第3話 対決
「これか?お前の車は。」
目の前には最新型のエア・オープンカーがあった
「ああ、正確にはレジスタンスの車だ。さ、乗るぞ。」
俺達が車に乗り込んで発車した瞬間。
「HEY、ドライブかい?その前に俺とデートしないかいOD君?」
バックミラーを見るとそこには追跡するエア・オープンカー、そしてハンターが乗っている。ハンターは真人と同じくらいの黒づくめの長身、ツンツンに立てた茶髪にピアス、手にはマシンガンを携えている。まずい、俺でも知っているハンター『マイケル・ツナ・ワタナベ』だ。日系人で鬼を倒した武将の子孫であり、ミドルネームにはその先祖の名前を付ける習わしらしい。そして先祖の血を引いているのか、ハンティングの腕はもはや伝説級であり狩られたODはシステム稼働から一年だというのにおびただしい数と聞く。
「悪いな、
真人が顔色変えずに手を刀に伸ばそうとする。
「へっ、昔話の名前も残ってないような奴の子孫は引っ込んでな。」
「偉大なご先祖持つと苦労するよなあ、ここで逃しちゃったら先祖の名折れだもんなあ、ツナ缶野郎。」
「ミドルネームで呼ぶんじゃねえ!」
なんか、わからんが奴はミドルネームにコンプレックスあるらしい。マグナムをぶっぱなしてきた。中身は銃弾ではなく福豆だがODの俺には十分なダメージとなる。
俺は伝説級のハンターの追跡に怯えていた。先ほどから心臓が早鐘のように打ち始めている。きっと今のもODの俺に向けた威嚇射撃なのだろう。
「まずいよ、ワタナベと言ったら凄腕のハンターだよ。俺に豆が当たるとダメージ食らうし、空に飛ばして上に逃げるか?」
「輝人、あちらも地上モードのようだからこのまま二車線の所まで飛ばせ。合図をしたら車線が増える左側に寄って急ブレーキに近い減速をしろ。」
「何をする気だ?」
「ま、見てろって。って、お前は運転しているからドラレコのモニター越しになるか。」
とにかく、俺は不安と疑いがない交ぜになりながらアクセルを踏む。確か二車線になるのはもうすぐだ。
「今だ!減速しろ!」
俺は素早く車線変更し、急ブレーキをかけて減速した。追跡車はそのままのスピードのためすぐに横付けの状態になる。真人が箱乗りしているため窓は開いており、この状態で福豆を打たれて俺に当たったら致命的だ。
「お遊びはここまでだ!」
ツナはやはり打ちはじめてきた。しかもいつの間にかマシンガン、ブローニングM1918に持ちかえている。
「そんなこと言ってられなくなるぜ。」
真人がそう叫びながらに刀を振った瞬間、俺は信じられないものを見た。福豆は全て真っ二つに切られている。まさか、あの放たれた複数の豆をぶった切ったのか!?
「な!?銃身が?!」
ツナが驚いている。ドラレコのモニター越しだと銃身の先が不自然に短い。
俺は即座に理解した。真人は福豆を打った瞬間に放たれた豆を切り、さらに銃身を斬ったのだ。
「ご自慢の武器がオシャカだと何もできねえよな。輝人、ダッシュボードの荷物を寄越せ。」
俺は言われるままに素早くダッシュボードの中身を渡す。
「ほうらよ、プレゼントだ!ドライブの友にしてくれ!」
そういうと真人は何かをツナの運転席目掛けて投げる。直後、ものすごい煙が立ち込め始めた。
「Noooooo!!」
ツナの車が急ブレーキをかけて蛇行し、電柱にぶつかって止まった。その脇を俺たちの車が猛スピードで過ぎていく。
「真人、あれはまさか爆弾か?」
「まさか、人間同士で傷つけたらさすがの俺も捕まる。あれは煙幕弾だ。」
「あ、なるほど。」
良かった、狩られる側とはいえ、人が死ぬのは見たくない。もっとも、あの派手なクラッシュぶりは無傷じゃすまないだろうが。
「おう、じゃ、向かうぜ。“鬼ヶ島”へ。」
「ああ、これからよろしく頼むな。」
これからどうなるかわからない。だが、俺は希望に満ち溢れていた。俺はアクセルを踏み、さらに飛ばした。
さあ、行こうぜ鬼ヶ島へ!
SETSUBUN 達見ゆう @tatsumi-12
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