第68話

 ――その頃。


「この感じ……

 誰か死んだのか?」


 ジャキがボソリと呟く。


「ん?どうした?」


 ジルが首を傾げる。

 それはベルも同じだった。


「いや、なんでもない」


 ジャキは首を横に振った。

 ジャキはわかった。

 咎人がひとり死んだ。

 ただ、それだけわかった。


「お前、最近変ったな?」


 ジルの問いにジャキは苦笑いを浮かべた。


「そうか?」


「ああ、なんつーか。

 優しくなった。

 この前も子どもを助けてただろう?」


「あ、ああ。

 気まぐれだ」


「さては、アンタ。

 女出来たね?」


 ベルがそういうとジルが驚く。


「なんだよ?どこのどいつだ?

 いい女なのか?」


「ちげーよ。

 それよりジルとベルはどうなんだよ?

 進展したのか?」


「進展?どこからが進展なんだ?」


 ジルが、そういうとジャキは逃げ口を探すべく答える。


「そのキスとかしたのか?」


「ああん?んなもんキスどころかセ――」


 ジルがそこまで言いかけたとき、ベルが顔面にパンチをし言葉を防いだ。


「恥ずかしいことをいうでないよ」


「そっか」


 ジャキは、少しがっかりした。

 ベルのことが好きなわけじゃない。

 自分とふたりの間に溝がある。

 そんな気がしたからだ。


「よし着いたぞ。

 アンゲロスの街に」


 ジルの顔が真面目になる。


「あ、ああ……」


 ジャキの顔には不安しか残らない。

 ジャキには悩みがまだある。

 ボクにどんな顔をして会えばいい?

 そんな考えしか浮かばない。

 ボクをいじめたことに後悔していた。

 それは、罰を受けたからだ。

 もしも罰を受けていなければ後悔していないかもしれない。

 いじめとは受けたものは一生背負う。

 だが、いじめた方は咎められない限りなにも感じない。

 なにも覚えていないかもしれない。

 だが、ジャキは覚えている。

 いじめたことも。

 そして、いじめられたことも……

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