第14話 ランニング
目覚まし時計は、損な役割を担っていると思う。毎朝人助けをしているのに、毎朝憎まれている。起こしたときも憎まれ、起こすことに失敗したときはさらに憎まれる。可哀想な存在だ。
音を立てる目覚まし時計に、ありったけの憎しみを込めてスイッチを止めた。雨は降っていない。走る時間だ。
外に出て軽く準備体操をした。前日の疲れが残っている。晴れ渡る青空に向かって大きなあくびをした。
いつものランニングコースを走っていた。いつもと同じ風景だ。
空が青かったせいだろうか。いつもと違う道を走りたくなった。適当な路地に入ってみた。近所に住んでいて、いつも近くを走っているのに、始めてみる景色だった。何のことはない東京の住宅街だ。すごい光景が広がっているわけではない。それでも少々新鮮な気分だった。
さらに適当に道を曲がってみた。なんだか楽しくなってきた。車通りも少なく走りやすい。たまにはこういうのも悪くはないかもしれない。
体が汗ばんできて、足が少しだるくなってきた。そろそろ戻ろうと思い始めた。
今来た道を引き返すのもつまらないので、また違う道で帰ることにした。
ものの見事に道に迷ってしまった。
通行人は普通に歩いているが、道を尋ねるのは恥ずかしい。自力で帰ろうとした。
楽しかったランニングが急に苦しくなった。汗が滝のように流れてきて、呼吸が乱れてきた。足も痛い。朝っぱらから何をしているのだろう。ここは一度通ったような気がする。引き返した方が良かったかな。いや、意地でも前に進もう。
すると、耳鳴りが響き始めた。頭が痛い。視界がぼやける。目の前が白くなっていった。
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