境界に佇む
境界に佇む
著者:柚緒駆 様
作品url(https://kakuyomu.jp/works/1177354054882054387)
噛み砕きがいのある作品です。
謎、疑問が多く、作中での答え合わせはあまりされません。しかし「投げっぱなし」という印象はなく、読者に考えさせることで一層「気になる」話に仕上がっていると感じました。
主人公の随分変わった職業やずいぶんお金を必要としていることから、彼の過去も気になりますが、それを「語らない」からこそくどくない、読みやすい作品なのでしょう。
五味が常川と対峙する序盤はほとんどが台詞ですが、テンポよく必要な情報が読者に示され、地の文が少ないのは気になりません。むしろ、あったら邪魔でしょう。
web小説としては改行、空白が少なく、紙の本に近い形式です。web小説慣れしている読者には少々「詰まっている」と感じさせるかもしれません。
この物語における最大の謎は、狐が実在したのかどうかです。
両方のパターンで、私なりに考えてみました。
【狐がいた場合】
ツヨシ少年の姿を狐が借りている。あるいは一緒に行動しているが、狐が姿を見せるのは襲撃時のみ。
五味に狐の姿を見せなかったのは、なるべく警戒させないため。
一緒に行動している場合、それはなぜか? 常川の祈祷により狐もダメージを受けており、互いを利用しあって復讐するため。あるいは、ツヨシ少年は自分に憑いた狐とコミュニケーションが取れており、互いに情があった。
狐のみの場合、ツヨシ少年の名前を呼ばれて入って来られるのか? 名前を呼ばれず「入って来いよ」だけでマンションに入っている描写があり、名前の有無は関係ない。
最後の台詞は本物の狐。
【狐がいない場合】
全てツヨシ少年の報復。
肉体がない=人間の形しか取れないとは限らない。自分の死に狐(獣)が関わっていると知っていたため、報復に襲い掛かった際獣の姿をとろうと思いついた。
最後の台詞は鳴きまね。文字だけでは本物鳴き声か子供のまねかは読み取れない。
全く的外れの推理かもしれません。
せめてかすっているとうれしいけれど、それを作者さんに聞いては野暮。わからないままにしておいたほうが、面白いです。
今回はこの辺で。
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