陽だまりの彼女②

教室内にて、悠太郎と花子との関係は、最初こそ浮ついた噂の対象だったが、漏れ聞こえてくる内容が本についてばかりで、しかも悠太郎自身が読書家になった以上に目立った変化がなかったため、また花子をライバルと認めてようとしない勢力により、静観、というのがおおよそのスタンスだった。


そんな空気、花子を含めて落ち着てきたころ合いでの真っ青悠太郎の登場は、波乱だった。


何があったのか、好奇心はうずくもののそれを直接訊ねるような勇者は存在せず、ただ腫物を触るように避けるばかりだった。


……ただ、はっきりとわかるのは、悠太郎は花子を避けているというか、怯えてるのはわかった。



そんな感じで放課後、いつもの図書室、自分の落ち度をぐるぐる考えながらも手慣れた作業をこなす花子の前に、悠太郎はやってきた。


「これ、返すね」


そっと本を差し出す悠太郎、それを受け取る花子、目を合わせたまましばし時が止まる。


その表情、この本がお気に召さなかったんだと、それだけは花子にもわかった。


けどどこが? 何が悪かった?


「……あのさ」


答えを求める花子に悠太郎は答える。


「ラブストーリーって、言ってたよねこれ」


「え、えぇ」


「サイコホラーじゃんこれぇ」


「……えぇええ!」


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