第6話 銀の髪の少女
森の調査を始めて一時間。
襲いかかる魔物を撃退し、道を塞ぐ植物を払い除けて。
遂にレオンは、その場所を発見した。
「……!」
レオンは足を止め、息を飲んだ。
そこは、確かに何かがあったという痕跡がはっきりと分かる場所だった。
残らず根元から折られた木。
掘り返された地面。
ちぎれた蔦。
覆うものがなくなった頭上は空が見えている。
広さにして、百メートル四方ほど。まるでそこだけ穴を空けられたかのように、森だったものの残骸ばかりが転がる光景が広がっていた。
飛空艇からの砲弾を浴びたとしても、こうはなるまい。
「……酷い……」
倒木を跨ぎながら、荒地の中心へと向かうレオン。
中心地に向かうほどに、地面の荒れ具合は酷くなっていく。
中心地で何かが起きて、それによって周囲のものが吹き飛んだであろうことは明らかだった。
彗星が落ちたのだから、それくらいの被害が出ることは何ら不思議なことではないが──
「…………」
ようやく荒地の中心に辿り着いたレオンは、目の前のそれを見て目を瞬かせた。
そこにあったのは、彼が想像していたような星の残骸ではなかった。
腰まで届いた銀の髪。まるで陶器のような白い肌。つんと鼻筋の通った顔立ち。
何の飾り気もない長袖の白いワンピースを纏った少女が、身を縮めた格好で横たわっていた。
「……女の子……?」
レオンは静かに少女に歩み寄った。
少女は身じろぎひとつせず、眠っている。レオンが近付いても目覚める気配はない。
こんな土と草と倒木だらけの場所に直に転がっているにも拘らず、少女の肌や服には汚れが一切付いていない。その不自然さが、レオンの胸中に少女に対する興味を抱かせた。
何処から来たんだ、この子は……
周囲を見回し、空を仰いで、レオンは眉間に皺を寄せた。
武装がないということは、冒険者じゃ……ない。それで無傷でこんな森の奥深くにいるなんて、普通じゃまずありえない。
そもそも、此処には彗星が落ちたはずだ。それらしいものが全くないというのは……
……まさか、彗星だと思っていたのは、この……?
とりあえず放置してもおけないと考えたレオンは、少女を街に連れ帰ることにした。
背中と膝の裏に腕を差し入れて、少女を抱き上げる。
少女は、びっくりするくらいに軽かった。それこそ中身が入ってないのではと思えるほどの重さに、レオンは面食らいながらもしっかりと少女の体を抱き抱えた。
両手が塞がっているから戦闘はできない。帰りは魔物に近付かないようにしないとな。
多少時間がかかっても安全に帰れる道を選んで帰ろう、と心に決めて、レオンは元来た道をゆっくりと引き返し始めた。
開けた空から風が吹き込み、少女の髪をふわりと弄んで森の中へと翔け抜けていった。
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