二十の節 シザーレ眞導都市、解散。
その日。シザーレ
謎の襲撃から、およそ
相変わらず、結界は外界との接触を拒み続ける。シザーレ
その日。西のシザーレ側では、
白く煙る壁の向こうから、老齢の女性が現れた。ニンゲン属リュウ種エオグレーン族の彼女は、
黒衣は明らかな上級職に就く装飾に包まれ、節くれ立つ細い指には大判の冊子が数冊と、書簡があった。
変化に陣の代表である、
シザーレ
彼女は告げる。シザーレ
書簡は、その旨を記した公文書。
それらをバローツに託したギスタ・ベルネ女史は、再び霞の向こう側へ戻った。
彼女の背を見送り、見えなくなってしまった白の天幕。万感の思いを込めた
シザーレ
これ程までの天変地異に似た質量の激変を、ほぼ直近で共有しているバローツを始め、控えていた十数名の部下。駐留する、両陣営合わせ
溢れる活気。多種多様の民族が行き交い、多くの偉人や
今はもう、存在しない。一カ月前の襲撃の解明も、およそ
間もなく晴れた、白い天幕の跡地。そこは、荒涼とした平地が、ただ。ただ、広がっていた。
まるで、シザーレ
◇◆◇
幻影の都となった現場に、夜の気配が訪れる。
シザーレ
立ち入りを禁じられた警戒線が、
野営の
「ハド」
青年が恐る恐る
「グランツ・ハーシェガルドの
若い男性の声が立つ暗闇に向け、片腕で竜槍を操り実戦並みに素早く構える。
「誰だよ、急に出て来やがって」
「今は、誰だって善いじゃないか」
セリスが掲げる金属と硝子で構成されたランタンの
次に、元の色が判別が難しい程、暗褐色の
「これ、見覚えがあるだろう?」
相手が問答無用で、セリスに向かって投げた。放物線を描き、何かが反射しセリスの片手に収まった。
「何故、お前なんかが持っているんだ! ハドに、この石の持ち主に何をしたんだ!」
「本人から預かっただけ。シェス・シェリムング・セリンディアスは、初対面の人間を信用しない。だから、話しをする時は渡せと言われた」
急に、馴染みがある名が聴覚に侵入し、セリスは二の句を失った。
「結論から言うと、グランツ・ハーシェガルド生きている」
「ほ、本当か!?」
「うん。
悪臭を漂わせる見ず知らずの相手が、バローツが保管している名簿の内容を把握しているのか。
不審さよりも、セリスは有益な情報収集し、精査する事を優先したようだ。
「
「それだけ緊急事態だったと察してくれ。素直で約束は
「何だよそれ。それで生きてるって言えるのかよ!」
「少なくとも、襲撃された時は生きていたと言う事だ」
次の情報を得ようと焦るセリスだったが、暗がりでは生理的嫌悪感に従ってしまう。漂う悪臭に、セリスが
「あぁ、悪いな。着替えも風呂もない状態で死骸処理をしていたから」
「アンタの
「その時は、見る眼がなかったと笑うだけ」
戦闘経験を重ねていても、対人処世術は
「判らないかな」
「な、何がだよ」
「直接、シェス・シェリムング・セリンディアスに、グランツ・ハーシェガルドは無事だと伝えるためだ」
「は?」
「それと、ちょっとした待ち合わせ。無事を伝える方が、実は副次的な目的」
「こんな、物騒な所で? アンタみたいな
「物騒だと判っているのなら、早く同僚の元へ戻れよ。行方不明になって、親友を困らせるのはお
結局、悪臭を漂わせる相手の正体も氏名が明かされる間もなく、言葉を残して気配が闇に溶ける。悪臭さえも、掻き消えていた。
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