4-13【思ったより使えませんでしたけど】

 ☆テラー


 ズリ……ズリ……


 黒いスーツをきた魔法少女を引きずりながら歩くのはテラー。ファイターとの戦いで意識を失ったガンナーを、どこかに連れて行こうとしている。


 なぜガンナーを助けるか?理由は簡単。テラーは刺激を求めているのだから。この殺し合いという最高の場で、最高の刺激を。


 ただしあくまで傍観者として。だ。こんな面白い催し物は、見るだけでいい。


 例えば、ボクシング。例えば、無人島生活……見るだけなら面白いが、やりたくはないというものはこの世に無数にある。


 巻き込まれてしまった今の自分。参加しないという選択肢はできないが、それでも極限まで傍観したいという気待ちはある。


「……まぁ、サモナーさんは思ったより使えませんでしたけど」


 テラーは誰にも聞こえないようにつぶやく。刺激はあったが、あっけなく死んでしまった。どうせなら、もっと有効的に散って欲しかった。


 後悔しているかと聞かれたら後悔していると答える。という後悔。もっとも、すぎたことはなんとやら。だが。


 未来本にサモナーの名前が書かれた時、テラーはこれからのことを考えていた。つまり、サモナーの代わりに誰を味方につけるか、だ。考えがまとまる前にサモナーが動き出したのだが。


「とりあえず、どこかで休ませないと……そのあと、仲間にしてくれるように頼みましょう。同盟を組んでるとは思えませんし……おや、日が、暮れてきましたしね」


 ふと気づくと、もう夜になっているようだった。さて、このあとどこかで休もうか。テラーはそう考えて、またズルズルとガンナーを引きずっていたのだった。



 ◇◇◇◇◇


 ☆キャスター


「おそいねぇ、ガンナーお姉ちゃん」


 ベッドの上に座りながら、隣にあるフェンサーに話しかける。しかし彼女は答えない。無言で、キャスターの方を見るだけであった。


 手には先ほど見つけたゴムがあり、それをグニャグニャとして遊んでいた。これに触れれば父のことを思い出す。そして、母のことも。


 キャスターは父も母も大好きだ。父はを注いでくれたし、母も同じように印をつけてくれた。二人とも、とても大事な大切な大好きな両親だ。


 しかし、父と母はもうキャスターの前にはいない。死んだのではない。あんなに素敵な両親は突然逮捕されたのだ。


 間違っていると叫んだ。だが、二人は帰ってくることはなく、キャスターは一人残された。


 だから国を作るのだ。父が愛情を注ぎ、母が愛情の印をつけてくれる。そんな素敵な国を作れば、全て丸く収まる。


 幼いが故に出たそんな突拍子もない結論。しかし、彼女にとっては現実味しかなかった。だからこそ、彼女は国を、そして国民をのだ。


「んー……どうしようっか。探しに行ってもいいけど……もう暗いし、どこにいるかわからないし……そうだ!!」


 そしてキャスターはフェンサーのところに近づきにへへと可愛らしく笑い、彼女の手をとる。蛆虫が手で這いずり回っていたが、気にせずキャスターは口を開ける。


「フェンサーお姉ちゃん!お願いがあるんだけど、今から明日の9時くらいまでガンナーお姉ちゃんを探しに行ってくれない?大丈夫?」

「ゔ……ぉぁう……」

「うんうん!じゃー行ってらっしゃい!!見つけてたら連れてきてねー!」


 そう言って外に出て行くフェンサーを見送る。そして大きなあくびを一つして、ベッドの上に転がった。


 子供はいっぱい寝なきゃダメなのです。と、言い訳のようにつぶやいた彼女は、ゆっくりと目を瞑って深い眠りに潜るのだった。




【生存者の9名の皆さん。お疲れ様です】

【これよりマジカル☆ロワイアル5日目を開催します】

【現在のトップはキャスターさんです】

【では皆さま、頑張って生き残ってください】

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