第68話 そういえばイチゴさんはちゃんと掃除しますか?

「よし、準備完了」


 身支度を整えた私たちは、とりあえずその扉があるという場所にむかうことにした。


 街の大通りまで戻り、そこからさらに奥へと進んでいく。

 3人並んで歩いていると、ユーノさんがさっきの話の続きを振ってくる。


「そういえばイチゴさんはちゃんと掃除しますか?」

「その話続いてたんですね、そうですね掃除自体は好きですね」

「ほら見なさい、みんなちゃんとやってるのよ」


 ユーノさんが恨めしそうに私を見てくる。

 そんなかわいく睨まれても萌えちゃうだけだよ。


 まあ私は一度始めるとしばらく熱中してしまうので、回数としてはあんまり掃除しないんだけどね。

 今は余計なことは言わないでおこう。


 いや待てよ、ここで私が代わりに「掃除するから結婚してください」とか言ったら、いい返事をもらえたりするんじゃないかな?

 でもまあ今はそんな場合じゃないか。


 そのまましばらく歩いていると、ユーノさんは私たちを大通りから逸れる少し細い道へと誘導する。

 まっすぐ伸びるその道は緩やかな上り坂で、先の方には鳥居が見えた。


 ということはあそこが街の端っこか。

 まあまあ遠いなって思ったけど、おしゃべりしてたら意外と楽にたどり着いた。


「さあここからがちょっと大変ですよ」


 ユーノさんはそう言うと、すごい長さに見える広い石階段を登り始めた。

 これきつそうだなぁ……。

 私が覚悟を決めて1歩目を踏み出した時、ヨミちゃんにくいっとローブの裾を引っ張られる。


「どうかしましたか?」

「おんぶ~!」

「そ、そんなかわいく言ってもダメなんだからね!」


 さすがにこの階段をおんぶしながらのぼる自信はない。

 私は心を鬼にし、ヨミちゃんに背をむけてしゃがみこんだ。


「ありがとう」


 ヨミちゃんが私の背中に抱きついて合体する。

 あれ、おかしいな、どうして私はおんぶしてるんだろう。


 でもいいや、なんかものすごく軽いし。

 あと背中に小さなふくらみが当たって楽園の気分だよ。


「さあ動きますよ~」


 結局おんぶしても、軽いのでほとんどひとりと変わらない速度でのぼっていく。

 ちょっとだけ急いで、ユーノさんのところまで追いついた。


「あ、ヨミがずるしてる」

「ふふふ、イチゴと合体したわ」


「じゃあ私は夜に合体しますね」

「邪魔してあげるわ」


 あなたたちは一体何の話をしてるんだ。

 まさか猥談じゃないだろうね。


 ひとまずこの階段をのぼりきると、そこは広い踊り場のようなところだった。

 まだ続くんだ、この階段。


 次の階段にむかって歩いていると、そこで事件が起きる。

 前に襲ってきた、黒い敵のお仲間のようなものが突然現れた。

 しかも今度は雑魚敵みたいなものを大量に引き連れている。


「イチゴさんはあの銃で自分の身を守ってください、私がなんとかしますから」


 ユーノさんはどこからか取り出した槍を構え、敵の方へ突っ込んでいった。

 雑魚をどんどん蹴散らしながら、感覚を開けすぎないように大型の方にも攻撃していく。


 今度の大型は黒い鐘のような形をしている。

 なので目とかないはずだけど、なんだか目が合ってしまった気がした。

 それは気のせいではなかったようで、奴は私にむかってゆっくりと移動を開始する。


「ぎゃ~! こっちこないでくださ~い!!」


 恐怖で少しパニックになりながらも、私はユーノさんから預かった銃を構えてトリガーを引く。

 すると自分でもびっくりするような光線が敵に直撃し、黒い霧となって消えていった。


 それと同時に雑魚敵も一斉に消えていく。

 勝ったのか……。


 私、もしかして結構強い?

 いやそんなことないか、銃を一発撃っただけだからね。

 すごい威力の銃だね、これ。


「イチゴ、その銃は……」


 背中にいるヨミちゃんが驚いたような声で聞いてきた。


「これ? ユーノさんが貸してくれたんですよ」

「……やっぱりあなたは」

「うん?」


 ヨミちゃんがぼそぼそっと何か言ってるけど、よく聞き取ることができなかった。


「イチゴさん、やりましたね、やっぱり私の目に狂いはなかったです!」


 そばに戻ってきたユーノさんは、目を輝かせてそう言った。

 でもユーノさんの方がよっぽどすごかったけどね。


 戦闘慣れしてるっていうか、まるでアニメのような動きだった。

 きっと過去に大変なことがあったんだろう。


 そんなものに片足を突っ込んでしまってる気がして、少し怖いなって思った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る