第14話


 指はどんどん痩せ細り、小枝のような形になった。

 触れるか触れないかの距離にある爪が引っかかって、いやな音が頭中にギリギリと響く。


「僕は人間にはなれないから。

 対人緊急停止機能ヒューマンエマージェンシーブレーキスタジアムの自動移動式座席だって、僕を『モノ』と認識した。ぶつかっても問題ないと。」


 故障ヶ丘高校でも類を見ないレベルの失敗作。

 少々のプログラムや設計ミスがあっても基本的に人間と変わらない見た目をしている仲間達も、一般生徒たちと一緒になって僕を遠巻きに眺めていた。触れてしまえば破裂し、菌に塗れた膿をこぼす腫れ物のように。


 勿論、学校のアンドロイド全員が入部している家庭料理研究部でもそれは変わらなかった。

 栄養摂取などタブレットで済んでしまうこのご時世、時代の最先端を行くアンドロイドにわざわざ『料理』という古典的な作業を行わせるのもどうかと思うが。


「僕だって、嬉しい、悲しい、恥ずかしい、辛い、死にたい、生きたい、気持ちがある。でも、金属製の顔は笑顔の一つも浮かべる事さえ出来ない。」


 そんな中、この世界中でただ一人、僕と対等に接してくれる人がいた。


「翠さん。僕は、何ですか。」



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