四十八の節 夜明けの綺想曲。 その一
陽が昇り、港街を覆う霞を照らし出す。リルカナは、寝起きが悪いハドを引き
一方、
スーヤ大陸にも輸出されているが、一部、熱狂的に迎えられる具合だった。チャノキ由来の茶葉・発酵茶が根強く浸透しているからだ。
「苦くて、
これが、一番の原因だった。スーヤ大陸に浸透したチャノキは、元々はカヤナ大陸から持ち込まれ、栽培に成功した。
そのチャノキとは違い、コーヒーノキは
真珠と香辛料の国は、野生のコーヒーノキからビラカ種や他数種を、長年を掛け栽培種として確立させた。
近年市場に現れた、デミディア種豆。凝縮された深みがある味わいの中に、瑞々しく熟れた新鮮な果実のような後味が口内に広がる。
今、貴重な
その隣の席でアラームとハニィ達が、細切り
「やはり難しいです。カヤナ大陸では御機嫌が斜めで、上手く移動が出来ませんでした。ユタカとマサメの居所は、
「そうか。カヤナ大陸の、どこかにはいるはずだ。もう
アラームは、ハニィ達と輪郭がない報告と会話を重ねる。その相手であるハニィとシシィが、視線を時折
背後からアラームを抱き包むように座り、その左肩に顎を乗せている。
三人掛けの椅子に
ちなみに
会話が途切れた機会を見計らい、
「朝から、イチャコラしてんじゃねぇよ。そもそも、何なんだよ、その状況」
「昨夜、港湾沿いの盛り場に行ったんだが、かなり大物のネ――」
「言うな、ア――」
「――ズミが出て、それから離れない」
再び、優雅で
少々高く抑揚があった分、不満と不快、抗議の一言を吐いたと思われる。
「コチョウ夫人がいるんだから、この茶話室は大丈夫だと言っているだろう」
アラームに名指された、ハチワレの
この高級宿泊施設、
「へぇ~、意外。お前さん、
この時期にしか食べられない、口溶けが良いショコラーデを口に運びながら、
そんな
「おい、アラームさんよ。いつもの肩掛け
妙にスッキリする、アラームの衣装に気付く
「急な物入りがあってね。昨夜、カーダーを捕まえて売り付けた。カーダーも欲しがっていたし、カーダーの手の内にある方が、造り手にとって有益だからな」
人種によっては、高額での取引を申し出る場面も少なくなかった。
「そ、それと、もう一つ気になる情報があるのです」
これ以上、場を乱さないためと、話しを戻すためハニィが声を張り気味に告げた。アラームとハニィ達と同じ席に着く、熱心にメモを取っていたレイスが、少しばかり驚き身体を
「この先に、テフリタ・ノノメキと言う都市があります。御存知でしょうか」
「川幅と
ルリヒエリタへと流れる、豊富な水量を
内陸へ向かい北東の街道を進むと、
南西の街道を進めば、草原地帯を抜け砂岩地帯が広がる荒涼とした風景となる。陽の直下、白い円環の影が引かれる
「その交通要衝でもある都市に、宣戦布告をした君主都市があり、北側の平野部に塹壕を築いているらしいのです」
見た目とは違う報告向きのハニィの声は、一同の意識を掻き集めた。
「おいおい、どんな無謀な君主サマだよ。要衝なんだろ? 物資も人員も、援軍協定の数も半端な訳ないだろうに」
「宣戦布告をした君主都市は、どなたなのですか?」
メモ帳から顔を上げ、昇り始めた陽光を眼鏡で反射させたレイスが尋ねた。
「カネル君主都市。布告をしたのは、プラッティン・マクシム・カネル様。との噂です」
報告の名称を告げた金色の光彩が、困り果てていた。歴戦の元・
「そんな報告、信じられる訳ねぇだろ。平穏と平和と、永劫に語り継がれる高貴なるマフモフの王者、プラッティン・マクシム・カネル様が、愚かなヒト族みたいな真似をするはずがない」
「噂の域とは言え、事実の確認は必要だ。何かの陰謀に巻き込まれている可能性もある。ここは、お助け申し上げるのが正論だろう」
「私達が交渉役を買って出ても門前払いだ。カーダーを連れて行くぞ」
「成る程。真珠と香辛料の国を代表する大商人だしな。俺は身の証しを立てる手段はないし、妥当だな」
唖然とする一同を置き去りにした、アラームと
「行くぞ、アラーム!」
「
しっかりと
プラッティン・マクシム・カネル。
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