琅邪諸葛氏

諸葛誕  娘の嫁入り   

琅邪諸葛氏 諸葛誕

 既出:諸葛亮2



太原たいげん王氏、太尉たいいにまで登ったはいいが、

謀叛の咎で殺された人、王淩おうりょう

その息子に、王広おうこうという人がいた。


かれは諸葛誕しょたつたんの娘を娶った。

寝室に入り、初めて

顔と言葉を交わす二人。


残念ながら諸葛誕の娘は、

王広の好みではなかったらしい。

王広は言う。


「しょぼくれた顔だな!

 諸葛誕どのに

 全然似ておらんではないか!」


すると諸葛氏、きっと言い返す。


「ご立派な士大夫様(笑)のくせに、

 王淩様にまるで似ておられない!


 そんなあなた様が、どの口で

 夫人を英傑になぞらえようと

 おっしゃるのです?」




王公淵娶諸葛誕女。入室,言語始交,王謂婦曰:「新婦神色卑下,殊不似公休!」婦曰:「大丈夫不能仿佛彥雲,而令婦人比蹤英傑!」


王公淵は諸葛誕の女を娶る。室に入り、言語を始めて交さば、王は婦に謂いて曰く:「新婦が神色は卑下なり、殊に公休に似たらず!」と。婦は曰く:「大丈夫は彥雲を仿佛せる能わざるに、而して婦人に令し蹤を英傑に比さしめんか!」と。


(賢媛9)




王淩

この人の妹が郭淮かくわいの奥さんだったりするし、そして諸葛誕は後にやはり謀叛を起こして敗死するし、まぁ何と言うか、曹氏そうし系の名士である。なお王広自身も王淩の謀叛に連座し殺された。


このエピソードはどちらかと言うと、許允きょいんの奥さんの阮氏げんしを引き合いに出して語りたいところかもしれない。どちらも賢い奥さんを娶り、そして奥さんをないがしろとし、やがては司馬氏しばしの権勢の中で殺された。注は「いやいや王広も世に名士として鳴らした人だしそんなダセぇことしねえっすよ」ってツッコミを入れているが、まぁ重要なのは説話としての類型ですよねきっと。「奥さんについて酷いことをしたやつには悪い結果が巡ってくるのだ」みたいな。


世説新語の中にはこう言う、「説話の型」みたいなものが伺われる話がちらほらあるような気がする。その辺を取りまとめられるのも面白いのかもしれないなー。ちょっとお仕事としての強度が高すぎる感じですけども。

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