第94話 真実7

「リリィは攻撃はしないで防御に専念してくれ!」


「分かった!」


甲冑が剣を振り下ろす。それを交わして右肩の関節に剣を叩きこむ。

剣は敵の腕の半ばまで斬れたが、完全に斬り飛ばしてはいない。

盾による打撃が来る。

それをバックステップで躱す。

甲冑は盾を前に掲げたまま突き進んでくる。


クソ! 関節が見えない!


剣の突きが来る。

目の前に岩の壁が隆起してその突きは防がれる。


「ありがとう。リリィ!」


「任せて」


思い切って盾に右袈裟に振り下ろす。

だが、盾は硬く三分の一程度しか削れていない。


直ぐに剣を引いて次の攻撃に備える。


先ほどから魔闘気で攻撃しているのだが、それでも斬れてはいない。

とりあえず、盾だ。盾をなんとかすれば勝機はある。


居合の構えを取る。

そして紫電一閃。


紫電の太刀を盾に逆袈裟に叩きこんだ。


盾は金属の擦れる音をしながら両断される。


「さて、これでもう防げないぞ」


甲冑は後ろに下がるが、それを追って前に進む。

そして剣を持っている右肩の関節に二度目の剣を振り下ろす。


剣と共に右腕が吹き飛ぶ。


これで攻撃手段は失ったな!


居合の構えで右足の膝を紫電の太刀で断ち斬る。

ガーディアンはバランスを崩してその場に落ちる。


だが、それでも左手でこちらを掴もうとしてくる。


「アルフさん! ガーディアンが止まらないんですけど!」


「頭だ! 頭に魔石があるはずだから頭を狙えば動きが止まるはずだ!」


「分かりました!」


首に剣を突き刺して思いっきり振り斬る。

首が飛び、カランとコンクリートの地面に落ちる。

それと共に甲冑はガシャンとコンクリートの上に倒れ伏した。


「ふぅ……なんとかなりましたね」


「ああ、なんとも無残な姿なのだ……ガーディアンだけでもかなりの価値があるというのに」


アルフさんは飛ばされた右腕と右足を持って嘆いている。

そんな事言ってもしょうがないでしょうよ。こっちも必死だったんだからさ。


「今度は上手くやりますよ」


「本当だぞ!? 本当に頼むぞ!」


「わ、わかりましたよ」


頭が弱点なのだ首を飛ばせば良いんだからそれが分かっただけでも戦いやすくなる。


吹き飛んだ頭を調べる。中には少し大きめの魔石が入っていた。これが動力源か。

一応、アルフさんに断っておくか。


「アルフさん。魔石はどうします?」


「それも研究に使うから欲しいのだ」


「分かりました。では、どうぞ」


「うむ。ありがとう」


ガーディアンを倒しても魔石が手に入らないんじゃ金にならないな。

まだ、魔物を倒してた方がマシだ。


そして、アルフさんの調査が一段落した所で、扉を開けて中に入った。

中はまだコンクリートの壁が続いていた。

いったいどこまで続いているんだろうか。


歩いて一時間したところで、またガーディアンが立っているのが見えた。

今度はハルバードを持ったガーディアンだ。


「アルフさん。やりますよ」


「仕方ないのだ。任せるぞ」


走り寄るとあちらも向かって来る。

一定の距離まで詰めた所で居合の構えを取って、相手を待つ。


だが、ハルバードのほうが射程が長い。

突きが来る。


「リリィ!」


「うん!」


岩の壁が前に隆起してその突きを跳ね返す。

そして、跳ね返した岩の壁が消えると同時に瞬動をして相手の目の前に近づく。

紫電一閃。


相手の首が宙を浮いてカランと音を立てる。

そして、胴体もガシャンと倒れ伏した。


今度はスマートにやれたな。リリィとの連携もバッチリだ。


「ありがとうリリィ」


「ぶい!」


リリィがピースサインを出してくるので頭を撫でた。

とても嬉しそうにしている。可愛い。


「アルフさん。今度は上手くいけましたよ」


「うむ! 吾輩も満足なのだ」


そして、またアルフさんの調査が始まった。

その間にやることは無い。

ただ、待つだけだ。


1時間程経った所で、調査が終わったようだ。


「よし、そろそろ行くのだ」


「と、言いたい所ですけど。そろそろ休みましょう。遺跡に入ってから5,6時間は経ってます。恐らくもう夜になっている筈ですから今日はここで休みましょう」


アルフさんはそれでも行きたそうだったが、一応納得してくれた。

ふぅ。良かった良かった。


とりあえず、許可も貰ったので寝床の準備をする。

火の精霊で火を起こして、鍋に水の精霊の水を入れて、干し肉を入れた。

香り付けにハーブも少し入れて、干し肉の入ったスープを完成させる。

それを三人で飲む。馬にも水の精霊の水と牧草を与えている。


「とりあえず、今日は遺跡から入って5時間くらいです。表層を抜けて3階の扉から2時間くらい歩いた所ってとこでしょうか」


「そうだな。明日からはもっとペースを上げて進軍するのであるか?」


「いえ、保存食の残りはまだ一ヶ月分くらいはあります。まだ、二週間は潜っていても問題ないでしょう」


「そうか。なら安心だな」


アルフさんは嬉しそうだけど、リリィは不満そうだ。

そりゃ、こんな地下にずっといると頭がおかしくなりそうだよな。


そして、夕食を簡単に済ませたら後は寝床で横になって寝る。

夜の見張りはリリィの精霊魔法がしてくれるので問題ない。

便利ですね本当に。


寝床に横になるとリリィが寄ってくる。外套の中に入れて腕枕をしてあげる。

リリィは少し顔を赤くしていたが、そのうち直ぐに寝息が聴こえてくる。

私も寝よう。明日からが本格的な未知の調査だからな。




次の日、痺れる腕を回しながら昨日の残りを簡単に食べて片づけをする。

やはり、腕枕というのは腕が痺れるな。

馬の背に荷物を括りつけて、出発だ。

目の前の扉を開けて、中に入る。

変わらずにコンクリートの壁が広がっている。

いったい、この道はどこまで広がっているんだろうか。

思わず、保存食が気になり出すが大丈夫だ。

撤退するのを決めるのは二週間後に決めれば良いだけだ。


今はただ、進むだけ。それだけを考えていこう。


道中はなにもない。魔物もだ。

ガーディアンはどこか扉を守る所や大事なとこに配置されているのだろう。

その気配はない。安全な道中だな。


そして遂に扉を発見する。

だが、そこには二体のガーディアンが守っている。

あのガーディアンが2体か……。

やっかいだなぁ。

しかもなるべく傷つけないようにという注文もあるしね。

いやぁ、面倒な事だ。

「さて、アルフさん。やりますけどいいですよね?」

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