司馬道子2 木造建築   

司馬道子しばどうし謝重しゃちょうは、どうもそのセンスが

水と油だったようだ。


司馬道子が宰相として入っていたのは

東府とうふ城と言う、建康けんこう南東部にある出城。

ここに賓客用の屋敷を設けたのだが、

そこでの建築技法は、

木材をメインにする、と言うものだった。


建康で木造建築は

あまりポピュラーではない。

と言うより、詩経しきょうが書かれた昔から

「木造の家など蛮族の建物だ」

的なイメージが強かった。


そんな建物に、謝重が赴く。

そこには司馬道子に面会したい

人がわんさとあふれている。


謝重、そこにいる客の誰とも

言葉を交わさず、ただ建物を見、言う。


「司馬道子様は、

 また蛮族趣味でいらっしゃる」




東府客館是版屋。謝景重詣太傅,時賓客滿中,初不交言,直仰視云:「王乃復西戎其屋。」


東府が客館は是れ版屋なり。謝景重の太傅を詣でるに、時に賓客は中に滿たば、初にも言を交えず、直だ仰視して云えらく:「王は乃ち復た其の屋を西戎にせんか」と。


(排調58)




ちなみに謝重の娘が王恭おうきょうの息子に嫁いでいて、しかも王恭と司馬道子は対立してるしで、この人も割と立ち位置的には大変。まぁ王恭が部下に引き入れようとしたところを司馬道子が強引にぶんどったみたいな来歴もありますしね。謝重さん的にも、色々胸には突っかかりがあったんでしょう。

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