山簡   酔っぱらいうぜえ

山濤さんとうさんの子、山簡さんかん荊州けいしゅう刺史となった。

かれは時折職務を放り出し、

外で飲酒に耽った。


そんな山簡のことを、

任地の襄陽じょうようの人たちは詠っている。



山公時一醉 徑造高陽池

 山簡さまは酔っぱらわれると、

 襄陽の高陽池こうようちにお出掛けになる。


日莫倒載歸 茗艼無所知

 日暮れころまで飲み続けて

 ぶっ倒れれば車に乗せられ

 帰って来。

 もう、すっかりぐでんぐでん。


復能乘駿馬 倒箸白接籬

 酒に酔ったところで

 うまく駿馬を乗りこなしたと

 思ってみても、みてみろよ。

 白い帽子がさかさまじゃ。


舉手問葛彊 何如并州兒

 やがて山簡さま、

 部下の葛彊かつきょうに聞くのだ。

 わしの乗馬の腕はお前の故郷、

 并州へいしゅうの男児と較べてどうなのか?

 と。



まぁ、そんなぐでんぐでん長官さまも、

いざ永嘉えいかの乱が起これば兵士を率い、

果敢に戦われ、陣没なさったのだが。




山季倫為荊州,時出酣暢。人為之歌曰:「山公時一醉,徑造高陽池。日莫倒載歸,茗艼無所知。復能乘駿馬,倒箸白接籬。舉手問葛彊,何如并州兒?」高陽池在襄陽。彊是其愛將,并州人也。


山季倫の荊州為るに、時に出で酣暢す。人は之が為に歌いて曰く:「山公は時に一に醉い、徑ちに高陽池に造る。日莫れて倒載し歸り、茗艼し知る所無し。復た能く駿馬に乘り、倒しまに白接籬を箸く。手を舉げ葛彊に問う、并州が兒とでは何如?」と。高陽池は襄陽に在り。彊は是れ其の愛將にして、并州の人なり。


(任誕19)




山簡

酔っぱらってても軍事には心砕いている感じがあって、のちに将軍として戦う気概の片鱗は見せていた、ということになりますでしょうかね。それにしたって酔っ払いの相手務めなきゃいけなかった葛彊さんにはいい迷惑である。

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