劉惔2  許詢と劉惔   

隠遁文人、許詢きょじゅんが母の見送りで

都にまで出てきた。

そこで、劉惔りゅうたんと会見。

ここで劉惔、どうも一発で

気に入ってしまったらしい。


「許詢は評判に違わぬ人物でしたか?」


ある人が劉惔に聞くと、


「あの才能、詩情は

 評判を遥かに超えるよ」


そう答えるのだった。



そんな許詢、建康けんこうには一ヶ月間の滞在。

その間劉惔、連日訪問する。

やがてため息をつきながら、言う。


「お前が早いところ

 都を去ってくれないから、

 おれはいつまでも

 丹陽尹たんよういんの職務に戻れんのだ!」


いやいや、色々おかしいでしょそれ……



やがて許詢が帰ったあとの、ある夜のこと。

その夜は風が爽やか、月は朗らか。


これらの情景を前に、劉惔は言う。


「こんな夜には、許詢を思い出すな」




許玄度送母,始出都,人問劉尹:「玄度定稱所聞不?」劉曰:「才情過於所聞。」

許玄度の母を送るに、始めて都に出づ。人は劉尹に問うらく:「玄度に定めし稱えたるを聞きたる所や不や?」と。劉は曰く:「才情は聞ける所に過ぎたり」と。

(賞譽95)


許玄度停都一月,劉尹無日不往,乃歎曰:「卿復少時不去,我成輕薄京尹!」

許玄度の都に停まること一月なるに、劉尹の往かざる日無し。乃ち歎じて曰く:「卿の復た少しき時にも去らなば、我れ京尹を輕薄せるを成さん!」と。

(寵禮4)


劉尹云:「清風朗月,輒思玄度。」

劉尹は云えらく:「清風朗月たれば、輒ち玄度を思う」と。

(言語73)



劉惔さんベタぼれですやん。

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