何充2  部下に心配される

何充かじゅうさんが

会稽かいけい内史になっていた時のことだ。


会稽郡府に務める兄弟がいた。

虞存ぐそんと、虞謇ぐけん

兄弟にして、上司と部下。

そんな関係の二人だ。


要地の長官として、何充さん、

多くの客を対応しなければならない。

日々に追われる中、何充さんは

みるみる疲れていった。


これを心配した虞謇、

応対を絞った方がいいんじゃないか、

そう思い、家族のひとに

応対させる客人を選別させようとした。


うーん、じゃあ、どんな人物を

通すことにすればいいのかしら。

虞謇、その基準について考え、

虞存に見てもらう事にした。


虞存と虞謇が一緒に食事をする。

で、食事中にこの話を持ち掛けられた。

そうしたら、どうもこの基準が

「人品に優れた人」

的なものだったようだ。


虞存、ひとまず言う。


「なるほど、その考えはとても良い。

 ならば、食事を終えたらさっそく

 私からのコメントを付けよう」


そうして虞存、

虞謇が書いた基準案の後ろに、

こう書き加える。


「門番に郭泰かくたいのような

 見識優れたものを置けるのであれば、

 この通りにするとよい。

 しかし、そんなすごい人物を、

 お前はどうやって見つけてくるのだ?」


ピャンッ!


虞謇、慌ててこの話を取り下げた。




何驃騎作會稽,虞存弟謇作郡主簿,以何見客勞損,欲斷常客,使家人節量,擇可通者作白事成,以見存。存時為何上佐,正與謇共食,語云:「白事甚好,待我食畢作教。」食竟,取筆題白事後云:「若得門庭長如郭林宗者,當如所白。汝何處得此人?」謇於是止。


何驃騎の會稽に作さるに、虞存が弟の謇は郡主簿に作され、何を以て客に勞損せるを見、常客を斷たんと欲し、家人をして量を節せしめ、通ずべき者を擇ばしむ。白事を作して成り、以て存に見す。存は時に何が上佐と為り、正に謇と共に食せば、語りて云えらく:「白事は甚だ好し、我が食の畢りを待ちて教を作さん」と。食の竟うるに、筆を取り白事の後に題して云えらく:「若し門庭長に郭林宗が如き者を得たらば、當に白したる所が如くせよ。汝は何處にて此の人を得んか?」と。謇は是に於いて止む。


(政事17)




虞存、虞謇

会稽かいけい虞氏、まー要は地元の名士と言う奴である。このエピソードが示す通り、兄貴のほうは結構な人物として知られていたようである。褒める所は褒める人ではあると思うのだけれども、しかしコメントが異常に辛辣で笑う。


郭泰

後漢ごかん後半ごろの儒者。人物鑑定に優れていた。要するに虞存さんは「お前の書いた基準できっちり人物を見抜くのは伝説級の人物鑑定者でしか無理だよ」と言っているわけだ。まぁあれよね、人間お題目なら簡単に提示できますものね。それの実行は、いつでもとてもムツカチイ。

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