楽広5  楊淮の息子たち 

冀州きしゅう刺史の楊淮ようわい

彼には二人の子がいた。楊喬ようきょう楊髦ようぼう

ともに幼くして大器の片鱗を見せていた。


楊淮、裴頠はいぎ楽広がくこうと仲がいい。

そこでふたりのもとに出向き、

子供らを紹介する。


裴頠といえば、品行方正で知られる。

そんな彼は、楊喬の

弁舌さわやかなことを見て、言った。


「楊喬はすぐにそなたレベルに

 なりそうだな。そこを行くと、

 楊髦はやや出遅れるだろうか」


一方の、楽広。清廉潔白な彼は、

楊髦の深く落ち着いた様子を見て、言う。


「なるほど、楊喬はおやじ殿に

 追いつくかもしれんな。

 だがきっと、楊髦は

 更なる高みにたどり着くだろうよ」


楊淮、二人のコメントを聞き、笑う。


「おいおい、うちの子達の優劣が

 そのままそなたらに

 はまってくるのではないかね?」


このやり取りを聞いた者たちは、

以下のように評価している。


楊喬は弁舌さわやかとはいえ、

見識にはいささか漏れがある。

そうすると、楽広の評価に

一理ある、と言うより他ない。


もっともその兄弟は、後々には

ともに立身したのだが。




冀州刺史楊淮二子喬與髦,俱總角為成器。淮與裴頠、樂廣友善,遣見之。頠性弘方,愛喬之有高韻,謂淮曰:「喬當及卿,髦小減也。」廣性清淳,愛髦之有神檢,謂淮曰:「喬自及卿,然髦尤精出。」淮笑曰:「我二兒之優劣,乃裴、樂之優劣。」論者評之:以為喬雖高韻,而檢不匝;樂言為得。然並為後出之俊。


冀州刺史の楊淮が二子は喬と髦、俱に總角にして成器を為す。淮は裴頠、樂廣と友して善く、遣りて之を見さしむ。頠が性は弘方なれば、喬の高韻有せるを愛し、淮に謂いて曰く:「喬は當に卿に及ばん、髦は小しく減ずるなり」と。廣が性は清淳にして、髦の神檢有すを愛し、淮に謂いて曰く:「喬は自ら卿に及ばん、然せど髦は尤も精出せん」と。淮は笑いて曰く:「我が二兒の優劣は、乃ち裴、樂の優劣ならんか」と。論者は之を評す。以為えらく、喬は高韻なりと雖も、檢は匝ねからず。樂が言を得たりと為す。然るに並びて後出の俊と為る。


(品藻7)




楊淮、楊喬、楊髦

楊淮は「もしかしたら楊準ようじゅんかも?」とも言われている。まぁこの辺はいくらでも書き損じが発生するところなので気にしない。っつーか裴頠や楽広と仲がいいってなると、やっぱり弘農こうのう楊氏ですよねー。注にもその辺の情報がなかったんだけど、晋書楽広伝には乗ってました。


しっかし世説新語も劉注も、南朝クラスタだから北朝系名族の扱い軽いよなー。いや仕方ないんですけど。

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