第六十六話 能力確認
「ホントかよ……」
俊が石光の言うことを訝しんでいると青木が割って入る。
「そうだったんですか。では私は断っていたので大丈夫ですね。あと仲良くしなくてもいいってことですね、よかった」
「……ううっ、仲良くはしたいの……」
声を絞り出して懇願する石光を見た俊と青木はため息をついた。
「大丈夫なんですか?小野寺先輩?」
「いや、俺の母親と仲良くなって家に堂々と入ってくるぐらいだから能力は問題ない。ただ、若干直情径行なところがあるから、そこがクリアできればかなり強いぞ?洞察力もすごい、さっき青木の陸上の種目言い当てただろ?」
「確かに……」
「ヒューミントはアート、つまりセンスがものをいうみたいだからな。センスはあると思うんだ。あとは教育をしていけばいいはずだ」
「……なるほど……それにしても小野寺先輩は石光先輩と随分仲が良いみたいですけど?」
青木がじっとりとした目線を向けると、俊は困り顔で手のひらを天に返し首を傾げた。
「俺ではなく、俺の母親とだね」
「そうですか、石光先輩はしょっちゅうご自宅に訪問されてるとお聞きしました。なんなら先程、一緒にご自宅へ行かないかと誘われました」
青木の発言に俊は眉間を一瞬ひくつかせてから苦笑する。
「いや、俺に言われても……。真紀と母との話だから自分の権限では答えられない」
俊のリアクションの一部始終見ていた青木は石光に尋ねる。
「石光先輩、今の小野寺先輩の受け答えを分析してみました。私の発言後5秒以内に眉間が一瞬動きましたので欺瞞指標の可能性があります。ただ、そのあとの発言が微妙です。『自分の権限では答えられない』は欺瞞指標の1つとして考えられますが事実かもしれませんので、クラスターになるのかどうか……。もしクラスター成立なら、小野寺先輩と石光先輩は付き合ってるとか公にできない関係である可能性があります。クラスターが成立していなければ、小野寺先輩には何かしらの不安要素があるとしか判断できません。もっと突き詰める必要があります」
こんこんと説明をする青木に対し、石光は悔しそうな顔をした。
「クラスターが成立していれば……私は俊君と付き合ってることになったのに……!」
悔しそうにしている石光に対し、俊はかぶりと手を振って発言する。
「いやいやいやいや、その理屈はおかしい」
俊と石光のやり取りを見ていた青木は胸を撫でおろした。
「どうやら、この様子だと小野寺先輩と石光先輩は公にできないような関係ではなさそうですね」
俊は一連のやり取りから何かに気づいた表情となり、その後ばつが悪そうな顔になった。
「お前ら、俺でヒューミントの練習したな?」
俊の問いに対し、青木はすました顔をして答える。
「常に研鑽を怠らず能力を高め、小野寺先輩の期待に応えられるようにするためです。今後も精進していきます。小野寺先輩のおかげで色々変わることができました。私が恩返しする番です」
青木が俊に対して所信表明をすると石光も続ける。
「私も俊君に助けられていなかったら今頃どうなっていたことか……だから協力しようと思ったし、俊君と同じ力を手に入れられるのなら躊躇わないって感じかな。あと、俊君が大好きだから!」
「最後のとってつけた感、あとその感情はつり橋効果みたいなものだよ。錯覚だ」
俊が目を細めてジトっとした目線を石光に送り、シッシッと手をひらひらとさせている横で青木は固まっていた。
(……え?何?惜しげもなく告白っ!?え?幻聴じゃないよね?私も思いを伝えないといけないんじゃないの?遅れをとっちゃうんじゃないの?)
数秒経ってから青木は赤面し、口をパクパクし始めた。
「……わ、わわわ、私も――」
言いかけたところで石光が青木に抱き着いた。
「な、何するんですか!」
「まぁ、無理する必要はないよ?純ちゃん顔真っ赤だし、ちゃんと適切な時と場所で言った方がいいと思うよ」
抱き着いた石光は青木の耳元で囁いた。
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