第39話 この大橋に行ってみたいですね

 食事を終えてお茶をいただいた後、お店の外に出る

 すぐに空の旅となるとちょっとお腹に悪そうなので、まずはお散歩することにした。


 まるで海外旅行に来たみたいな街で感動する。

 本当に非日常で異世界って感じだ。

 逆にこれに似た場所が現実世界にも存在するというのが驚きだよ。


 私たちは狭い世界で生活してたんだなぁって思う。

 もしかしたら、自分で鳥かごの中にこもってたのかもしれないな。


 やろうと思えばもっと自由に生きれたはずだ。

 確かにあのブラックが許されるわけではない。

 でもあそこに行き着いたのは私の生き方にも原因がある。


 もっと広い世界を見て、いろんなことに関心をもって、幸せを見つけていく。

 私がこの夢の世界にいる意味はこれなのだろうか。


 この旅を通じて幸せのつかみ方を学べているんだ。

 ユーノさんはそこまで考えて、私に旅を勧めてくれたのかな。


「ねえねえ、どこ行く? どこ行く?」


 ミュウちゃんがハイテンションで聞いてくる。


「う~ん、この街に何があるのかわかりませんね」


 街全体がきれいですでに観光気分。

 どこに行きたいかといわれると、まったく情報がないのでわからない。

 なのでマップアプリを開いて、ざっと全体を見てみる。


 そこで今まで気付かなかったのか、アップデートでもされたのか、観光スポットのアイコンを見つけた。


 タップしてみると、写真とともにいくつかの場所を紹介する画像が表示される。

 島の入り口である大橋もそこに入っていた。


 そしてもっと気になるのが空に浮かんでいるように見える神社の画像。

 白い木造の建物があって、敷地の外は雲みたいだ。


「ミュウちゃん、ここってお参り場所?」

「ああ、うん、そうだよ~」


 空に浮かぶ白い神社か。

 本当に神様が住んでいそうだよね。

 あ、ユーノさんって女神様か。


 そう考えるとあの方はものすごく偉大な存在なんだね。

 すごく親しみやすくて、まるでお友達だけど。

 変態だし。


「お姉ちゃん、行きたいところ見つかった?」

「あ、そうだね~」


 神社は後で行くとして、まずはどこにしようかな。


「この大橋に行ってみたいですね」

「大橋? 橋マニアなの?」

「別にマニアではないですけど……」


 橋を見たいって珍しいのかな?

 あの下から見上げた時の存在感とか、上を渡った時の景色とか感動ものなのに。

 特にライトアップされた大橋ときたらそれはもう……(以下略)


「じゃあ大通りを歩いて、そのまま橋まで行こっか」

「ありがとね、ミュウちゃん」

「いいよ~、お姉ちゃんが行きたいところならどこでも」


 よし、さっそく行こう。


 橋から続く大通りは、この街の反対側までずっと続いているようだ。

 さらに島をぐるっと回る別の大通りもある。

 海沿いなので景色は最高だろう。


 所々に砂浜もあって、そのあたりでは泳ぐこともできるみたい。

 ぜひミュウちゃんと一緒に行ってみたいものだ。


 今歩いている大通りは、ほぼまっすぐ伸びているためすでに橋の姿が見えている。

 白い巨大な橋にわくわくしてきた。


 そういえば現実世界でも一度だけ大橋を見たことがある。

 高校生の頃だったか、雫さんに連れられて神戸にある舞子公園まで行ったんだ。

 初めて見た大橋は圧倒的な存在感で、私はとても感動していたのを覚えている。


 あとから見ると不思議なくらい同じ写真を撮りまくっていた。

 公園からみた、水平線に沈む夕日は今でも思い出せる。

 また見に行ってみたいな。


 あ、でもそのためには現実世界に戻らないといけないのか。

 難しいものだね……。


 今はここの景色に代わりになってもらおう。

 それにしても白い街だ。


 青い空、青い海、白い雲。

 それだけじゃなく、建物やこの大通りまで白い。

 白すぎて、暗い私は浄化されてしまうよ。


 私消えてないよね?

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