著者:藍上央理 様

作品url(https://kakuyomu.jp/works/1177354054883072752


 庭。

 怪奇者は、この飾り気のないタイトルから、いくらでも妄想ができます。

 その庭はなんなのだ?

 庭に毒草でも植わっているのか?

 それとも死体が埋まっているのか?

 呪いの木でも生えているのか?


 タイトルだけでこんなに盛り上がってしまいましたが、本編を読むと予想とはまた違う、しっとりとした素敵な作品でした。


 とにかく、何もかもが透明で美しいのです。

 庭の花。主人公の心情。おばへの疑念。

 すべてイメージしやすく、なおかつ美しい。そのうえ、しつこくない。

 珠玉、というのはこんな作品を言うのでしょうか。


 個人的には、ウェブ小説にしてもちと空行が多いかな……と思いましたが、そのあたりは作風のこだわりでしょう。


 最終的には土地もの、とでも言えばいいのでしょうか。呪われた土地、呪われた血筋。いえ、最後の「跡目を探し」というところから考えるに、ひょっとしたら血筋は関係ないのかもしれません。事実主人公はおばと血のつながりはないわけですし、ふらりと迷い込んだどこぞの娘がお眼鏡にかなって「跡目」に……なんて、想像の幅があって楽しい作品でした。

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