第6話 嘘……、まただ
いつもより少し幸せだった休日。
せっかく元気になれた気がしたのに、月曜日から深夜残業。
これ、終わらないぞ……。
当たり前だ。
一人、召喚魔法の子が復帰してきたけど、それでもたった3人だ。
「せんぱ~い、終わらないですぅ~」
召喚娘ちゃんが涙目で私にすがりついてくる。
この子、急にしゃべるようになったなぁ……。
私、先輩って呼ばれてたのか。
召喚娘ちゃんを見て、雫さんが昔を懐かしむように微笑む。
「なんだか昔の苺ちゃんみたいね」
「え? 私こんなんでしたか?」
「こんなんって、ひどいですよ~!」
召喚娘ちゃんが「プンプン」と言いながら、私のスカートに突撃してきた。
そして私のふとももに頬を擦りあわせてくる。
なんだこの変態ちゃんは……。
気持ち悪いので、両足を使って思いっきり顔を挟んでやった。
「ぐお!?」
あ、ちょっとやりすぎたかな。
「ウヒョ~!!」
うわ~! 気持ち悪いよ~!
もう、なんで日付が変わろうかという時間にこんなの相手にしないといけないんだ。
はぁ、疲れた……。
「ちょっとエナジードリンクでも飲もっと」
私は自販機までむかい、ドリンクの缶を3つ購入して戻ってきた。
そしてひとつを召喚娘ちゃんの頬に当てる。
「ひゃっ」
「どうぞ」
召喚娘ちゃんは缶を両手で受け取り、しばらく固まった。
そしてようやくもらい物だと理解したのか、感動したように笑顔になる。
「ありがとうございます、先輩!」
「いえいえ」
もしかして今までジュース奢ってもらったりしたことないのかな?
「雫さんもどうぞ」
「ありがとう」
私も自分の席に戻り、エナジードリンクの缶を開けようとした。
しかしその指が震えてうまく開けられない。
嘘……、まただ。
「苺ちゃん? どうかした?」
「あ、いえ」
雫さんには心配をかけないように誤魔化し、なんとか缶を開けた。
とりあえずこれを飲んで今日をしのごう……。
そう思い、一気にドリンクを口の中に流し込む。
「うっ!」
しかしドリンクはのどを通ってはくれなかった。
口の中のドリンクをすべて床に吐き出してしまう。
そして椅子から崩れ落ち、なんとか手で体を支える。
「苺ちゃん!?」
「先輩!? 大丈夫ですか!?」
ふたりが私のそばに駆け寄ってくるのが聞こえる。
段々と世界から音がなくなっていく。
かわりに耳鳴りのようなものがひどくなった。
目の前が歪み、紫色のブロックノイズになって消えていく。
そして私の意識はなくなった。
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