でもほら、よくあるじゃないですかぁ、酔っ払いさんが担ぎ込まれたりとか」

「いや、まだ夕方だったはずだけど……」

「それに、見たところ彷徨ってる魂もなかったし。きっともうさっきの天使さんが回収し終えた後だったんじゃないですかぁ? 一応、しばらくその場にいましたけどぉ、そのうち『カラスが鳴くからか〜えろ』って歌が聞こえてきてぇ、私も『か〜えろ』って思ったんですよぉ」


 呑気な口調に一瞬、全部が面倒くさくなる。


 でも、いや待てよ……。歌?


「異議あり。天宮柴乎は魂を回収した直後にその『歌』を聞いていたはずだ。そうだよな?」

「え、あぁ」


 証言台をりりぃに譲り、別席に下がっていた柴乎が慌てて頷く。


「確かに、カラスがどうとかっていう歌詞だったな」

「それはうちの町でいつも午後五時きっかりに流れる放送だ。つまり、まだ魂は回収されていなかったんだ」


 腕を組み、自信満々に証人席を見据える。しかしりりぃはもじもじとするばかりで、特に気圧された様子も見せなかった。


「あ、あのう、こんなことを言ってはなんですがぁ——一応、非番だったので」

「……ひ、非番?」

「はいぃ。こう見えて、仕事とプライベートはきっちり分けるタイプなんですぅ。働き方改革ってやつですねぇ」

「はぁ」

「なので、積極的に魂を探したりはしなかったですしぃ。私はその場にいたかもなんですけどぉ、なーんにもしてないんですよぉ」 


 そんなはずはない。


 魂の救済か、悪魔との戦闘——そういった行動があったから記録が残るんだ。


 答えはもちろん、資料に記載されていた。


「嘘だね。アンタは現場付近で——『制約解除』をしてるじゃないか」


 まぁ、それが何かは知らねーけど。


 なんて内心舌を出していると、急に法廷がどよめいた。


 りりぃは顔をしかめているし、柴乎も椅子から腰を浮かしている。あの飄々とした裁判長ですら目を僅かに見開いていた。


 なんか、俺……やっちまったか!?


「ま、ま、鞠ちゃんっ」

「はい!」


 小さくとも優秀な助手は、すかさずスケッチブックを立てた。


 そこには柴乎らしき真っ黒な天使が描かれていた。大きな翼が生え、その身に炎を纏い、二振の剣は長さが倍ほどに伸びている。


「下界における天使は本来の力がせーげんされています。そのリミッターを一時的に外すのが『制約解除』です。主な効果としては、翼が生えて飛べるようになったり、天界武器ののーりょくがパワーアップしたりします。時間はかなり限られますけどね。本来は悪魔との戦闘になった場合、緊急的に用いられるんですが……」


 それを聞いて、俺は思わず弁護席から身を乗り出した。


「アンタ、さっき『変わったことはなかった』って言ってたよなぁ。おかしいじゃねーか!」

「あ、あああ、違いますうう、これにはワケがあるんですぅ」


 騒々しい法廷に、かぁんと乾いた音が鳴り響いた。


「はい、静粛に。じゃあ、そのワケとやらを聞こうか?」


 その場が静けさを取り戻すのを待って、りりぃは語り出す。


「た、確かに私、悪魔と遭遇しましたぁ。あれもたまたま現場付近だったのかなぁ? 突然だったので、すごくびっくりしたんですけど……なんとか追い払うことができましたぁ」


 へにゃりと笑うりりぃに、蝶子が加勢する。


「天使にとって、悪魔との交戦は日常ですわ。現に天宮柴乎も私に言われて思い出していたようですし。変わったことはなかった、そう証言しても何ら不思議はなくてよ」


 しかし、俺は追求の手を緩めない。


「追い払った? 倒したんじゃなくて?」

「あぁ、それは私の天界武器のせいなんですぅ」


 りりぃが差し出したのは、例の玩具みたいなステッキだった。


「これは『どりーみんぐ・びゅーてぃ』と言いまして、悪魔を眠らせることしかできないんですぅ。しかも一回使うとしばらく使えなくなっちゃって。強力な天界武器を持ってる天使がうらやましいですぅ……」


 じとっとした視線を柴乎に送るりりぃ。怖いのか、完全に振り向くことはできないらしかった。


 和奏が早速、資料を確認した。行動記録と、そしてりりぃの経歴が載ったプロフィール資料だ。そこには天界武器の情報もある。


「確かに、制約解除の直後に天界武器を使用した記録があります。それに武器の能力についても、言っていることに間違いはないようです」

「しっかし、眠らせるだけって……。そんなんでやっていけんのか?」

「えっとねー。天使は二人一組だから、どちらかが『補助役』、どちらかが『こーげき役』になるんです」

「ええ。それに悪魔を撃破した場合、アシストも評価の対象になりますので」


 椅子にふんぞり返ってる柴乎をちらっと見やる。


 ありゃ、どうみても『鉄砲玉』って感じだな……


「そ、そうなんですぅ。昨日のアシストが評価されて、私は念願の弁護士になれたんですぅ」

「けど……それっておかしくないか? だって昨日は相棒がいなかったんだろ?」


 りりぃが補助役だったら、その相棒が攻撃役になる。昨日は悪魔を眠らせはすれども、倒すことはできなかったはずだ。


「だ、誰か親切な人がやっつけてくれたんだと思いますがぁ……」

「ふぅむ。つまり証人が眠らせた悪魔を、後で他の天使が倒した、と」

「十分、あり得ることですわね」


 裁判長と蝶子がしきりに頷いている。


 俺はさらにその先へ思考を巡らせていた。他の天使、といえば……


「裁判長。それは——天宮柴乎ではないでしょうか?」

「ほう?」

「現場付近において、この二人以外の行動記録は確認できません。つまり天宮柴乎が倒した悪魔は、白樺りりぃが遭遇した悪魔と一緒だったんです」


 柴乎の証言を聞いたとき、少し気にはなっていた。


 悪魔の方からこちらに向かってきた、とそう柴乎は言っていた。ということは、悪魔は柴乎よりも早く、魂に近い場所にいたということだ。悪魔の詳しい生態は分かんねーけど、俺なら天使が来る前に魂をかっさらって逃げちまうだろう。


 悪魔は柴乎に向かってきたんじゃない。


 りりぃに追い払われた先に、たまたま柴乎がいたんだ。


 しかし、素早く蝶子が口を挟む。


「異議あり。貴方、証人の天界武器の能力をもうお忘れになって? 悪魔を眠らせる、のですわよ」

「ちなみに俺が倒した悪魔はガンガンに起きててギャンギャンに暴れてたけどな」

「う、うぐぐ」


 机に置いた手のひらがじとりと汗ばむ。


 検察側の主張通り、柴乎が倒した悪魔とりりぃが遭遇した悪魔は別物だったのか?


 けど、りりぃは明らかに制約解除のことを隠そうとしていた。


 悪魔と交戦したことだって、柴乎みたいにあっさり倒したならともかく、驚いてパワーアップまでしたんなら、印象に残らないはずはない。


 ここに絶対、何かあるんだ。


 りりぃにとって、知られてはならない『真実』が——!


「奈津雄さん、事実は決して変わりません」


 思考の深淵に迷い込んだ俺を、和奏の毅然とした声が引っ張り上げる。


「天宮さんが倒した悪魔は眠っていなかった。——それでも、白樺りりぃは現場付近で『制約解除』をし、天界武器を使用したのです」


 ごくシンプルに整理された情報。それを聞いた瞬間、俺の脳裏にぱっと光が閃いた。


「っ、そうか……!」


 自分の中で湧き上がる興奮を、拳に載せて台の上に叩きつける。


「——証人は天界武器を使った。しかし、それは悪魔に対してではなかった」

「な、なんですって……!?」


 いきり立つ検事を手で制したのは裁判長だった。


「ほう。じゃあ、何に?」

「決まってます。——この、俺にです!」


 嵐の前の静けさ。


 そんな一瞬の空白の後——


「なっ……」


『——なにぃぃぃぃッッ!?』


 誰の叫びともつかない声が、法廷中を埋め尽くした。


「静粛に、静粛に!」

「証人! あんたは俺に対して、そのふざけた武器を使ったんだ。多分、ビルの真下あたりでな。眠った俺を抱えて飛んでって、上から叩き落とせば『自殺』の完成ってわけだ!」


 りりぃは全身を震わせて反論した。


「そ、そっ、そんなことしてませぇん……! 第一、コレを使ってしまったら、しばらく使えなくなるんですよぉ、悪魔と戦えないじゃないですかぁ……!」

「そう、それが誤算だった」


 未だ落ち着きを取り戻していない法廷をよそに、俺は構わず続ける。


「俺を『自殺』させたはいいが、直後、あんたは魂をかぎつけた悪魔の襲来に遭っちまった。あんたの言うように武器は使えねえから、なんとか自力で撒いたんだろうよ。それを後からやってきた柴乎が倒したんだ!」

「——異議あり!」


 なんとか流れを引き戻そうとするように、蝶子が必死の形相で食い下がる。


「相手はA級悪魔ですのよ。天界武器もなしに証人が撃退できるとは思えませんわ!」

「別にやっつける必要はねえだろ。武器は使えなくても翼は残ってんだから、なんとか悪魔を自分に引きつけて、その隙に魂を確保しちまえば良かったはずだ」

「……っ、なら、どうして証人はそうしなかったんですの? 現に貴方の魂は天宮柴乎に確保されていましてよ。貴方の推論通りなら、悪魔に襲われていたとはいえ、現場付近で隙を窺っていた証人が後からやってきた天使に後れを取るわけがありませんわ」


 俺はちらりとりりぃに視線を投げかけた。正しくは——りりぃの右足に。


「証人。その怪我はいつ、どこで?」

「っ……!」


 りりぃは唇を噛みしめているばかりで、何も答えない。俺は再び検事席へ向き直った。


「確かに敵は手強かった。検察側の言うとおり、本来なら証人が太刀打ちできる相手じゃないんだろう。——ただ撒くのでさえ、このザマなんだからな」

「ま、まさか……」

「証人は悪魔と交戦中、片足を負傷した。さらに制約解除の効果が切れ、頼みの翼も失い、隣のビルの屋上に落下しちまったんだ。……あぁ、もしかしたら一旦は俺の魂を確保していたのかもしれないな。魂が地上からビルの屋上に移動していたのも、交戦中に取り落としたと考えれば説明がつく」


 反論の隙を与えず、俺は続ける。


「なんにせよ、ここで悪魔にやられなかったのは、運良く柴乎が倒したからだ。多分、証人には訳が分からなかっただろうが、これ幸いに魂の元へ向かおうとしたはずだ。けど怪我した足じゃすぐに駆けつけられず、もたもたしてるうちに柴乎が先に魂を回収しちまった。そういうことだろ?」


 証言台に投げかけた言葉に、りりぃは涙目になって答える。


「な、なんで……ですかぁ。どうして私がそんなことしなくちゃならないんですかぁ!」


 俺はりりぃのプロフィールをかざしてみせる。その二枚目には最新の成績が記されていた。


「見てりゃ分かるが……あんた、あんまり優秀な天使じゃなかったみたいだな。先月末が弁護士になれるかどうかの瀬戸際だった。だからどうしても昨日中に実績を上げる必要があったんだ」


 畳みかけるように、叫ぶ。


「たとえ——生きている人間を殺してでも!」


 がくん、とりりぃが項垂れる。


 俺は思わず拳を握りしめた。


 やったか——と、思われたが、しかし。




「——大人しくしてりゃあいい気になりやがってえええええッ!」




 大音声。


 それも肌がびりびり震えるほどの。


 思わず、誰もがその場で固まる。


 弾かれたように顔を上げたりりぃは、もはや別人といっても過言ではないほど豹変していた。


「調子乗んじゃねえよ、クソガキが! 都合のいい妄想をべらべらべらべら並べ立てやがって! てめえの言ってることは無茶苦茶じゃねえか、分かってねーんだろ、あぁ!?」


 こ、こ——


 怖ぇ!


 こめかみに青筋を立て、眉間にはこれでもかというほどしわを寄せ、歯をむき出しにして怒鳴り散らす姿は絶対に天使なんかじゃない。鬼。怨念の塊のような、鬼そのものだ。


「そもそもてめえの言うとおりなら、アタシは点数を稼げてねえじゃねえか! アシストもしてねえ、魂も回収できてねえ、なのにどうやって実績をあげんだよ。現にアタシは弁護士になったんだ。てめえの言ってることは矛盾してんだよ!」


 りりぃの双眸がそれぞれの色でぎらりと光る。


「アタシは確実に悪魔に武器を使ったんだ。それはこの全身真っ黒なチンピラ天使が倒したヤツとはまた別だったんだよ! アタシが眠らせた悪魔はどっか別の遠い場所で、他の天使が倒した。そうに決まってる!」


 さしもの柴乎も顔を白くして、ドン引きしている。


 俺はと言うと、もはや内容がほとんど頭に入ってこない。単純に気圧されているというよりは、得体の知れないものへの恐怖がすさまじい。気を緩めれば、歯が鳴り出しそうだった。


「なっちゃん、怯んじゃだめですっ」


 和奏も鞠ちゃんに力強く同調している。どうやら女性陣は意外と平気らしい。な、なんで……?


「さぁさぁさぁ! アタシが殺ったってんなら、証拠を見せてみなよ!」


 砕けよといわんばかりに、何度も証言台が叩かれる。


 お……落ち着け、柊木奈津雄。冷静になれ。


 考えてみりゃあ、ようやくヤツの本性を引きずりだしたんだ。


 こっからが、勝負だろ!


「——あんたの主張はこうだな」


 俺は幾分落ち着いた口調で切り出した。


「下界を見て回っていたら、たまたま悪魔に遭遇した。制約解除をし、天界武器で対抗した。その悪魔は天宮柴乎が倒した悪魔とは別物で、他の天使が倒した。その際のアシストが評価されて弁護士になれた。俺に武器を使ってしまえば、アシストはできないので矛盾してる……と」

「さっきからそう言ってんだろ、クズがッ!」


 俺は資料が散らばる机上を睨み付ける。


「……どれかが、嘘なんだ。あいつは絶対、悪魔に武器を使ってない。だから評価されるわけがない。普通の方法なら……出世できるわけないんだ」


 すると和奏が隣ではっと息を呑んだ。


「字見野検事、あなたも現場の天使の記録を調べたのですよね?」

「えっ……!?」


 突然、話を振られた蝶子は驚きを顔に張り付かせたまま、答えない。和奏はさらに畳みかけた。


「天宮さんの行動を詳細に把握されているようでしたから。本来ならそこに証人——白樺りりぃの記録もあるはずですが?」

「そ、それは……」


 俺は思わず目を丸くした。あの字見野蝶子が今まで見たことないほど蒼い顔をしていたからだ。動揺している、というよりは激しく混乱しているようだった。


「あんた、大丈夫か?」

「だ、だまらっしゃい……」


 返事もどこか気が抜けている。


 和奏はじっと蝶子を見据えた後、ゆるゆると首を振った。


「ごめんなさい。どうやら貴女は何も知らないみたいですね。天界データベースには白樺りりぃの記述はなかった——そうでしょう?」

「っ……!」


 怯える子供のように蝶子は身を固くしている。訳が分からないまま、俺は和奏に尋ねた。


「じゃあ、こっちにある資料は何なんだ?」

「これは私が天界管理局から直接入手した、記録直後の逐次データです。天界データベースはこのデータを元に情報を再構築したものになります」


 なるほど、だから情報量が多かったのか。


「二つが食い違ってる、っつーことは……」

「はい。つまり何者かが意図的にデータベースから情報を消した、ということです」


 んなこと、一体誰が……? そう尋ねる前に、和奏は考えを口にしていた。


「たった一日のうちにそれができるのは、天界でもかなりの地位にいる人。そしてどうしても奈津雄さんを有罪に——つまり、検察側を勝利に導かなければならない人です」


 法廷中の視線が、一斉にある場所に注がれる。

 検事の隣——蝶子の母で、検察局局長とかいうオバサンのところへ。


「字見野局長。完璧主義の貴女は娘の初法廷の情報を徹底的に調べ上げたはずです。揺るぎない勝利に向けて、障害になるものはないか。けれど、そこに天使による不正の痕跡を発見してしまった。これでは娘が敗北してしまう。そこで弁護士志望だった白樺りりぃを弁護人に仕立て上げ、わざと負けるよう強請ったのではありませんか? 秘密を守り、計画に加担するなら、悪いようにはしないと……」

「そ、そんなババァ、関係ないね。アタシは無実だ!」


 一瞬、りりぃの顔色が変わったのを俺は見逃さなかった。


 しかし、疑われている当の局長は涼しげだ。


「そんな証拠がどこにあるの?」

「お、お母様……」

「顔を上げなさい、蝶子。あなたは検事なのよ」


 毅然と言い放つのを見る限り、どうやらりりぃとは役者が違うようだ。その氷のような表情に尚、和奏は食い下がる。


「調べれば分かることです、局長」

「なら、急ぐ事ね。閉廷までそう猶予があるとは思えないわ」


 とりつく島のない返答に、和奏の方が押し黙る。もしかしたら、証拠を残していない自信があるのかもしれない。


「それよりも。先ほどの発言は、私の——ひいては検察の名誉を著しく毀損するものです。望月判事補、貴女には神庭より相応の処罰が下るでしょう」


 俺は愕然とした。俺のせいで、和奏に迷惑をかけちまうなんて。


「そんな……おい、待てよ!」

「奈津雄さん、私はどうなろうと構いません」


 気色ばむ俺を押さえたのは和奏自身だった。しかし潔い口調に一転、色濃い悔しさが滲み出る。


「でも……ごめんなさい。ここで手詰まりです。字見野局長と白樺りりぃを繋ぐ証拠は、ここにはありません」


 肩の力が抜ける。資料を調べてきた和奏が言うのなら、違いないのだろう。


 裁判長が低い声音で和奏に告げた。


「証拠がないのなら、証明はできない。分かっているはずだな、望月」

「……はい、申し訳ありません」

「証人に関しても同じだ。弁護人、いくら推論を並べ立てても、証明できなければ意味がない。事実でない事柄は、判決を左右しない」


 くそ、そんなことって……


 ここまで追い詰めておいて……!


 我知らず、手に力が入る。書類が一枚、くしゃりと音を立ててよれた。


「……奈津雄さん、よく聞いて」


 切ない響きが、耳を打つ。


「ここでもしも、貴方の死が天使の失態と認められれば、天界は責任を取らざるを得ません」

「責任、って……」

「貴方の死をなかったことにする。つまり、貴方は生き返ることができるかもしれない」


 はっとして和奏を見る。


 思いのほか間近にあったその瞳は、今にも泣き出しそうに揺れていた。


「お願い……諦めないで。貴方がこれまで——一人きりでも、一生懸命生きてきたことを私は知ってる。他の誰も知らなくたって、私だけは知っているんです」


 ああ、やっぱり。


 この顔、この声、この——悲しくも、温かい笑顔。


「死なないで」


 覚えてる——



「生きて、なっちゃん……」



 そうだ。


 あの子が生きて欲しいと願ったから、俺は今ここにいる。


 この子が生きて欲しいと言うのなら、俺は生きなきゃならない。


 ——なんとしてでも!


「考えろ……」


 最初から、最後まで。この審理の全てを、もう一度考え直せ。


 りりぃが俺を殺したなら。


 どうして俺を選んだんだ?


 バイトへ行くことも、その日たまたま屋上の鍵を持っていたことも——あらかじめ知っていたとしか思えない。


 きっと、どこからか尾行してたんだ。


 自殺にみせかけるための、最高の獲物だと知っていた。


 そして、バイトに行く直前で俺を眠らせたんだ。


 記憶さえ、戻ってくれば。


 そう思うのに、どうしても頭の中が霞む。そのうち頭蓋骨の裏側からハンマーで叩かれるような痛みが走り、何もできなくなる。


 くそっ、どうして——


 どうして俺は何も覚えていないんだ!


「……そろそろ、終わりにしていただけませんこと」


 地を這うような声が法廷の沈黙を破る。


「どんなにとぼけたって無駄よ。自分が自ら命を絶ったのは——被告人本人がよく知っているはずですわ!」


 俺が——


 目の前が、ぐらりと揺れる。


 俺が……一番よく、知っている……?


「——っ!」

「奈津雄さん!?」


 倒れかけた俺を、和奏がすんでのところで支える。


 二度、三度。大きく瞬きをして、俺は何とか意識の平衡を取り戻した。


「お、もい……だした——」

「え?」


 証人台を睨み据える。


 そこには怪訝そうな表情をしたりりぃが突っ立っていた。


「思い出したぜ、りりぃさんよぉ……。俺は確かに見たんだ、あんたのことを。あの日——死の間際にな!」


 りりぃは一瞬狼狽えたものの、すぐ嘲るように鼻を鳴らした。


「ハッ、どうせまた口からでまかせだろ? アンタのお得意だもんな」

「いいや、詳しく証言できるぜ」


 ここからは反論する暇を与えず、畳みかける。


「そのヘンテコな髪はほどいてたな。眼鏡もしてなかった。今日みたいに派手な格好じゃなかったし、メイクももっと地味だった。右手にはもちろん、そのふざけたステッキを持ってた」

「っ……!」

「ちなみに左手には分厚い本を持ってたな。弁護士になるための参考書か何かだろうな。リュックを背負ってて、中から水筒がはみ出てた。ピクニックてのは本当だったのか?」


 焦っていたりりぃが段々と無表情になっていく。


 構わず俺は続けた。


「あと首から提げてたのは大きな一眼レフ。靴はアウトドアブーツ、でっかいつばのついた帽子を被ってた!」


 裁判長が「ふぅむ」と唸った後、証言台に向かって尋ねる。


「被告の目撃証言はかなり詳細のようだが……証人、何か言うことはあるか?」


 すぐに返答はなかった。


 息が詰まるような静寂が訪れた後——


「っ、はっ……」


 りりぃは突然、体を折ったかと思うと、


「——あっはっはっはっはははははは!」


 バネのようにのけぞって、盛大に笑い始めた。


「証人?」

「言うことも何もないっての! まさしくでたらめそのものじゃねえか! 自分で言ってたろうよ、門を通って下界に行った時のカメラ映像が残ってるって。それを見れば証明されんだよ、昨日のアタシとは似ても似つかねー格好だってな!」

「あっ……!」

「いよいよ切羽詰まって虚偽証言ってか? 堕ちたもんだねえ、弁護士サン!」

「弁護人、さっきの言葉が虚偽なら罪は重いが?」


 裁判長の冷ややかな言葉に、俺は言葉を失う。りりぃはますます上機嫌になって、俺をせせら笑った。


「調子乗りすぎなんだよ。本当はな〜んにも覚えてないくせにさ!」


 ——俺は、そっと目を閉じた。


 細く、長く。肺に残っていた空気をゆっくりと吐き出す。


 そして、大きく息を吸った。


「今、なんて言った? ——何も覚えてない、だって?」

「な、なんだよ、そうだろうが。だからバイトに行ったことも屋上の鍵を持ってたことも、知らなかったんだろ?」


 妙な空気が漂い始めたのを感じたのだろう。りりぃは眉を顰めて聞き返してきた。


「——確かに、俺は何も覚えていない。アンタの顔はおろか、家を出たところから何一つな」

「な……何一つ、ですって?」


 蝶子が呟くのに、俺は小さく頷き返した。


「その通り。言っとくがとぼけてたんじゃない、端から記憶になかったんだ」

「そんな馬鹿な。嘘をおっしゃい……!」


 そう、検事や傍聴人を含むその他大勢は、俺が自死の罪を逃れるために、事実を知っていて嘘をついていると思っていたのだ。


 ——ただ一人を、除いては。


「でも、証人。どうしてそれをあんたが知ってるんだ? 俺は『何も覚えていない』なんて、誰にも一言も話してないぜ」

「え……あ、それは」

「答えてやろうか。それはあんたの天界武器『どりーみんぐ・びゅーてぃ』の能力のせいだ。ただし——のな」


 俺はりりぃのプロフィールに記載されている、天界武器の欄を読み上げた。


「制約解除をすると、天界武器の能力がパワーアップする。その場合、この武器は『相手を十時間以上眠らせ、』ことができるようになる——そうだな?」

「う、うう……」

「あんたは知ってたんだ、俺に武器を使ったことを。そしてそれは確実に——事件発生時刻、現場付近で行われたんだ!」


 りりぃの顔面が蒼白になっていく。


 今度こそ、最後の仕上げた。


「さぁ、説明してもらおうか。どうして一介の高校生を眠らせ、その記憶を奪ったのかを」


 俺は机を叩き、人差し指を突きつけた。



「あんたが——その後、俺に何をしたのかを!!」



 ——世界の終わりのような静寂が、辺りを包み込む。


 じっと瞑目していた裁判長が静かに告げた。


「証人、説明できるか?」


 りりぃは足元を睨み、しばらく黙っていた。もしかしたら何か考えを巡らせていたのかもしれない。


 しかしやがて諦めたように、口を開いた。


「あの日が……期限だった。瀬戸際だった、弁護士になれるかどうかの」


 その声にもうかつての力は、ない。


「どうしても実績を上げなきゃならない日に、ポンコツの相棒は寝込むし、散々だった。こうなったら一人でも仕事をするしかない、そう思って下界に出たけど……現実はそんなに甘くないね。彷徨える魂すら見つからなかった」


 りりぃはうっすらと自嘲気味の笑みを浮かべる。


「残された手段はただ一つ。自分で彷徨える魂を作り出すこと。もう日没も近い……迷ってる暇はなかった。私はたまたま目に付いた下校途中の高校生二人にターゲットを絞った」

「まさか……一歩違えば、西崎を殺すつもりだったのか!」


 しかし、りりぃは青い顔をした俺を鼻で笑い飛ばした。


「はん、勘違いすんなよ。アタシだって好きであんなことしたんじゃない。殺す人間だってちゃんと選ぶさ。——お友達の方は見るからに優秀で、家庭にも恵まれてた。一方のあんたは家族もいない、親戚にも見放された貧乏学生。口先ばっか達者な、どうしようもないガキ。屋上の鍵も持ってたし、うってつけだった」


 りりぃにそう言われた途端、冷たいものが背筋を伝った。


「いいじゃん、あんたなんか。お金もない、身よりもない。自殺したって不思議じゃない、生きてる価値のない人間だろ? 未練がなかったのがその証拠だね。だって未練っていうのは『この世』に残すものなんだから」


 何か言い返してやりたい。


 でも、今の俺にはそれができない。


「あんたの大切なものはぜーんぶ『あの世』にある。だから……いいじゃない、アタシのために死んでくれたって。どうせ——」


 そうじゃない、そんなわけはない。


 心の中では何度も叫んでいるのに、一向に声が出てこない。そうこうしているうちに俺は息がうまくできなくなって、制服の胸の辺りを強く掴んだ。


「どうせ、悲しむ人間なんて誰もいないんでしょ——?」


 鋭利な言葉が、冷えた鉛のように心臓の奥に沈む。


 俺は。


 俺は……




「——ふざけないでッ!」




 鋭い矢のような叫びが、目の前の暗闇を切り裂いた。


 見ると、和奏が怒りも露わにりりぃを睨み付けていた。


「この人は誰よりも懸命に生きてる。誰よりも必死に生きようとしている!」


 眇められた目に、生まれたての涙が浮かぶ。


「貴女が自分勝手な理由で、その命を絶っていいわけがない。そんな権利、誰にもありはしない!」


 そう叩きつけるように言い切ると、和奏は法服の袖で乱暴に目元を拭った。


 その仕草はまるで幼い子供のようで——俺は何故か、ひどくほっとした。


「はは、泣くなよ……」

「ごめんなさい。悔しくて。ごめんなさい……」


 一喝されたりりぃは深く俯いている。


 ……これでもうあの減らず口も終わりだろう。


「では、これより判決に移る。被告第〇二五番・柊木奈津雄は前へ」


 裁判長の言葉に、俺はちらっと和奏と鞠ちゃんを見た。二人ともが力強く頷いたので、俺は弁護席から出て法廷の中央へと向かった。


 途中、証言台を横切ると、俯いたりりぃが何かをぶつぶつ呟いているのが聞こえた。


 負け惜しみかとも思ったが、なんとなく気になったので足を止める。


「おい……まだなんかあんのか?」

「——よ、人の、祈り……よ……」

「は?」

「神の——盾、……救いの、白羽——」


 な、なんだなんだ。お経か? 大丈夫か、こいつ?


 怪訝に思ったその時、りりぃの手元が光っているのが見えた。


 それは、あの天界武器——『どりーみんぐ・びゅーてぃ』だった。


「——我に、双翼を授けたまえ!」


 りりぃが叫んだその瞬間、猛烈な風圧を受けて、俺は後ろに倒れ込んだ。


「ッ、奈津雄さん!」


 かろうじて聞こえた和奏の悲鳴にも、応える余裕はない。


 法廷が纏う光よりも尚強い光が、りりぃを包み込んでいる。


 背中に大きな翼を広げ、天界武器を頭上に掲げ——りりぃは顔を歪めて高笑いしている。


「あんたら、馬鹿じゃないの? アタシにこれを持たせたまんまにしておくなんて」

「ま、さか、てめえ……!」

「安心しなよ。ここにいる奴らみーんな、あんたみたいに呆けさしてやるからさぁ!」


 間違いない、法廷にいる全員の記憶を奪うつもりだ。


 しかも、これを食らったら十時間以上は眠り続ける。


 その間に白樺りりぃは逃亡する。そして裁判はやり直される。


 俺は——再び、自死の罪を着させられちまう!


 必死で手を伸ばす。


 駄目だ、間に合わない。


 光が、膨らみ——ついに、弾ける!


「じゃあね、バイバーイ——」



「——遅ぇ」



 キィン、という甲高い音がその場の時を止めた。


 何が起こったのか分からないまま、俺の視界は一部始終を捉え続ける。


 証言台に——もう一人、天使が舞い降りた。


 黒いスーツの背に映える、純白の羽。その天使は青白い炎を纏った大太刀で、りりぃのステッキを一刀両断にしていた。


「あ、あ……アタシ、の——」

「悪ぃな、手加減てもんを知らなくてよ」


 いけしゃあしゃあと言ってのけた柴乎は、再び刀を振り上げる。


 切り飛ばされ、放り上げられた『どりーみんぐ・びゅーてぃ』の三日月の飾りが、真っ二つに割れて俺の足元に落ちた。


 呆然とするりりぃに、柴乎が人の悪い笑みを向ける。


 その表情には似つかわしくない、荘厳な響きと共に。


「——汝、悔い改めよ」


 大きな刀が元の二振に分かれ、それぞれ鞘に収められる。と、同時にりりぃは魂が抜けたように、どさりとその場にくずおれた。

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