外伝第29話 四界




 デッカイドーと言われる巨大な大陸には四つの世界の存在が言い伝えられている。


 生ける命、生命が住まう、輝きの元にあり大地の上に広がる表向きの世界"現界"。

 天の神が住まい、罪を抱えずに生を全うした者が招かれる雲の上の世界"天界"。

 罪を犯した魂が堕とされ、その罪を濯ぐために罰を受ける地の底の世界"冥界"。

 そして、魔物や魔法の生まれた場所、闇の中にありいつも人々の傍に潜む裏側の世界"魔界"。


 天界と冥界は対になり、現界と魔界もまた対になる。

 現界と冥界は表と裏の関係にあり、これら二界を上下から挟むように天界と冥界がある。

 そんな世界の構造は、天の神が言い伝えたとも言われれば、世界の秘密を知る魔界からやってきた魔人が伝えたとも言われている。

 起源すら、真偽すら分からない、気付けば人々が知っている伝承である。


 天界と冥界はいわば生を全うした者の世界であり、一度向かえば帰る事はできない。故にその存在を証明出来る者は現界には存在しない。より良く生きれば天界に迎え入れられ幸福を約束される、悪しきに生きれば冥界に落ち罰に苦しむ死後を送る、そういった戒めのみがある。


 魔界は現界の裏側にある。それがどんなものかは知られていない。どんなものであるかは諸説ある。

 夜眠って見る悪夢こそが魔界であると言われる事もあれば、天界にも冥界にも行けない迷える魂が彷徨う場所であるとされる事もあり、人を唆す悪意はいつでも人の隣に隠れる魔界からの声だと言う者もいれば、大地のどこかに隠された魔物達の国であるという声もある。

 どんなものなのかは分からないが、とにかく悪いものであると信じられている事だけは共通していた。


 そして、そんなまばらな噂でしか知られていないように、その世界を実際に行った者は、認識した者は歴史上誰一人としていない。

 そこから来たとされる魔物でさえも、その世界については何も語らない。

 魔物を統べる魔王でさえも、住まう場所は現界であると言われている。


 魔界とは一体何なのか。

 魔界とはどんな場所なのか。

 魔界にはどうすればいく事ができるのだろうか。




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