第70話 安息2

「はい、じゃあ冒険者証出して」


「はいどうぞ」


食事後、冒険者ギルドに戻ってから受付で冒険者証をノインさんに渡す。

暫くしてから冒険者証を手渡してきた。


「はいよ。これでアランはCランク冒険者だ」


「一応、聴きたいんですけど。私ってDランクになってから依頼を1つしか受けてなかったんですけど、なんで冒険者ランク上がったんですか?」


「それって、リリィの護衛の話?」


「うん。そうだよ」


またもよ溜め息を吐くノインさん。この光景見慣れたな。


「……確かにDランクから依頼は1つしか受けてなかったみたいだ。それは冒険者証を見れば分かる」


え、冒険者証ってそんなハイテク機能付いてたんだ知らなかった。


「でも、昨日の議題で幼龍を討伐した英雄がDランクじゃランク詐欺だろって話が出てね。ギルド長から特例でせめてCランクにするように言われたんだよ」


なるほど。確かに、あの幼龍の討伐依頼はB+~A-の依頼。

それをDランク冒険者が倒したとなっては角が立つってことか。

実際にはジーク達と一緒に倒したから一人で倒したわけじゃないけど、まぁこれもしょうがない処置だよね。


「理解しました。確かに、Dランクが龍を討伐したじゃ恰好が付かないですからね」


「そう言うことだ。実際にはBランクにしろって話まで出てたんだぞ?」


「え、そうなんですか? いきなり、二階級も上がるのは流石に……」


「そ、流石にいきなりBランクは駄目だろってなってCランクに落ち着いたってわけ。でも、もう直ぐにBランクになれる程の貢献度は貯めた状態になっているんだよ」


「つまり、Bランクのランクアップ条件を満たせば直ぐにでもBランクにすると言うことですか?」


流石に気が早すぎだろ。と思ったが、もしかしたらヴァルト王子もこの件に一枚噛んでいるのかもしれないな。

自分で言うのもなんだが、英雄をこのままのさばらせるのは勿体無いということなんだろう。


「そういう事。でも、Bランクのランクアップ条件はA以上の魔物の討伐かそれに準ずる国への貢献だ」


「討伐はわかりますが、国への貢献っていったいどのような事です?」


「それは、古代文明の遺跡の発見や遺跡調査での宝物の発掘。戦争での活躍に希少生物や植物の発見に調査とか魔道具の研究開発とかだな。最後のはテイマーとか錬金術師用だけどな。大体はそんなもんだ」


古代文明の遺跡の発見や宝物の発掘に他の分野での活躍は解るけど、戦争での活躍か。

出来ればそんな事したくないな。

私が戦争という言葉に反応して苦い顔をしたのに気づいたらしい、


「安心しな。古龍国は今の所、外国とは戦争するほど関係は悪化していない。それに、魔物や魔族がいるんだ。その脅威の前に人間同士で戦争なんてしている余裕なんてないさ。まぁ、亜人との紛争はあるけどな」


最後に不穏な言葉があった気がするが、気にしないようにしよう。


「ありがとうございます。でも、そんな直ぐにBランクにはなりませんよ」


「そりゃそうだ。首都の近くでAランクの魔物が現れるわけもない。それはもっと辺境の地じゃないとないさ。だから、気長に待つんだな」


「はい。では、ノインさんまた」


「お姉ちゃん。バイバイ」


リリィの手を取って、受付を去る。


「はいよーまたな」




冒険者ギルドを出ようとする時に、扉が開かれる。

そこにいたのはジーク達だ。


「あ、アニキじゃないですか!」


「ああ、ジーク達久しぶり」


一緒に首都を目指していたようだが、3日も私とは時間が掛かっていたようだ。


「遅かったね。なにかあったの?」


「ああ、仲間の遺品の回収と村で接待を受けましてね。それで遅れちまいました」


「そっか。そりゃそうだよな」


20人いた冒険者が一部逃亡したとはいえ6人にまで減ったんだ。

遺品を回収するだけでも大変だっただろう。


「まぁ、でも幼龍の体はありますからね」


そう言う、彼らの後ろには滑車に乗せられた幼龍の首無し遺体がある。

これが私にはどれだけの価値があるのかは分からない。

死んでしまった人達と幼龍の遺体。

それにどれだけの差があるのか。


「とりあえず、お疲れさん。じゃあ、またな」


「ええ、アニキもなにかあったら教えてください。協力しますから」


「うん。ありがとう」


冒険者ギルドを後にする。

彼ら6人の喜ぶ顔を見ると、この世界での命の軽さを思ってしまう。

あの龍に12人程の死者を出しても良い価値があるのか。

現代での感覚では到底考えられないな。

でも、それがこの世界なんだ。





リリィの手を取って、図書館に向かう。

北東にあるとのことだ。

とりあえず、向かうことにしよう。


20分くらい歩くと、大きな建物が見えてきた。

その看板には本のマークが描かれている。

恐らくあれば図書館だろう。


ようやっと、着いた時には夕暮れ時になっていた。

扉を開けて中に入る。

目の前に受付の女性が一人。

そして、両隣の部屋には本棚がずらりと並んでいる。

しかも2階もあるようだ。

これは欲しい本を探すだけでも苦労しそうだ。


「こんにちわ」


受付の女性に声を掛ける。


「いらっしゃい。なにか御用ですか?」


「ええ、ちょっと田舎の出でしてね。図書館で本を読みたいのですが、なにか規約かなにかを教えていただけないでしょうか」


「なるほど。そうでしたか。基本的に、図書館は八時から開いてます。えっと、二の鐘が鳴った時ですね。それから、夕方の6時に閉まります。これは七の鐘ですね。それと、入館料として、一人2コル頂きます。持ち出しは厳禁です。貸出もしていません」


「ふむ。他に何かあります?」


「そうですね。本を汚したり、破いたり等の行為は罰金と弁償をしてもらうことになっています。それと、図書館での飲食は禁止されているのでお気を付けください」


「1回外に出て、昼食を取りに行って戻ってきたらまた入館料を払うんですか?」


「いえ、この羊皮紙に入館して頂いた方の名前を控えるので、ご本人の確認が出来たら払う必要はありません」


「そうですか。分かりました。丁寧にありがとうございました」


「いえ、……でももう六の鐘が鳴ったので今からだと直ぐに閉まってしまうので明日以降にいらっしゃるのが良いかと思います」


「そうですね。そうしようと思います。では、明日また来ます」


「はい、お待ちしております」


「バイバイ、お姉ちゃん」


「はい。バイバイ、お嬢ちゃん」


にこやかに挨拶を交わして図書館を出る。

結局無駄足になってしまったか。

でも、明日から来れば良いか。


じゃあ、帰りに本屋でも覗いて見るかな。


「最後に本屋に行こうか」


「うん。わかった」


北門の大通りに行くと、本とペンの看板が描かれている店を発見。

これかな?


中に入ると、古臭い蔵書の匂いがした。


「いらっしゃい。なにか、お探しかな」


「そうですね。魔法に関する本とかありますかね」


「それならありますよ。入り口から右の本棚のコーナーにあります。あ、立ち読みはやめてくださいね」


「ありがとうございます。わかりました」


礼を言って、そのコーナーに向かう。

見ると、初級魔術入門や中級魔術書、上級魔術書等が置いてある。

サラっと流し読みで中を見るが七属性についての魔法が書いてあるだけだ。

個人的に知りたいのは時空魔術関係の無属性魔法だ。

と、面白い本を見つける。

その本のタイトルは魔闘気について、との本。

面白そうだ。買ってみるか。

その本を取り出して、購入することにした。

値段は50コル。

結構な値段がしたが、良い勉強になるだろう。



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