第六十三話 参集 その4
「私だって昔は下の名前で呼んでいたのに、高校入ってからなんかそっけない態度で距離を置かれてしまって下の名前で呼びづらくなって……」
青木が口をへの字にして俯いていると、石光はうんうんと頷いてから開口した。
「わかる。二週間ぐらい毎日休み時間になったら話しかけていたけど、そっけない態度取られていたから。それにしてもこんなかわいい子を困らせるようなことして、俊君はまったく!」
「二週間も毎日やってたんですか?……強い……というか、ストーカー?」
青木は石光がやってきた行動に驚いていると、石光は、たははと笑ってから答えた。
「純ちゃんからも同じことを言われるとは……まぁ、根負けしなかったから相手してもらえるようになったのかなって思ってる。あと冴子さんが変な格闘術使って引っぺがすなって俊君にいってたのって純ちゃんが私にやったヤツだね、なるほど」
石光が右手を顎に添えて首肯していると、青木は呆気に取られていた。
「え?冴子さんって小野寺先輩のお母さんですよね?お母さんまで名前呼びですか?」
「うん?ああ、冴子さんとは趣味友達みたいな感じなんだ。あ、しまった。名前呼びじゃなくてお義母さんだった」
石光の一連の言動に青木は驚きを隠せず、強めの口調で質問する。
「なんなんですか!?仲いいアピールですか!?」
「いや、そういう訳じゃないんだけど……っていうか、俊君ん家に行ったことあるんだよね?今度一緒に行こうよ!」
「なっ……なんで、一緒に行かないといけないんですか!」
「お義母さん、お菓子作りが趣味だからさ、一緒にお菓子作りしよう!いいじゃん、久しぶりに小野寺家にあがれるよ?」
石光と青木のやり取りを近くで眺めていた山下は色々と考えを巡らせていた。
(いや絶対こうなるって!小野寺君めんどくさいこと徹底的に避ける傾向あるのに……ってことはそれ以上のメリットを享受できるってことだよね。そんなにヒューミント能力凄いのかあの二人。それにしても石光さんも小野寺君と同じで学校と全然違うじゃん。っていうか石光さん凄いこと色々いってなかった?小野寺君の家に行ってる発言してたし、小野寺君のお母さんをまるで自分の母のようにしゃべってたよね。小野寺君はあんなに石光さんを家に入れてなるものかみたいなこといってたのに……負けたの?あの小野寺君が?ハニートラップとか?……いや、小野寺君はそういうのに引っかかるタマじゃない。石光さんはヒューミントの才能あるって小野寺君いってたけど、まさか自分の身をもって証明する形になるとは……)
「あの、すみません。山下先輩」
黒縁眼鏡の少女、清水が考えごとに耽っている山下に話しかけていた。
「あ、ごめん」
「何回か声掛けたんですけど」
山下は清水の容貌を確認すると質問をした。
「君もオタクかい?」
その質問に対し、清水はあきれ顔をしつつ、フッと鼻を鳴らす。
「そういうのはCV田中秀幸になってからいってください」
「なるほど、いいセンスだ」
「それもCV大塚明夫になってからいってください」
山下は石光と青木がイチャコラしている光景を指さして清水にたずねる。
「こいつを見てくれ、どう思う?」
「……すごく、百合です」
「だが、残念なことに竿役は居るわけで百合にはならない。普通に主人公を取り合うヒロイン2人って感じでラブコメだね」
「竿って言い方……」
清水は汚物を見るような視線を向けられると山下は意地の悪そうな笑みを浮かべた。
「やはり、ネットで探し物するような奴らはミーム汚染がひどいね」
「自己紹介おつです」
山下が軽く咳払いをしてから改まって口を開く。
「お遊びはこれくらいにして……山下です。主にSNSでの情報収集がメインです。そこから住所割り出したり、行動を予測したりとかそんな感じです」
「私は主に画像から場所を特定するのが得意です。なんでしたっけ?私の場合はイミントっていうんでしたっけ?」
「まぁ厳密に言ってしまうと僕も清水さんも公開されている情報を調べているのだからオシントとも考えられるんだよね。色々と技術が進歩しすぎてボーダーというかそういうのが無くなってきている感はあるね」
山下が説明をしていると清水は少し驚いた顔をしていた。
「詳しいんですね」
「まぁ、多少はね」
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